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MLB屈指の名三塁手マニー・マチャドが今季遊撃にコンバートされる理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
三塁で2度ゴールドグローブ賞を獲得しているマニー・マチャド選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ボルティモアの地元紙『The Baltimore Sun』が現地27日に報じたところでは、オリオールズのバック・ショーウォルター監督が、今季から三塁手のマニー・マチャド選手を遊撃にコンバートする考えを明らかにした。

 マチャド選手といえば、2012年に19歳でMLBに初昇格してから三塁を任され、在籍6年間で2013、15年の2度ゴールドグローブ賞を獲得している現在MLBで屈指の名三塁手の呼び声が高い選手だ。そのアクロバティックなプレーに人気も高く、オールスター戦にも3度出場を果たしている。

 ショーウォルター監督に構想によれば、昨シーズン途中にレイズからトレード移籍してきたティム・ベッカム選手を三塁で起用する方針だという。確かにこれまでマチャド選手はMLBで52試合ほど遊撃を守った経験はある一方で、ベッカム選手のMLBでの守備機会は遊撃が173試合に対し三塁がわずか9試合だ。データだけ見れば、ちょっと強引なコンバートのようにも思える。

 しかし指揮官は以下のように説明している。

 「マニーはすごく喜んでいる。今回のコンバートはポジションを変更するというのではなく、むしろ彼がずっと準備してきたポジションに戻るという感じだ。遊撃はマニーにとって本来のポジションだ。ずっとそのポジションでプレーしてきた。逆にティムはいろいろなポジションを守ることができる。マニーがチームにとってとても重要な選手なのは理解しているし、遊撃を守ることでさらにチームにインパクトをもたらしてくれると考えている」

 実はマチャド選手はMLBに昇格するまで、マイナー組織ではずっと遊撃を守っていた。しかしチーム内にJJ・ハーディ選手(2012年から3年連続ゴールドグローブ賞を受賞)が遊撃にいたため、MLB昇格以降は三塁に回ることになったのだ。ハーディ選手がこのオフFAとしてチームを離れたため、ようやくマチャド選手の念願が叶い本来のポジションに戻ることになったというわけだ。

 これまでカル・リプケン選手やアレックス・ロドリゲス選手など名遊撃選手が三塁にコンバートされるケースをしばしば目撃してきた。だがその反対に名三塁手が遊撃にコンバートされるというのはあまり記憶にない。しかしまだ25歳という年齢で、強肩を含め彼の身体能力を考えれば、ショーウォルター監督の構想通り遊撃でも素晴らしい守備力を発揮してくれそうだ。

 ただ多少の不安がある。今シーズン終了後にFA資格を得るマチャド選手。このオフもたびたびトレード話が浮上するなど、ダン・デュケットGMは現在も他チームからのトレード申し入れに耳を傾け続けているという。状況次第では他チームに移籍して、遊撃コンバートそのものが立ち消えになってしまう可能性が残されている。いずれせよオリオールズにいる限りにおいては遊撃で出場できることが保証されたのだから、マチャド選手もやる気に満ちあふれているはずだ。

 ところで前述のリプケン選手、ロドリゲス選手は三塁にコンバートされるまで190センチを超える大型遊撃手として有名だった。中でもリプケン選手はその草分け的な存在だ。最近ではドジャースのコーリー・シーガー選手、アストロズのカルロス・コレア選手、ヤンキースのディディ・グレゴリウス選手など190センチを超える大型遊撃手が続出している。そして190センチのマチャド選手も晴れてその仲間入りをするわけだ。

 まさに大型遊撃手の全盛時代に入った感があるMLB。今シーズンは彼らの活躍にも注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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