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SDGsとクジラ:日本は欧米へ「クジラの肉」を輸出していた!?

八木景子初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー
資料:勇魚文庫

2月初旬にアイスランドは日本がクジラを輸入してくれなければ捕鯨をやめるかもしれないと報道した。現在、日本はアイスランドに多くの鯨肉の供給を委ねている。

日本はIWC(国際捕鯨委員会)脱退後も極めて低い捕獲計算式を自ら首をしめるかのように採用しているため輸入に依存せざるをえない。具体的にこの計算式がどのようなものか魚に当てはめると「日本の食卓から魚があがらなくなる計算式」である、と水産関係者の間で指摘されている。

SDGsと昨今さわがれるが、日本の食文化自体が海外依存型では不安定な要素があり、日本が独自に鯨を捕獲できなければ、いずれ途絶える危険性がある。

日本や先住民以外は、クジラを食べる文化がなく、独特なものと考えられがちだが、西洋ではノルウェーやアイスランドなどで食される他、実は15世期にはイギリスやフランスの宮廷で高級食材として食されていた。コルセットやバッグなどもクジラの骨や皮が使用されていた。

日本だけがクジラの全てを余すことなく使用し、欧米ではクジラの油だけを使用して肉や骨・皮は全て廃棄する、というものではない。

資料:勇魚文庫
資料:勇魚文庫

資料:勇魚文庫
資料:勇魚文庫

「日本では余すことなくクジラの資源を使用する」と自負してきたが、現代の日本には、皮や骨を利用し、調度品に作り上げる技術を伴う職人は資源不足から職を追われていない。現在は、残り僅かとなったマッコウクジラの歯からアクセサリーや印鑑を作ることができる職人が数人いるだけで、骨などの資源は廃棄している。

SDGsの観点から日本が誇れるのは「過去の先人たち」の話が多分であり、現代においては食文化を継承するだけの捕獲数も十分にないだけではなく、骨や髭などを活用できる技術を持つ職人がいなくなってしまっているのである。

最近になってわかった事実として驚かれることは、1962年から1970年の間、日本から「鯨の油」だけではなく「鯨の肉」を様々な国へ輸出していたことが、水産庁の調査でこの度わかった。

資料:農林水産省(単位:1000トン)
資料:農林水産省(単位:1000トン)

<主な輸出先>

・アメリカ

・イギリス

・スウェーデン

・チリ

・オーストラリア

・ペルー

・ガーナ

・米領サモア

・カナリア諸島

など

輸出先の明記がなかったため、多くの輸出先は、これまで鯨肉を食べる習慣がある韓国などだと思われていた。しかし、水産庁の資料から予想外の国々へ輸出があったことがわかった。一般的には欧米では「油」だけ使用されていたと思われていたが「鯨肉」の使用が「現代にもあった」ことになる。

特に輸出先の中でも割合を多く占めたが国が、日本同様に海に囲まれたイギリスであったことは、水産庁職員も驚いており、活用方法が謎のままである。1962年から1970年の9年間に様々な国が鯨肉を日本から輸入に至った背景に何があったのか。当時の日本政府が積極的に輸出政策をとったのか背景は不明である。クジラの活用の習慣や文化が他国に理解は難しいと諦めていた鯨関係者には希望がもてるのではないだろうか。

自然資源の活用方法と共に、日本食文化の「持続性の真価」が、今、SDGsとともに問われている。

初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー

東京生まれ。ハリウッド・メジャー映画会社に勤務後、「合同会社八木フィルム」を設立。長年恐れられていた捕鯨の問題を扱った映画『ビハインド・ザ・コーヴ』は自費を投じ製作をした。2015年に世界8大映画祭の一つであるモントリオール世界映画祭に選出された他、多くの映画祭で選出。ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズなど海外の多くの大手メディアに取り上げられた。しかし、配給会社がつかず、さらに自ら借金と寄付を募り配給まで行った。日本のドキュメンタリー映画としては珍しく世界最大のユーザー数を持つNETFLIXから世界へ配信され大きな反響を呼んだ。新作「鯨のレストラン」は現在展開中。

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