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マイナー4選手が遠征先フライトに乗れずタクシーで7時間移動

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
タクシー移動を余儀なくされた1人、マーク・ロー投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

今回の珍事件が明るみに出たのは、当事者の1人だったDJ・ピーターソン選手のツイートからだった。

このアクシデントが起こったのは7月16日早朝だった。タコマは前日まで本拠地(ワシントン州シアトルの隣町)での4連戦を終え、この日からニューメキシコ州アルバカーキで5連戦(しかも4日間)を戦う予定になっていた。早朝移動をしていた選手たちだったが、経由地のアリゾナ州フェニックスでアルバカーキ行きのフライトに乗ることができなかった。

フェニックス空港で立ち往生となったのはピーターソン選手の他、マーク・ロー投手、ダニエル・ボーゲルバック選手、パット・ライト投手の4人、彼らは格安タクシー会社として米国で急成長していている『Uber』を利用し、アルバカーキを目指すことを決断。早朝2時55分にフェニックス空港を出発した。

全行程は422マイル(約675キロ)。7時間の長距離移動の末無事アルバカーキに到着し、全員がその日のナイターに間に合うことができた。ロー、ライトの2投手は出場機会がなかったが、ボーゲルバック選手は「4番・一塁」で、ピーターソン選手も「5番・DH」でそれぞれフル出場を果たしている。

マイナー選手が飛行機移動をする場合、チャーター機を使うメジャーと違い、一般人と同じ航空会社が運航するフライトを利用しなければならない。もちろん移動時間は運航スケジュールに合わせるしかない上、マイナーリーグの多くが地方都市にあるため経由便は当たり前だ。また日程がメジャー同様に移動日なく試合が組まれているため、今回のような早朝移動は日常茶飯事なのだ。

4人のうちロー投手はメジャーで計382試合に登板している34歳のベテラン右腕だが、待遇は他の選手と何ら変わることはない。シーズン途中でマイナーに降格してきた選手も同様だ。以前に何人もの選手から話を聞かせてもらったことがあるのだが、メジャー経験者がマイナーの辛さを味わうのが、この移動方法の違いだという。

ちなみに今回のタクシー料金はピーターソン選手のツイートで報告しているように、683.52ドル(約7万7300円)だった。チームの支払いなのか、それとも4選手の割り勘になったのかは定かではない…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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