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国歌斉唱時にひざまずいたマックスウェルが故郷アラバマで受けた対応

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLBでただ一人国歌斉唱時にひざまずく行為を実行したブルース・マックスウェル選手(写真:ロイター/アフロ)

 先月22日に行った演説でドナルド・トランプ大統領が、国歌斉唱時にひざまずく行為を行ったNFL選手を非難したことを機に、NFL内にひざまずく選手が拡大し、今も尚トランプ大統領とNFLとの間で全面対決が続いているのは周知の方も多いだろう。

 そもそも大統領が「国、国旗に対する侮辱行為」と断じたひざまずく行為は、米国内に広がる人種差別問題への抗議を表明する目的だった。だからこそ黒人選手を中心にNFLのみまらず他競技のアスリートにも大統領批判が拡散していった。

 彼らの考えに賛同し、MLBでただ1人国歌斉唱時にひざまずいたのがアスレチックスのブルース・マックスウェル選手だ。彼の故郷のアラバマ州は現在でも黒人差別が激しい地域で、数々の人種差別を目撃してきた体験からマックスウェル選手もひざまずくことを決断。それ以降様々な批難や脅迫を受けながらもシーズン終了まで継続した。

 そしてシーズン終了後も、マックスウェル選手に対する風当たりは弱まっていないようだ。地元アラバマ州に戻ってから地元住民に受けた対応を、『TMZ SPORTS』に赤裸々に告白している。

 同社サイトにはインタビュー形式のマックスウェル選手の動画も公開しているのだが、地元レストランに友人とランチに行った際に、ひざまずく行為をしたことを理由にウェイターから接客を拒否されたことを告白している。以下インタビューの内容を抜粋する。

 「地元で人種的に偏見視されているようだ。同じ高校に通っていた黒人の市会議員と一緒にレストランにランチを食べに行ったら、ウェイターから接客を拒否されたんだ。彼はアラバマ州ハンツビルで行われたトランプ大統領の演説(NFL選手を批判した演説)にも参加していて、彼の支持者だったようだ。

 彼は自分を認識したらしく『あんたは例のひざまずいた奴だろう。自分はトランプ大統領に投票したし、彼の指示することはすべて指示する』と言われてた。その後市会議員がマネージャーと話をして、別のテーブルに移動させられ他のウェイターに回された。

 これが自分の故郷の姿だ。実際にそれ(人種差別)に関わってないと、理解でできないし、感じることもないだろう。自分は26歳で、教育も受けているし、礼儀もわきまえている。それでも今でもこんなことが起こっているんだ」

 その一方でマックスウェル選手は、ひざまずく行為を行ってからアダム・ジョーンズ選手、ココ・クリスプ選手、ダスティ・ベーカー監督らMLBの黒人選手たちから連絡をもらい、激励されたことも明かしている。

 人種差別は米国内に長年巣喰う社会問題だけに、NFLとトランプ大統領との全面対決もそう簡単に解決する状況にはないようだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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