マイナーで奮闘する中後悠平が残り1か月に賭ける思い

マイナーから必死にアピールを続ける中後悠平投手

 中後悠平投手が所属する2Aジャクソンは、米国内でも最も高温多湿地域の南東部(アラバマ州、フロリダ州、ミシシッピ州、テネシー州)を拠点とする「サザン・リーグ」に属し、バスで移動しながら各地を転戦し、わずか4ヶ月間で140試合を戦う過酷なリーグの1つとして知られる。

 昨年中後投手は1Aビサリアから3Aリノに“飛び級”昇格していたため、2Aを経験するのは今回が初めてのことだ。

 「最初の頃は結構しんどかったですね。去年は3A、1Aに回っていた時に、ちょうど長距離移動がなかったんです。ただ3Aは飛行機を使うので朝早い移動とかはありましたけど、ずっとバスに乗って移動するというのはなかったです。

 オールスター前の時には13時間バス移動もあったので、あの時は死ぬかと思いました(笑)。次の日からオールスター休みで3日間オフだったのでなんとかかなりましたけどね…。調子の悪い時は力んでしまっているのもあったと思うんですけど、正直身体も疲れていました。バス移動での疲れも影響していたのかなというのもありますね。

 特に何かを変えた訳ではないんですけど、慣れというんですかね。もう東京から大阪の車移動なんて何も怖くないですよ。全然いけます(笑)」

 すっかり2Aの過酷な環境にも適応している中後投手だが、本人の「調子が悪かった」という言葉の通り、シーズン開幕当初は納得できる投球ができなかった。それは成績にも如実に表れている。月間防御率を見てみると、4月2.84→5月4.50→6月1.32→7月1.42と推移しており、最初の2ヶ月間はかなり苦しんでいたのがわかる。

 「開幕当初は真っ直ぐが良くなくて、スライダーの曲がりも悪いというのがありました。スライダーの曲がりが悪いのは、腕が振れていないし、身体が開いてうまく使えていないということなので、とにかく真っ直ぐをしっかり投げようという(コーチとの)話になっていた。

真っ直ぐがしっかり投げられての変化球なので、ツーシームとかは放らないで真っ直ぐとスライダーの2つだけを投げてました。

 最近は(フォームが安定し真っ直ぐが良くなった結果)ツーシームやチェンジアップを多めに入れ始めました。(開幕当初は)右バッターの時はフォーシーム(真っ直ぐ)ばかりだったんですけど、最近はずっとツーシームを使ってます。これまでなら真っ直ぐでファウルになっていたのが、そのままゴロになり早く討ち取れるのが多くなってます。

 ようやく(投球に)安定感ていうものが出てきたし、気持ちの面でも楽になりました。去年はずっとそんな感じ(組み立てて)でやっていた。だから抑えられたんだと思います。(今年は)ツーシームとチェンジアップの比率が高いので、去年とはまたちょっと違う感じですよね」

 昨年は3Aに昇格後13試合に登板し防御率0.00を記録し一気に注目を集める存在になったが、今シーズンは多少苦しみながらも同じレベルの安定した投球に辿り着いたようだ。現在はクローザー、セットアップ、回またぎ登板等々、チームが求められるまま様々な役割をこなしながら、チーム最多タイの38試合に登板するタフさを披露している。

 「日本人だから投げられるだろうと思われているんですかね(笑)。ただ僕は『行けるか?』と言われれば、いつでも『行ける』と答えてるんですけど、他の中継ぎ陣は平気で『行けない』と言ってるんですよね。

 僕はいっぱい投げたいし、結果を残したいというのがあるので、投げられるチャンスがあれば投げたいし、投げられないほど疲れているというのもない。だからいつも『投げられます』と答えるようにしています」

 今年は招待選手としてメジャー・キャンプに参加。昨年は左の中継ぎ投手に苦しんだダイヤモンドバックスだけに、中後投手の活躍次第ではメジャー昇格のチャンスは十分にあると思われてきた。

 しかしいざ蓋を開けてみると、チームは開幕から好成績を維持し、左の中継ぎ陣もホルヘ・デラロサ投手を中心に安定して投球を続けている。メジャー昇格の最低条件である40人枠にも入っていない中後投手がメジャー昇格するチャンスは、かなり厳しいというのが現状だ。だからと言って中後投手が落胆しているはずもないし、日々前を向いて取り組んでいる。

 「僕がずっとゼロに抑え続けても上がれる確率はそんなに高くない。それでも僕がやるべき事は試合で投げて抑えることなんです。もちろん上には行きたいですし、3Aに行きたいという気持ちもありますけど、2Aでも投げ応えはありますし、目の前の試合をしっかり投げることを意識してやっています。

 まあ僕が40人枠に入っているのであれば変わりますけど、僕だけでなく全員が上を目指してやっているので、特別にどうとかというのはないです。絶対に誰かが見てくれていると思うので、現時点では目の前の試合をしっかり投げるしかないです」

 すでにロッテで戦力外という辛さを味わった男だけに一切の甘えはない。来月には28歳を迎え、今年メジャー昇格できなくても来年以降メジャーの戦力になり得るだろうとチームに期待感を抱かせない限り、来年以降の契約を勝ち取るのも難しい年齢に差し掛かってきた。

 まさに残り1ヶ月は、中後投手にとって生き残りを賭けた最後のアピールの場なのだ。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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