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ソフトバンク内野陣が証言するムネリンが米国で体得した“リズム感”

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
川崎宗則選手が米国の5年間で得たものは実は計り知れないものがある

実は長年MLBの取材を続けてきた自分は、6年前にソフトバンク時代に所属していた当時の川崎選手のプレースタイルをほとんど知らない。ただ過去4年間、アメリカでプレーを続けてきた川崎選手を取材してきた中で、彼のプレー、特に守備が徐々に変わっていったのは肌で感じていた。

昨年川崎選手から守備について話を聞く機会があった際、彼は「これまで日本で身体に染みついていた演歌、民謡を壊したい。それがあと一歩のところまで来ている」と話してくれたことがある。一般のファンからすれば“守備のリズム”と言われてもピンと来ないかもしれない。もちろん取材している我々にも判断が難しい部分ではあるのは否めない。

そこで同じ守備に立つソフトバンクの内野手たちは、現在の川崎選手をどうみているのだろうか?今回は6年前の川崎選手を知る3人の内野手に話を聞いてみた。

まずは6年前に川崎選手と二遊間を組んでいた本多雄一選手だ。

「(戻ってきてからの)第一印象が送球の仕方でした。(アメリカに)行く前は捕り方も、ボールの入り方も“ザ・日本”でしっかりステップを踏んでという感じだったんですけど、今のムネさんを見ていると、まずボール(打球)の見方がすごくリラックスしているように見えるんです。外国人選手のように(打球を)待って手前で捕るような…。日本ではどちらかというと、前にいってバウンドを合わせて捕りにいかなきゃダメなんだと。ムネさんは打球を待ってボールを(ベース上の)ラインで引いていて、そのいいところをリラックスしながら探しているというイメージです。

そしてその後の送球で(現在の)ムネさんに感じたのが、強くなったなと。ボールがパチンとグラブに来るんです。やっぱ投げ方も変わっているし、捕ってからステップするような投げ方も変わりましたね。それは(アメリカでの)5年間の経験だと思いますけどね。

ただ(自分は)それを身につける環境でもなかったし、ムネさんはそうした環境で野球をやられてたので、そういう風な姿になったんじゃないかと思うし…。でも(首脳陣から)『もう少し堅実にいけ』って、もしムネさんが言われたら、逆に日本のやり方のようにできないんじゃかなとは思います」

だが本多選手は一概に日米の違いだけを感じているわけではない。

「(内野手は)捕ってアウトにすれば成立なんで野球は。そうするとどんな捕り方でも、どんな投げ方でも(アウトが)成立すれば、後は(捕球者が)見やすければOKじゃないかなと思います。それ(捕球)までは自分ですけど、投げる部分は相手がいることなんで、見にくい,見やすいがあると思うんですけど、今受けていてムネさんの送球は見にくくもないし、逆に強い、速い、スッとくるボールなので、いつもキャッチボールしてますけど、綺麗な球筋です。

それだけムネさんが向こうでどういう野球をやっていたのかという興味は持ちますね。ただ今僕らがそれをやれと言われても無理だと思いますけど…」

続いて、ここまで川崎選手、本多選手と二塁の先発を分け合っている明石建志選手の川崎選手の印象だ。

「まず肩が強くなりましたね。(投げる)ボールが速い。それに二塁とか守っていてもピポットとうか、捕ってから(投げるまで)が速いです。そういうのを感じますね。あまり余計な動きをしなくなりましたね。日本だったら脚を使って、少しでもちょっとでも前で捕って投げようというのがあると思うんですけど、肩が強くなったから、ちょっと待ち気味で捕ってもアウトになる…。それを強く感じます。

たぶん向こうにいって肩が強い選手が多いというのもあるし、そこで強くしないといけないという…。そういうのを見たから強くなったというか、トレーニングをしたというのもあると思うんですけど、周りがそういう風にしてくれたというのがあるの思います。絶対に負けたくないとう…。

(日本では真似)できないと思います。日本ではギリギリのプレーでも捕るのが先決というのがあると思いますけど、それがムネさんの場合はみんながグローブでいっているところを素手でいったりとかあると思うんですよね。そういうのが多くなっていますね。やっぱそういうのが向こうの野球なのかなという感じです」

ただ明石選手も日米の野球の違いを肌で感じるのみならず、川崎選手からいろいろな刺激を受けているという。

「刺激をもらいっぱなしですね。守備もそうですけど、昔からホークスにいる時から元気もありましたし、チームも雰囲気を変えてくれるのは何回も見てるで、そういう選手が1人いてくれると、やっているこちらも元気が出てくるし、いいプレーにも繋がるかなと」

最後に川崎選手と二遊間を組む、プロ野球界屈指の名手、今宮健太選手にも聞いてみた。

「まったく別の選手ですね。向こうにいって練習方法だったりとかいろいろあったと思うんですけど、僕が知っている頃とはまったく違います。捕り方のリズム、送球という面に関しては変わりましたね。

(善し悪しではなく)まったく別ものになったという感じですかね。ある程度(アメリカでプレーした)年数がいってますし、その中で野球環境が変わるだけで、あそこまで変わるんだと思いましたし、取り入れていくべきところはしっかり盗みながらやっていきたいなとは思います。

すべてにおいて(川崎選手のプレーに)いいものがあると思うし、『これはどうなのかな』と質問しながら取り入れていきたいです」

如何だろうか?川崎選手が1軍に合流してからチームのムードが良くなったのは、チームの成績をみれば明らかだろう。だが実際は彼の底抜けに明るいキャラクターだけでが好影響をもたらしたわけではない。3選手の証言を見ても明らかなように、川崎選手がこの5年間で培ってきたアメリカでの経験が、ソフトバンクの選手たちに新たな野球観を植え付けようとしているのだ。

6年ぶりに復帰した川崎選手がソフトバンクでその真価を発揮するのは、まだまだこれからではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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