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Bリーグ滋賀のクラッチシューター並里成が見せた試合の流れを読む憎らしいほどの嗅覚

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都に連勝する立役者になった滋賀の並里成選手

 開幕から好調を維持し、琉球ゴールデンキングスと西地区首位タイに並ぶ京都ハンナリーズを地元守山市民体育館に向かい入れた滋賀レイクスターズ。結果は93-82、77-68と見事連勝に成功し、同地区単独3位に踊り出し勝率5割に届く位置(6勝7敗)まで近づいた。

 今回の連勝の立役者になったのがエースPGの並里成選手だった。第1戦は17得点、7アシスト、そして第2戦は16得点、7アシストと、いずれもチームトップ(もしくはタイ)を記録する活躍ぶりだった。ただ並里選手の凄さは記録に残るスタッツだけではない。試合の流れを確実に自分のチームに引き込む嗅覚とチームやブースターを一気に勢いづかせる肝心な局面でシュートを決めきれる決定力だ。この2試合でも彼のこの能力が遺憾なく発揮されていた。

 またプレーぶりも憎らしいほど自信に満ちた太々しさを見せる。味方にすればこれほど頼もしい存在はいないし、また反対に相手チームからすればこれほど嫌らしい存在は他にはいない。NBAのオールドファンから理解してもらえると思うが、マーク・ジャクソン選手やステフォン・マーブリー選手と同じ系譜の選手だと思う。まさに“曲者”タイプの選手だ。

 「僕のタレントいうか才能をコーチが最大限に生かしてくれるというか、コーチが僕にやってほしいという思いや期待に応えるように毎試合臨んでいます。チームが苦しい時だったりした時は僕自身が(ボールを)持ってパスしていくので、ポイントポイントで僕がつなぎ(役)をできたというのがコーチの期待に応えられたかなとは思っています。

 自分でも勝負強さはあると思っているし、(プレーの)自信というのは日頃の練習から来ていると思ってます。普段の練習も人より何倍も努力して自信のある状態で毎試合臨みたいと思ってます」

 滋賀のオフェンスの最大の特徴は、相手のミスに乗じて一気果敢に攻めるファーストブレイクだ。その土台となる味方選手たちを走らせる機動力が並里選手であり、最後のシュートまで決め切るのも彼なのだ。そうして試合の転機を作り出すと、今度は味方選手へパスを回しながら更なる波状攻撃を仕掛け、あっという間に試合の主導権を握ってしまう。そして攻撃を支える強気な太々しいプレーぶりが地元ファンの熱狂を巻き起こし、逆に敵地では大ブーイングを巻き起こすことになる。

 「僕は凄く(敵地で)ブーイングを受けるのが好きだと言ってしまえば変態ですけど(笑)…。もちろんアウェーはホームより(選手たちは)心細いじゃないですか。そういう時に自分が前に出て、ブーイングだったりアウェー感を楽しみたいなというのはあります。違った意味でアウェーの試合も凄く楽しいです。相手を黙らせるのも凄い大好きなので、やった感がありますね。僕が敵にいたら凄く厄介だなと思われるような嫌われる存在でいたいなと思います」

 沖縄出身の28歳。172センチ、72キロと決してバスケットボール選手として恵まれた体格ではない。しかしやや大人しめの日本人選手の中で、外国人選手とマッチアップしてもまったく物怖じしそうにない彼のプレースタイルは日本代表でも是非とも生かしてほしいところだと思うのだが…。しかし実際は昨年12月に日本代表候補重点強化選手に選出されているものの、10月から実施されている日本代表の強化合宿には声がかかっていない。

 「このリーグでもいろいろな優秀な選手(PG)がいますけど、まずこのサイズでポストアップが守れると僕は思っています。またこのリーグの中では一番ディフェンスもできると思っているので、一番チームを引っ張っていけるとも思ってます。シュートの部分で周りの選手よりは(レベルが)低いとは思うのでそこを練習して、常に日の丸に呼ばれてもいいように準備はしています。

 それと自分は(試合中に)気が抜ける時があるので(笑)…。集中を長く持続するというのが凄く苦手で、試合の前もギリギリまでリラックスしていてコートに入った時にバッと集中するんですけど、そこを何とか自分の中で日々訓練していきたいなと思ってます。今は(試合がない日は)1日中練習って感じなんですけど、その中で集中を切らさないでトレーニング、練習をしっかりやるという集中力を自分なりに訓練してやってます。それがどんどん試合に結びついていければいいなと思います」

 5日の試合後に会見場を後にする前「自分は天才型じゃなくて努力型の人間です」と言い切った並里選手。彼が統率する滋賀はこの後第8、9節の4試合をホームで戦うことになる。また西地区に面白い存在が頭角を現したようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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