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MLBコミッショナーが将来的なAI審判導入を示唆

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
将来的にIT審判の導入を示唆したロブ・マンフレッド=コミッショナー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 『ESPN』のアンドリュー・マーチャンド記者が22日、ロブ・マンフレッド=コミッショナーに取材した内容をまとめた記事を公開した。

 それによると、マンフレッド=コミッショナーは将来的にストライク、ボールをも判定するAI審判の導入を考慮しているらしいのだ。以下コミッショナーの発言内容を紹介したい。

 「テクノロジー的な問題になってくるが、機械によってリアルタイムにボール、ストライクを判定するようになる時がやってくると信じている。ここ最近(審判関連で)起こっている事象を考慮すれば、そうした方向に向かっていくと考えるべきだろう。

 主審に人間的な要素を残したいかどうかは、次元の違う話だ。もしテクノロジーが(AI審判が可能な)レベルに達したのであれば、やはりオーナーたちは人間から機械に移行すべきかどうかを話し合わなければいけないだろう。ただ現段階では人間より正確に判断できるテクノロジーは開発されていないし、現在の審判たちも95%は正しい判断をしていることも忘れてはならない」

 マンフレッド=コミッショナーが説明する通り、現時点でAI審判の即時導入を考えているわけではなく、人間の判断以上に正確でかつリアルタイムに判断できる技術開発が達成された時点で、オーナーたちと導入について討議していくという姿勢を示しただけに過ぎない。だが現在のMLBはボール、ストライクの判定以外はすべてリプレー判定の対象になるなどMLBのIT化は着実に進んでおり、決して遠い未来の夢物語ではないはずだ。

 またマンフレッド=コミッショナーは、先週末にMLB審判の組合組織『WUA』が審判に向けた言葉の暴力に対し、試合中に白いリストバンドを着用する抗議活動を実施したことに対しても見解を示している。ちなみにコミッショナーは抗議活動実施直後にWUAと話し合い、わずか1日で活動の取り止めに成功している。

 「審判の抗議活動にちょっと驚いていた。とりあえず明らかにしておきたかったのは、抗議活動が統一労働規約に違反しているということだ。それを彼らにしっかり伝えたかったのと、規約内で自分たちの権利をしっかり履行するつもりでいた。運良く問題が深刻になる前に沈静化する方向で話し合うことができた。いい労働関係を築けたと思う」

 WUA側は、抗議活動を取り止めた理由をコミッショナーから将来的な協議の場を設ける提案があったからと説明しているが、コミッショナーは抗議活動そのものが統一労働規約違反であり、状況によってはWUAに対し何らかのアクションを起こす考えがあったことを明らかにしている。両者の主張を聞く限り、どうもMLBと審判の間でわだかまりが完全に消えたようには思えない。

 今回のAI審判導入の発言も含め、まだまだ問題がこじれそうにも思えるのだが…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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