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ブレイクを予感させる4試合連続本塁打を放ったオリックス・ロメロ選手が見せた高い修正能力

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
微調整を加えながら自分のバッティングを取り戻し始めたオリックスのロメロ選手

ロメロ選手にとってシーズン・スタートは、決して納得できるものではなかった。

開幕3試合は14打数3安打1打点。三振数も打数のちょうど半分の7と、明らかに日本人投手たちに手をこまねいていた。オープン戦では打率3割1分6厘を残し来日1年目ながら高い適応能力を示していたのに、開幕した途端“何か”が変わっていた。その辺りをロメロ選手は以下のように説明してくれた。

「キャンプ中はとにかく多くの投手のピッチングを見るように心がけた。昨年から在籍しているモレルからもたくさんの情報をもらい、自分がやるべきことを考えなら自分なりの調整を続けることができた。

ただシーズンが開幕すると、投手たちの攻め方がかなり変わってきた。オープン戦では真っ直ぐ中心にコーナーをついてくる組み立てだったが、シーズンに入ると、初球は変化球で入ってきて、そこからボールになる真っ直ぐを見せ球にして、最後は変化球で勝負してくるようになったんだ」

さらに日本人投手の変化球を投げる技術の高さにも悩まされたという。

「日本の投手はしっかり練習をし、皆が3、4つの変化球を巧みに使い分ける。それにほとんどの投手がフォークを投げるね。米国では1、2人の投手が投げたのを見たことがある程度で、彼らの投げるフォークは日本の投手ほど良くなかった。

アメリカではもっとパワー重視でカッターやツーシームで両サイドを使いながらバットの芯を外すような組み立てをする。しかし日本の投手は落ちるボールを中心にゾーンの奥行き(前後)を使ってくる。そこに対応するのが自分の一番の課題だった。これまで以上に時間をかけてボールを見極めるように必要を感じた」

だがロメロ選手は着実に微調整していった。

「これまでは低めの真っ直ぐを中心に狙おうとしていたが、彼らはそこから見事にボールを落としてきてボール球を振らされてきた。なので今はもう少しゾーンの高い球を狙うよう意識するようにしている。日本の投手はアメリカの投手のようにパワーがない分、高めの球でも力負けすることはないからね。それがここ最近の試合でうまくいっている」

こうした微調整ができるのも、ロメロ選手が単なる長距離打者ではないからだ。マイナーリーグの通算打率が3割6厘からも理解できる通り、彼は自分自身を長距離打者というより中距離中心の好打者だと考えている。そしてロメロ選手の打撃哲学にはイチロー選手の教えが息づいているようだ。

「自分はラインドライブ(ライナー性の当たり)で野手の間を抜くタイプだ。その中でいいコンタクトができた時に本塁打になる。なので自分の本塁打は引っ張る打球が多い。

以前に四球が極端に少ないイチローが『自分は四球を得ようと思っていない。自分はヒットを打とうとしているんだ』と話してくれたが、自分の哲学にもそれが生きている。とにかく三振をしないようにボールをしっかり捕らえ、フェアグランドのどこかに運ぶこと。そうすれば何かが起きるチャンスを得ることができる」

もちろん長いシーズンを過ごす上でどんな打者でも好不調の波が訪れるだろう。しかしロメロ選手はぶれずに自分を信じてやり抜く信念を持っている。

「マイナーリーグで多くのことを学び、自分なりのルーティンを確立することができた。今後はなるべく今の調子を維持しながら、どんな時でも自分の信じるルーティンを続け、チームを助けるために頑張っていきたい。そうすれば結果もついてくるだろう」

とはいえロメロ選手はシーズンに臨む際に、常に個人的な高い目標値を設定しているらしい。

「現在マリナーズで打撃コーチをしているエドガー・マルティネスがマイナー選手にも話をしてくれたことがあるんだけど、彼は現役時代毎年3割5分を打つことを目標にしながらプレーしていたらしいんだ。もしその目標が達成できなくても3割2分、3割打てれば十分に素晴らしい成績を残すことができる。僕もそれを見習って高い目標値を思い描きながらシーズンに臨んでいる。今年は3割5分、35本塁打、100打点以上だ」

もしロメロ選手がこの目標値に近い数字を残すことができたとしたら、今年のオリックスは相当に面白い戦いをしていることだろう。今後もロメロ選手の打撃を注視していきたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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