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巻き返しを目指す日本ハム・田中賢介が続ける打撃の微調整

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今も自分の打撃を追い求めて調整を続ける田中賢介選手

6月2~4日に甲子園で行われた阪神との交流戦。試合前の打撃練習では、自分のタイミングを確かめるように念入りにトスバッティングを続ける田中選手の姿があった。昨年までの通算打率は.285。現在の成績は本人が納得できてないばかりか、ファンも予想もしていなかったことだろう。

しかし練習中の表情は明るく、悲壮感など微塵も感じさせなかった。5月で36歳を迎えたベテランは、これまでも酸いも甘いも味わった様々な経験値を有している。自分が何をしなければならないのかは、田中選手自身がしっかり把握しているからだろう。

「個人(成績)的にはあまり良くないですけど、まだ(開幕から)2ヶ月なんで。あと4ヶ月あるから、そこでしっかり調整してやりたいなと思います。

(オフは)1年間戦える体力というのと、バッティングもほんの少し変えた部分があったので、その取り組みに手間取っているというか…。少し体重移動を少なくしたんですけど、今となってはそれがあんまり良くなくて…。それを修正している状態ですね」

野球界には“打撃は水物”という格言がある。10回のうち3回打てれば成功者として扱われる野球は失敗を繰り返すスポーツだ。球場、投手、健康状態等々、様々なファクターの影響を受けやすい打撃に完成形など存在しない。毎年のように失敗に学びながら新たなものを見つけ出す作業を続けなければならないのは、田中選手も決して例外ではない。

つまり現在取り組んでいる調整というものも単に元に戻すというのではなく、現在の状態を見極めながら新たなものを生み出そうとしている最中だと考えば理解しやすいだろう。

「まあ試合を重ねていけば数字は残っていくと自分を信じてやってますし、そういう(うまくいかない)シーズンもたくさんあったので、最終的にはそれなりの成績を残して終わりたいなと思っています。ちょっとは良くなってきた部分もある。そこを続けていけたらいいなと思います」

田中選手の言葉から窺い知れるように、彼は常に冷静に自分の打撃と向き合っている。この冷静な分析力を有しているからこそ、これまでも安定した成績を残してこられたのだ。そして田中選手は、個人成績ばかりか開幕から厳しい状況が続くチームをも冷静に捉えている。本人の打撃同様、十分に巻き返しが狙えると踏んでいるようだ。

「チームの雰囲気はあまり変わらないですね。まあいつも(雰囲気は)変わらないチームなので。とにかく借金がかなり残っているので、それを交流戦までにゼロに戻せれば最高のかたちかとは思います。(昨年のような爆発力は)あると思いますけどね。先発が整ってきて翔平が戻ってきたりしたら、大分変わってくると思う。

(ベテランとしてチームを牽引するのは)あまり気にしていないですね。自分のやらなければやらないことをやるだけって感じですかね。基本的には(選手それぞれが)自分のやるべきことをやるということです」

もちろん田中選手の復調が、チーム浮上のカギの一つであることは間違いない。とにかく日本ハム・ファンは彼の言葉を信じて待っていてほしい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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