近代捕鯨115年の歴史を持つ宮城県石巻市で「全国鯨フォーラム2021石巻」が11月17日に開催された。全国鯨フォーラムは、2007年に石巻市で第一回目が開催され、以降、捕鯨に縁のある自治体で開催されてきた。石巻で14年ぶりとなる開催は、2011年の東日本大震災から10年目の節目にあたる。

商業捕鯨は昭和63年の禁止以降、衰退の一途をたどり、国の政策である調査捕鯨やIWC規制対象外の鯨種の捕獲で捕鯨技術を受け継いできた。捕鯨基地を抱える自治体にとって商業捕鯨の再開は長年の夢であった。しかし、商業捕鯨の禁止の期間が31年と長期に及んだことの影響は大きい。

石巻市では、石巻で捕鯨が行われていることを知らない人もいると言う。また、鯨食離れも進んでいる。これを打破するため、今年8月に官民で組織する「石巻くじら振興協議会」が設立された。将来に渡って捕鯨産業を維持するため、捕鯨産業への理解促進と鯨食普及を目的とするためだ。

事務局は石巻市役所水産課。今回の全国鯨フォーラムが協議会の初の事業となる。

鮎川捕鯨:写真提供_下鶴容子氏
鮎川捕鯨:写真提供_下鶴容子氏

今回の中心的人物の1人 石巻市水産課主査の阿部文彦氏は、自身の父が捕鯨会社の社長であったこともあり捕鯨に対する気持ちは強い。彼は言う。「捕鯨産業を維持することは、郷土の特有な産業を守ることのみならず、他の水産資源のバランスを保つ上でも重要。捕鯨基地を係る自治体の責務。また、これからの捕鯨産業がどうあるべきか、昔に固執せず、新しい形を見つけていきたい。」

鮎川捕鯨を見学する参加者:写真_八木景子
鮎川捕鯨を見学する参加者:写真_八木景子

全国鯨フォーラムは、「震災復興の報告と感謝」「捕鯨を活かした地域振興」の二つをテーマに実施され、全国から260名が参加した。

基調講演として「我が国商業捕鯨の今後の展望」が水産庁から話された他、「くじらを活かした地域振興」をテーマとしたパネルディスカッションでは、鯨の食文化を郷土の料理とする派と、全国的な食文化を推進する派に分かれたが、「捕鯨を守る全国自治体連絡協議会」会長の三軒一高氏(和歌山県太地町長)は、特定地域の食ではなく全国的な展開をしたいと力強く語った。

難を逃れた捕鯨船:写真提供_下鶴容子氏
難を逃れた捕鯨船:写真提供_下鶴容子氏

 翌日開催された現地視察は、捕鯨基地鮎川を訪れた。震災で多くの家屋が流された中、奇跡的に難を逃れ展示されている捕鯨船「第16利丸」を背景に地元の子供たちが歓迎の太鼓を披露し、捕鯨会社の見学、鯨の博物館「おしかホエールランド」を見学と、捕鯨基地の今昔を見るには充分な内容であった。

おしかホエールランド:写真_八木景子
おしかホエールランド:写真_八木景子

 今回の事業では、コロナ禍もあり主催者は準備に通常よりも多くの時間を費やした。参加者からは、「石巻らしさがでた良いフォーラムだった。コロナ禍でどうなるか分からなかった状況で開催に踏み切ったのは英断であった」と声が上がっていた。

 11月17日、18日のメインイベントは無事終わったが、石巻でのフォーラムは、市民を巻き込んだものとするため、11月中いっぱいは、10もの市民イベントが開催された。さらに12月の毎日曜日には、年末の食卓を飾るための、鯨肉頒布会が実施される。

石巻市役所 阿部文彦主査:写真_八木景子
石巻市役所 阿部文彦主査:写真_八木景子

 石巻市水産課の忙しい日々はまだまだ続くが、捕鯨産業を守ろうとする石巻市水産課の本気度が伺える。

<12月イベント情報>

https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10453000/8581/20201125201130.html