新時短ルール導入でMLBはどう変わる?
MLBは現地19日、今シーズンから導入される時間短縮に関する新ルールの概要を発表した。当初囁かれていた投球間に制限時間を設けることは回避され投手への大幅な負担増は回避されたが、それでも細かな部分で今後の試合運営に影響を及ぼすことは間違いない。そこで今回は新ルールを解説しながら、その影響度について考えてみたい。
それでは新ルールの概要を理解しておきたい。大まかではあるが、知っておくべき変更点は3点だ。1)攻守交代時の制限時間設定、2)投手交代以外で監督、コーチ、選手がマウンドに行ける回数を制限、3)リプレー検証に関するルール変更──の3つについて理解しておけば問題ないだろう。
まず攻守交代時の制限時間の設定だ。いうまでもなくイニング間の時間短縮を目指している。
制限時間は一般の試合が2分5秒、全国放送の場合だと2分25秒、さらにポストシーズンだと2分55秒に設定されている。最後のアウトが宣告されてから(投手や捕手が打者であったり、出塁していた際は別)カウントダウンが始まり、制限時間内に投手は打者に対し第1球を投げる動作を始めなければならない。
今回の変更により制限時間内であれば、投手がウォーミングアップで投げる球数が無制限になった。ただし残り25秒になると主審から投手にウォーミングアップ終了の合図が出される。さらに残り20秒になると、先頭打者のコールと入場曲がかかり、打者はバッターボックスに向かって動き出さないといけなくなった。
つまり今後はウォーミングアップ終了から試合再開まで20秒以内で行わなければならないことを意味する。これまではウォーミングアップが終了してから捕手が二塁に送球し内野手間でボールを回していたが、これがかなり慌ただしくなってくるだろう。チームによっては省略するケースも出てくるかもしれない。
また投手交代時にも同様の制限時間を設けられる。監督、コーチから指示が入った時点で交代する投手は移動を開始し、グラウンドに入った時点でカウントダウンが開始され、あとは同様に制限時間内に交代した投手も投球動作に入らなければならなくなった。最近ではほとんどの球場が外野にブルペンを設置しており、交代する投手がマウンドに向かう時間が長くなればなるほど、ウォーミングアップの時間が制限されてしまうことになる。噂されているリリーフカーの復活もあるかもしれない。
次に監督、コーチ、選手たちが投手交代以外でマウンドに行ける回数を1試合当たり6回に制限することになった。ただし延長戦に入った場合は1イニング当たり1回ずつ増えていく。
ただここで問題になってくるのが、“マウンドに行ける”という定義だ。コーチがマウンドに行き野手たちも集まって協議するのは当然カウントされる行為なのだが、試合中に時折垣間見られる個別の野手がマウンドに歩み寄って投手に声をかけるのもカウントされてしまうし、逆に投手がマウンドを降り野手と話し合うのもカウントされてしまうのだ。今後はちょっと投手に間を入れさせたいという野手の配慮ができにくくなってしまう可能性が高くなるだろう。
ただしカウントされない例外もある。主審が認めればサイン確認のため捕手はマウンドに行けるし、また悪天候の試合で野手がスパイクの土を落としたい場合、また投手が負傷した可能性がある場合、代打、代走が告げられた場合もマウンドに向かってもいいようになっている。
最後に各チームがリプレー検証を使うかどうかを決める時間を短縮させるため、ベンチとビデオルームを繋ぐ電話回線を増設するとともに、各チームのビデオルームから球場に設置されているスローモーション・カメラの映像を直接入手できるようにすることになった。これにより各チームは疑惑の判定について、より迅速に的確に検証できるようになった。
果たして新ルール導入でどれほどの時間短縮に繋がるのか、甚だ疑わしいところだ。またたった“数分”の短縮を目指すため、多少なりとも投手につまらない負担を与え、孤立化させてしまうのではないかという疑問も感じてしまう。
とりあえず新ルールがどのような影響をもたらすのか、行方を見守っていくしかない。