Yahoo!ニュース

上昇傾向にある新潟を支える大黒柱2選手が見据える更なる高み

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新潟を支える五十嵐圭選手(左)とダバンテ・ガードナー選手(筆者撮影)

 オールスターゲームが終了しシーズン後半戦に突入したBリーグだが、新潟アルビレックスBBの戦いぶりに“変化”が起こっていないだろうか?

 その顕著な例が敵地で戦った第19節の京都ハンナリーズ戦だった。9日の第1戦は前半途中で最大15点のリードを許しながらも徐々に自慢のオフェンス力を発揮し、後半は逆に主導権を握り返し93-89と逆転勝ちを飾ると、10日の第2戦も終了間際にブザービーターを決められ逆転負けを喫したものの、今シーズン好調の京都相手に最後までデッドヒートを演じた。

 それだけではない。後半戦はここまで名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、シーホース三河、横浜ビー・コルセアーズ、京都──と横浜以外すべて上位チームと対戦しながら、すべて1勝1敗のタイに持ち込んでいるのだ。現在14勝22敗で中地区5位に沈んでいるチームとは思えない戦いを続けている。

 「うちはオフェンシブなチームなので、いつも80点以上を目指してやっています。一方で失点を70点台というのを目標に今年スタートしたんですけど、どうしても失点の部分、そこのバランスがよくない中でチームが進んでいたんですけど、後半に入って改善の兆しが見えてきています。一人一人がしっかりルールの中にはまりながらプレーしてくれています。ラモント(ハミルトン)選手が入ったことによってプラスに大きく変わったと思っています」

 庄司和広HCが指摘するように、チームの平均得点はリーグ3位の81.7得点を記録する一方で、平均失点はそれを上回る83点に達しており、そのバランスは決して良くなかった。しかし1月9日にハミルトン選手を獲得して以降、チーム内にプラスの作用が生じ始めたとしている。

 ハミルトン選手は208センチ、124キロと体重のある巨漢選手だが、インサイドに強いだけでなくアウトサイドから3点シュートも決められる器用さを兼ね備えている。ここまで8試合に出場し平均得点14.8得点を記録しており、チームの大黒柱である五十嵐圭選手、ダバンテ・ガードナー選手に続く“新たな得点源”が加わり、間違いなくチームの攻撃オプションを多様化させることに成功している。

 その辺りを大黒柱の2人はどう捉えているのだろうか。まずは五十嵐選手だ。

 「そうですね。後半戦に入って外国人選手の入れ替えがあった中で今のところ連勝はないんですけど1勝1敗というかたちで来ていて、その中で今週(京都戦)は失点が多かったんですけど、ディフェンスの部分でも選手一人一人の意識というのが少しずつ変わってきているなと思っています。

 オフェンスの部分でも自分たちのエースのダバンテだったり、新しく入ったラモントだったりとかが、うまくボールを供給してくれているので、その中で僕自身が周りの選手、特に日本人選手をもう少しうまく使っていかなければいけないなというところですね。あとはラモントが入ってきて良くはなってきていますけど、まだまだ彼を生かし切れていないなという部分がありますので、チームとしては良くなってきていますけど、個人としてはまだまだ物足りないですし、もっとチームをコントロールしていかなければなと思っています」

 五十嵐選手もハミルトン選手の加入でチームがいい方向に向かっているのを実感している。しかしその一方で、司令塔である五十嵐選手自身の活躍如何で、さらにハミルトン選手の能力を発揮させることができるし、外国人選手と日本人選手を密に連係させることで、チームとして更なる成長に繋がると確信しているようだ。

 それではガードナー選手は最近の戦いぶりをどう感じているのだろうか。

 「この2試合(京都戦)も最後まで勝つために最大限の努力をする姿勢をみせた。今は凄くいいチームになったと思っているし、ここ何試合かしっかり戦えていると思う。ラモントの加入がチームを大きく変えた。ポストプレーでも自分をヘルプしてくれている。今は皆がプレーオフ(チャンピオンシップ)を目指し集中できている。

 とにかく今はいいプレーをして戦い続けるしかない。とにかく目標はプレーオフだ。一時期は得点リーダーのような個人タイトルを意識していたこともあったけど、今はまったく気にしていない。とにかくチームとして勝ちたいんだ」

 ここまで平均得点28.9得点でリーグ1位を独走するガードナー選手だが、現在は個人タイトルなど一切気にせずにチームの勝利のことだけを考えてプレーしているという。前半戦で思うような戦い方ができていなかったからこそ、その雪辱を果たしたい思いが優っているようだ。

 現在は中地区5位とはいえ、チャンピオンシップ進出可能な地区2位にいる富山グラウジーズとの差はわずか3ゲーム。まだ24試合を残していることからも、2位を狙えるどころか、シーズン勝ち越しも十分に狙える状況だ。

 それを重々承知しているからこそ、五十嵐選手も気合いを入れ直している。

 「昨シーズンもそうなんですが、僕自身危機感を持って戦っています。その中で今は負け数も多くなっていますし、本当にこの中盤以降の後半戦は1戦1戦凄く大事なので、全部の試合勝つつもりで臨んでいます。また僕だけでなく、チームメイト、スタッフを含めてそういった危機感を持ってやらないと…。

 やはりシーズン開始当初に掲げていた目標はチャンピオンシップに進出することだったんですけど、逆に自分たちが置かれている状況、今の成績ですとB2の降格プレーオフというのも、当然僕らも下から数えた方が早いですし、そういった危機感を持ちながら自分たちが目指していた目標は何だったのかをもう一度明確にしてやっていく必要があると思います。

 少しずつチームとして良くなってきていますけど、今日のような接戦(京都との第2戦)を勝ちきる力というのがまだまだ自分たちに足りないので、接戦になったときの我慢強さであったり勝負強さというのをもう少し突き詰めていかなければいけないかなと思っています」

 シーズン終盤に向け、新潟がかなり面白い存在になりそうな気がしてならない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事