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元オリックス助っ人左腕がナックルボーラー転身へ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨年はオリックスに在籍していたフィル・コーク投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「フィル・コーク」という投手を覚えているだろうか。MLB通算22勝という実績を引っさげ、昨年オリックスに入団した左腕投手だ。残念ながら成績は6試合の登板で2勝3敗、防御率4.56に終わり、期待通りの活躍ができないままチームを去っていった。

 そんなコーク投手がMLB復帰を目指し、ナックルボーラーへの転身を決断したというのだ。米国のスポーツ専門サイト『SB Nation』のクリス・コティーヨ記者がその事実を以下のようにツイートしている。

 コーク投手の話によれば、すでにブルペンでの投球を公開し興味を持っているチームがいるようだ。果たしてどこかでチャンスをもらえるのか楽しみなところだ。

 というのも、これまでMLBで活躍したナックルボーラーはニークロ兄弟を筆頭に、ティム・ウエークフィールド投手、トム・キャンディオッティ投手、RA・ディッキー投手──等々、その多くが右投手ばかり。左腕ナックルボーラーはMLBでもかなり希有な存在なのだ(1990年に「ダニー・ブーン」という左腕ナックルボーラーがMLBで4試合に登板しているらしい)。

 またディッキー投手が昨年限りでの引退を示唆しており、現在MLBで活躍するナックルボーラーはレッドソックスのスティーブン・ライト投手しかおらず、ナックルボーラーの系譜を維持するためにも新たなナックルボーラーの出現に期待がかかるところ。それが左腕ともなれば話題性十分だろう。

 もちろんナックルボーラーで大成するのは簡単なことではない。今年からDeNAの2軍投手コーチに就任した大家友和氏もナックルボーラーに転身しMLB復帰を目指したが、ブルージェイズとオリオールズのキャンプに参加しながらシーズン前に解雇されている。また過去に本欄で紹介している通り、ジャイアンツで絶対的守護神として活躍したブライアン・ウィルソン投手がナックルボーラーへ転身しているが、その後彼がどこかのチームと契約したというニュースは聞こえてこない。

 これまで大家氏に何度となくナックルボーラーの難しさについて話を聞かせてもらったことがあるが、ナックルボールは投手の常識を覆す球種であり、どんなに投げ続けても試行錯誤の連続だったという。経験を積んでも尚ナックルボールの状態はその日ごとに変化し、本当に掴み所のないボールだと証言している。

 もちろんコーク投手にとってもナックルボール習得は簡単なものではないはずだ。ブルペンで無回転のボールがうまく投げられたからといって、それがすぐに実戦で有効なナックルボールを投げられるということではないのだ。

 果たしてコーク投手は復活劇を飾ることができるのだろうか…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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