全国切符を逃したものの“雑草集団”OBC高島の飽くなき挑戦は続く…
去る7月2日、滋賀県の甲賀スタジアムにおいて、第42回全日本クラブ野球選手権大会東近畿予選が行われた。京都、滋賀、奈良の各予選を勝ち抜いた3チームが総当たりで戦い、本戦に出場できる代表1チームを決めるというものだ。
滋賀の予選を勝ち抜いたOBC高島も、その1チームだった。まず第1試合に登場し、京都代表の京都城陽ファイアーバーズを相手に8-0の7回コールド勝ちで1勝目を挙げることに成功。しかしその30分後に行われた大和高田クラブとの第2試合では、1-6で敗れてしまい、2009年以来3度目の本戦出場を逃してしまった。
この日は試合開始前から夏のような日差しが照りつけ、気温、湿度ともに選手を苦しめ続けた。連戦を強いられたOBC高島の選手たちは5回終了時点で0-1と善戦していたものの、先発出場選手が次々に痙攣を起こしてしまうほど、次第に選手たちの体力は限界を迎えていた。最後は満足なプレーができない状態で力尽きるしかなかった。
全日本クラブ野球選手権大会とは社会人野球の中でもクラブチームしか出場できない大会だ。クラブチームとは同じ社会人野球といっても、強豪といわれる企業チームとはまったく別物だ。普段はそれぞれがバラバラの職業に従事し、企業からチームに潤沢な予算が用意されているわけでもない。プロや企業チームに進めなかった大学生、高校生らが野球を続けるために集まってくる、社会人野球の“底辺”ともいえる場所だ。
元メジャーリーガーの大家友和氏がGMを務めるOBC高島も、そんな“落ちこぼれ”選手たちが集まるクラブチームだ。しかし地元滋賀県高島市の協力を得て、選手たちの受け入れ先企業を揃え、さらに室内練習場や選手寮も完備した環境を整えるなど、毎年のように夢を諦めきれない選手たちがチームにやって来る。
選手たちの究極の目標は、もちろんプロ入りだ。だが創設12年目を迎えるチームで、これまでプロ入りできたのはたった1人しかおらず、多くの若者たちが夢半ばでチームを去っていった。それでも選手たちは少しでもプロのスカウトにプレーを見てもらうためにも、チームとして毎年全国大会出場を目指して日々の練習に取り組んでいる。
ちなみにクラブチームにとって全国大会を狙えるのは、7月に行われる都市対抗野球と9月に行われる全日本クラブ野球選手権大会の2つしかない(ただ全日本クラブ野球選手権大会で優勝すると、10月に行われる社会人野球日本選手権の出場権を獲得できる)。ただし都市対抗野球は強豪ひしめく企業チームと予選を戦わざるを得ず、クラブチームが本戦出場を果たすのは非常に難しく、それだけに全日本クラブ野球選手権大会の予選突破は是が非でも果たしたい夢なのだ。しかしOBC高島は、過去本戦出場12回を誇る大和高田クラブ(元近鉄の佐々木恭介監督が率いる一企業を運営母体とした準企業チーム)の前に涙を飲んだ。
しかし今年4月に元阪神の野原祐也氏を監督に迎え、チームは変わりつつある。都市対抗野球では5月に行われた1次予選で、大和高田クラブや、もう一つの準企業チーム、ミキハウスベースボールクラブを破り、創部史上初の2次予選進出を果たす快進撃をみせたのだ。チームとして正しい方向に向かっている証に他ならない。
「こんなかたちになってしまい申し訳ないと思っている。でもこの短期間でのみんなの急成長は素晴らしかったと思う。今後はローカル大会が続くけど、全部優勝するつもりでいる。みんなもそのつもりでやっていってほしい」
東近畿予選を戦い終えた後、選手たちを集めた野原監督はこのように選手たちに訓示した。もう今年は全国大会出場の道が断たれてしまった中、すでに今年限りの引退を考えている選手もいる。監督の言葉は、引き続き夢を追い続ける選手たちのみならず、最高のかたちで野球人生を終わらせてあげたいと願う、そうしたベテラン選手たちに向けられた叱咤激励に聞こえた。
来年に向けた全国大会出場を見据えた戦いはすでに始まっている。そして今年の残り試合すべてが来年へと繋がっていくのだ。これからもOBC高島の飽くなき挑戦が続いてく。