日本野球界の既成概念に挑み続ける筒香嘉智がメディアに語った12分間に及ぶ熱き思い

自らが携わるクラブチームの体験会で子供たちと触れ合う筒香嘉智選手(筆者撮影)

 DeNAの筒香嘉智選手が14日、自らがスーパーバイザーを務める『堺ビッグボーイズ小学部』の体験会に参加し、野球を通じて総勢73名の小学生、幼稚園児と触れ合った。

 同クラブは筒香選手が中学時代に所属していたボーイズリーグのチームで、2015年に小学部が新設されたことで昨年からスーパーバイザーに就任。自らの理想を体現する場として昨年に引き続き体験会に参加し、参加した子供たちに野球の楽しさを体感してもらった。

 体験会では昨年同様に、世間で行われている野球教室のように“投げる”、“打つ”という野球の基本を教えることはまったくしない。身体の動かし方の基本を体験してもらい、あとはボール、バット、グローブを使いながら楽しんでもらうという単純なものだ。いうまでもなく体験会は終始子供たちの笑い声に包まれていた。

 これは体験会のためだけに用意されたプログラムではなく、小学部の通常練習でも同じコンセプトを貫いている。根底にあるのは常に子供たちが心から野球を楽しんでもらう場を提供することだ。それは野球人口減少が叫ばれる昨今、筒香選手なりに真剣に向き合って導き出した彼なりの答えでもある。体験会の最後に行われたメディア向けの囲み会見でも、そんな筒香選手の熱い思いが溢れ出ることになった。質問に答える前にまず自ら口を開き、12分間に渡り自分の考えを激白したのだ。

 「まず野球人口がすごく減っていると言われています。原因はいろいろ挙げられていますが、少子化が問題であったりとかいろいろ言われていますけど、それよりも速いスピードで野球人口が減っているのが現状だと思います。そんな中で各地で野球教室や体験会を開いているのを僕自身も聞いたり、目にしたりしていますけど、本当に野球人口がなぜ減っていっているのかというのをもっと掘り下げて、野球に携わっている方やそれ以外の方々も考えていかないと、世の中のスピードがもの凄く変化していっている中で、野球界はなかなか昔と変わっていないというのが、皆さんもご存知のようにかなり多くあると思います」

 こう切り出した筒香選手は、以下のように彼なりに感じた野球界の“悪しき”既成概念を列挙していった。

勝利至上主義

 指導者が勝利に固執する余り、子供たちが楽しそうに野球をやっていない。

大人の顔色を見てプレーしている

 本来ならもっといいプレーをしたい、ファインプレーをしたい、もっと遠くに飛ばしてやろうという気持ちでプレーしないといけないのに、指導者や保護者に怒られないようにどうしようかということばかり考えている。

指導者や保護者が答えを与えすぎる

 子供たちが指示待ちの行動しかできず、自分で考えようとしない。

練習量の多さとプレースタイル

 どうしても勝つことを目的に練習量が増えていってしまう。それは故障のリスクが確実に増え、筒香選手自身も未来のある子供たちが潰れていく姿を目撃してきた。また試合では勝つために投手に変化球を投げさせ、作戦面でも細かい野球をしてしまう。結果としてスケールの大きい選手が育ってこない。

トーナメント方式の弊害

 ジュニア期から高校まで基本的に公式戦はトーナメント制で実施されているが、一発勝負であるため出場できる選手は限られてくるし、選手が平等にいろんな経験を積むことができない。

金属バットの弊害

 日本で使用されている金属バットは飛びすぎる。ドミニカでは早い時期から木製バットを使用するし、大学まで金属バットを使用する米国では木製バット並みに反発係数を抑えている。これでは子供たちのためになっていない。筒香選手自身も木製バットに適応するのにそれ相応の時間を要した。

 これらはまさに現在のアマチュア野球界の現状そのものだ。筒香選手はこうした現状を変えていかない限り、野球人口の減少に歯止めがかからないと考えているのだ。それは筒香選手が野球界に変革を求める強烈な意思表示だということだ。

 「もちろん日本がすべて悪いわけではなくて、日本にもいいところがたくさんあると思います。でも進んでいない、遅れているというのも現状なので、海外に目を向けてそこからいいものを吸収するというんですかね、そういうところがすごく大事だと思うんです。

 ただ野球人口を増やしていくだけでなく、将来の野球界のことを考え、子供たちのことを考えていくことが大事だなと思います。僕も勇気を持ってトライしていきたいです。

 まだいろいろ規制がある中でも最大限に取り組みながらメッセージを発信していきたいです。堺ビッグボーイズの部員が増えて欲しいなんて気持ちでやってないですし、本質は野球界のためであったり、子供たちのためなんで…」

 26歳の若者が野球界全体を敵に回すとも受け取られる発言をするのは決して簡単なことではない。また今後どんな発信を続けようとも、自らが周囲を納得させるだけの成績を残していかない限り説得力が伴うことはないだろう。今回の激白は、それらを全部踏まえた上で筒香選手なりに固めた覚悟そのものなのだろう。

 今後も筒香選手がどのように信念を貫き通していくのか見守っていきたい。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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