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巨漢センターの本領を発揮し始めた京都ハンナリーズのジョシュア・スミスの制圧力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
いよいよ巨漢センターの本領を発揮し始めたジョシュア・スミス選手

 Bリーグ第6節で京都ハンナリーズが島根スサノオマジックとの2連戦に臨み、85-78、64-57と連勝に成功し、通算成績7勝4敗で再び琉球ゴールデンキングスと並び西地区首位に立った。

 島根は第4節に本拠地で琉球に連勝しており、チーム力はほぼ京都と拮抗していたはず。今回の連敗について鈴木裕紀ヘッドコーチ(HC)は以下のように解説している。

 「第4クォーター(G)にうちのジョシュ(・スコット選手)がアクシデントで怪我をしてしまい、バックアップが入った時に立て続けに5点やられてしまったので…。うちは元々選手層が薄いというはわかった上でシーズンに臨んでいるので、そこの底上げが長いシーズンを戦っていく上で重要になってくるのかなと感じています。

 前回の琉球戦を(ビデオで)観た時はうまく琉球さんにアジャストされてしまっていたなと感じていたんですけど、いざうちがやってみると、あそこ(ペイント部分)でイニシアチブをとられてしまったので、僕たちにとってはあそこが勝敗を分ける大きなポイントになったのかなと思います」

 鈴木HCが話してくれたスコット選手を負傷に追い込みそこから5点を奪う攻撃をみせ、さらに2試合ともにペイント部分でイニシアチブを握った選手こそが、今シーズン京都に新加入したジョシュア・スミス選手だ。1試合目は約14分間の出場で17得点、6リバウンド、そしれ2試合目が約18分間の出場で10得点、4リバウンドを記録し、2試合ともに終盤の大事な局面でペイント部分を制圧し、試合の流れを京都に引き込む活躍をみせた。

 スミス選手のここまで11試合の成績は、平均10.9得点、5.9リバウンドとずば抜けた成績を残しているわけではない。登録では208センチ、138キロとなっているが、10月1日の三遠戦後にヒーローインタビューに立った際、現在の体重が150キロであることを公表しているほどオーバーウェイトの状態で、同25日の琉球戦に大敗した際は鈴木HCが説明しているように、スミス選手が相手選手のスピードに対応できなかったことが大きな敗因になっていた。

 さらにBリーグ初参戦のスミス選手はまだリーグの判定に馴染めておらず、笛を恐れ消極的なプレーになってしまうケースがあり、どうしても安定したプレーを続けることができなかった。それだけに島根の2連戦でみせた圧倒的なパワーと制圧力は、開幕から好調を維持する京都に新たな好材料が加わったといっていいだろう。

 「(第2戦の)前半は特にインサイドにスペースがなくてジョシュも佑也(永吉選手)もなかなか苦しんで、マーカス(・ダブ選手)も今日は得点ゼロでしたし、結構スペースを見つけられない部分があったんですけれど、第3、4に入ってようやくペリメーターのプレーヤー自体が多めにスペースをくれたことで彼が動ける範囲が広がったというのと、(ボールを)もらう前の段階で少しファイトしていい位置でボールをもらえ始めましたので、それが前半と後半と違って良くなった要因かなと思います。

 自分の周りに2、3人のプレーヤーが来ながらもあそこまでファウルをもらいながらプレーできたということは、チームとしてはこれからワンステップ上に行けそうな気がしています」

 浜口炎HCが話するように、スミス選手のプレーが安定することで京都のオフェンスが一段上にランクアップすることに繋がる。また同HCの説明によると、スミス選手のオーバーウェイトの原因は来日前に参戦していたフィリピン・リーグで負傷したことで身体を動かせなかったためで、現在の体調はまだ70%程度らしい。現在ベスト体重を目指し体重を落としている段階で、今後さらに動きにキレが出てくればスミス選手のプレーはさらに磨きがかかってくるだろう。

 「ようやく気分良くプレーできるようになった。みんなと一緒にプレーを続けながらチームとして徐々に固まってきているし、着実に進化している。昨日の試合(島根の第1戦)でユウスケ(岡田選手)から『確率50%のシュートを打つのではなく、ドリブルであと一歩リムに近づけば100%決まるシュートが打てる』と言われたんだ。自分もペイント部分に入れば何かを起こせそうだとは思っている。だからポストでボールを受けたら少しでもリムに近づいて確実にシュートを決められるように、ペイント部分に入っていくように心がけている。

 Bリーグの判定にも慣れてきたよ。この3年間3つの違うリーグでプレーしていたので、その難しさは理解している。ようやくどこまで身体を張っていけるのかがわかるようになってきた。

 この2試合は積極的にプレーすることができたと思う。強力なインサイド・プレーヤーがいれば、確実に得点できるようになる。自分がマッチアップする選手をファウル・トラブルに持ち込めば、チームを楽にプレーさせることができる。これからもこういう積極的なプレーをしていきたい」

 スミス選手も試合を重ねながら手応えを掴み始めているのは間違いない。これからもっとファンを楽しませてくれるプレーを披露してくれそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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