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NBA王者の主力選手がホワイトハウス訪問辞退を表明

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ホワイトハウス訪問辞退を表明したケビン・デュラント選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 アメリカの4大プロスポーツであるMLB(野球)、NFL(フットボール)、NBA(バスケットボール)、NHL(アイスホッケー)の優勝チームが毎年、大統領から招待を受けホワイトハウスに招かれるのが慣習になっている。最近では2013年に優勝したレッドソックスの一員として、上原浩治投手と田澤純一投手がホワイトハウスを訪れたことで、日本でも話題になっている。

 そんな中、昨シーズンのNBA王者に輝いたウォリアーズの主力としてチームを牽引したケビン・デュラント選手が、ドナルド・トランプ現大統領を批判し、ホワイトハウス訪問を辞退する意向を表明したのだ。

 今回のデュラント選手の意向を報じたのは、『ESPN』のクリス・ヘイネス記者だ。デュラント選手の出身地メリーランド州シート・プレザントで行われた「ケビン・デュラント・デー」に出席した同選手を直撃し、彼の考えを聞き出したものだ。

 各リーグの優勝チームは、翌シーズンのワシントンDCや周辺地域に遠征した際にホワイトハウスに招待されるケースがほとんどで、ウォリアーズの場合2018年2月28日にワシントンDCを拠点とするウィザーズ戦が組まれており、これに合わせて招待される可能性が高い。

 デュラント選手の出身地はワシントンDCから11マイル(約18キロ)しか離れておらず、子供の頃から優勝トロフィーを抱えてホワイトハウスを訪れるのが夢だったという。しかし現状を考慮した上で同選手は、「いいや。訪問するつもりはない。現在オフィス(ホワイトハウス)にいる人物を尊敬していない」と訪問を否定した。

 さらにデュラント選手のトランプ大統領への不信感の言葉が続く。

 「彼が同意することに自分は同意できない。ホワイトハウスを訪問しないことで自分の声が届くだろう。あくまでこの考えは個人的なものだが、他の選手たちを知る限り、彼らも皆同意してくれるだろう」

 デュラント選手がこんな過激発言をするのは理由がある。バージニア州シャーロッツビルで起こった白人至上主義衝突に対するトランプ大統領の対応に批判が集まる中、デュラント選手のみならず多くのアスリート達が声を挙げ始めているからだ。

 「間違いなく彼が(現在の人種差別傾向を)先導している。彼が大統領に就任し、オフィスに入ってからというもの、我が国は分断されてしまった。決して偶然ではない。オバマの頃はいろいろな意味で尊敬されたし、初めての黒人大統領ということで、自分が生まれ育ったコミュニティでは皆が希望と期待を抱くことができた」

 実は昨シーズンのNFL王者に輝いたペイトリオッツの選手が4月にホワイトハウスを表敬訪問した際も、数名の選手が辞退しているのだが、今回の白人至上主義衝突を機に、デュラント選手らアスリートの大統領に対する不信感は間違いなく悪化の一途を辿っている状況だ。

 4大スポーツの中でも黒人選手の占有率が高いNBAだけに、デュラント選手の発言は今後さらに波紋を広げることになりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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