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いよいよキャンプインする大谷翔平がアリゾナで目指すべきものはずばり“打高投低”

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
いよいよMLBでの二刀流挑戦が始まる大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 いよいよ大谷翔平選手が自身初のMLBキャンプ初日を迎えようとしている。シーズン開幕に向け、約1ヶ月半に渡りアリゾナで準備を進めることになる。

 今回はマイナー契約選手の招待選手として開幕メジャー入りを争う立場だが、あくまで統一労働協約の制約を受けたためであり、不測の事態(故障やオープン戦でまったく活躍ができなかった等)がない限り、開幕メジャー入りは既定路線といえる。

 というのも、すでに二刀流として投手、打者ともに大谷選手がエンゼルスの重要な戦力として構想に組み込まれているからだ。もし彼が開幕メジャー枠に入れなかったとしたら、それはそのままエンゼルスにとって緊急事態を意味するほど、すでに投打の鍵を握る存在なのだ。

 それでは大谷選手がキャンプ期間中にシーズン開幕の準備が整っているかどうかを見極める上で、どう判断すべきなのか。その答えはずばり“打高投低”だ。

 日本とは違い、MLBではシーズン開幕を迎えるまでずっとキャンプ施設で連日オープン戦を戦いながら準備を進めていく。当然のごとくオープン戦でのパフォーマンスは、キャンプ地の特性に多大な影響を受けてしまう。となれば、エンゼルスはアリゾナでキャンプを実施していることを考慮して、アリゾナの地域特性を把握しておく必要がある。

 エンゼルスを含め15チームがキャンプを実施するアリゾナ州のフェニックス地区は砂漠地帯として有名だが、それと同時にMLB30チームが本拠地に置く都市の中で、デンバーに次いで2番目に標高が高いことでも知られている。つまりアリゾナは空気は乾燥しており、しかも多少空気が薄いのだ。

 いうまでもなく打者に有利な条件が整っている。だからアリゾナで実施されるオープン戦は本塁打が量産される傾向にある。すでに本欄で報告しているように、大谷選手の打球速度はMLBでもトップクラスのものだ。彼本来のスイングができていれば、アリゾナでは高い長打率を残して然るべきなのだ。

 それができていないということになると、MLBで主流になっている手元で動くカットボールやツーシームに対応できていないことを意味する。ある程度打率を残せたとしても、詰まった当たりや野手の間を抜けるようなゴロではしっかりボールを捉えられているとはいえない。やはり長打率をチェックすべきだろう。

 逆に投手にとってアリゾナは調整が非常に難しい場所だ。NPB公認球よりも滑ると言われているMLB公認球が、この地ではさらに滑るのだ。普通に自分の理想的な変化球を投げるのも簡単ではない。つまりアリゾナでできていなかった投球が、キャンプ地を離れてシーズンに入れば従来の投球ができるようになる可能性が高いのだ。

 そんな状態で投げるのだから、キャンプ中に変化球の質を見極めたり、細かい制球力を確認するのは至難の業なのだ。もちろんオープン戦の成績も影響を受けるだろうし、投球内容に一喜一憂する必要はまったくないのだ。

 それ以上に意識すべき点は、MLB流の登板間の調整にしっかり順応できるかだろう。エンゼルスでは今シーズン先発6人制を導入する方向なので、チームから与えられたスケジュール通りに中5日(もしくは中6日)で登板を重ね、そして登板ごとにイニング数、投球数を増やしていけるかだ。内容に関係なく、開幕までに5イニング以上、100球前後投げられるようになっていれば、それで十分に合格点が与えられるのだ。

 繰り返しになるが、大谷選手がキャンプ中に目指すべきは打高投低だ。それを見守る我々も、打に関しては長打力、投に関しては投球数の推移だけ意識しておけば問題ないだろう。

 あとは周囲の雑踏に惑わされることなく、大谷選手が開幕に向け順調な調整ができることを祈るばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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