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NBAが国歌斉唱時の規則厳守を求める文書を各チームに送付

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
NBAの規則では国歌斉唱時にチーム全員が起立することが決められている(写真:ロイター/アフロ)

 国歌斉唱時にひざまずく行為を行ったNFL選手に対し、ドナルド・トランプ大統領が侮蔑的な批判演説を行ったことで、NFLを中心に国歌斉唱時にひざまずく抗議活動が拡大するとともに、大統領対スポーツ界の敵対関係が鮮明する中、プレシーズン試合開幕を目前に控えたNBAが29日、国歌斉唱時のリーグ規則厳守を求める文書を全チームに送付した。

 文書を入手したESPNのザック・ロウ記者によると、文書はマーク・テータム副コミッショナー名義で作成されたもので、国歌斉唱時は選手、コーチ、トレーナーらチーム全員が起立しなければならないリーグ規則の厳守を求めている。

 また文書にはリーグ規則厳守はあくまでリーグからの通達であり、規則に違反した場合はリーグから何らかの措置を講じるとしており、各チームの裁量で勝手な判断をすることを禁止している。さらにリーグ規則厳守を求める代わりに、選手やコーチによるビデオメッセージ等で自らの意見を伝える方法を提案することで、選手たちの表現の自由を尊重している。

 すでにNBAとトランプ大統領の間も険悪なムードに包まれている。昨シーズン覇者のウォリアーズの中心選手、ステファン・カリー選手が公の場でホワイトハウス表敬訪問を辞退する旨の発言をしたことで、大統領がツイッター上に「それなら招待を取り止める」とメッセージを投稿し応戦。これを受け今度はウォリアーズが声明を発表し、チームとしてホワイトハウス訪問を辞退することを表明する事態に陥っていた。

 さらに大統領への敵対心はリーグ全体に広がり、リーグ屈指のスター選手であるレブロン・ジェームス選手らも次々に批判発言を繰り広げている。これに対し、アダム・シルバー=コミッショナーやオーナーの1人マイケル・ジョーダン氏らも選手擁護の立場を表明し、NFL同様にリーグ全体で大統領に対峙する様相を呈していた。

 ただシルバー=コミッショナーは選手の主張を尊重する一方で国歌斉唱時の起立を求める発言もしており、今回の文書送付はそれを周知徹底を図ったものとみられる。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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