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日本のクジラ食文化、どうなる!? 〜「自然消滅」or「アクション」か〜

八木景子初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー
日本政府代表代理、諸貫秀樹氏が発言(映像提供:IWC事務局)

【IWC国際捕鯨委員会:クジラを捕獲しない方針へ】

国際捕鯨委員会(IWC)の総会が、ブラジル・フロリアノポリスで9月4日〜14日に渡って開催された。

日本が目指す、クジラの商業捕鯨の再開やIWCの組織改革については、否決された。

[日本の提案]

1)多数決で採択される基準を3/4から過半数に改正

2)捕獲枠の算出は本来あるべく科学委員会へ指示

3)沿岸200海里の権利

4)持続的捕鯨委員会(クジラの利用)の新設

主に先進諸国を中心に反対票が41票、食料概念が違う発展途上国らから賛成票が27票、棄権は2票だった。

元々のIWC国際捕鯨委員会の条約は本来、[クジラの利用]と[保護]が目的であるが、[クジラの利用]をなくし[保護]のみの実態化へと変わった。条約の文言には[捕鯨産業の秩序ある発展を可能にする]というものがあるが、「発展」の要素はなく条約そのものが守られていない組織となってしまった。

そして何よりも、感情論によりクジラは食べ物として見てない先進諸国が多い。「なぜ、クジラを食べるのか?」という疑問を欧米の人は抱いている。「なぜ、クジラを食べてはいけないのか?」という素朴な日本人の問いとは対照的だ。

【なぜ、日本は商業捕鯨ができないままなのか?】

商業捕鯨が禁止されてから30年が経過し、日本としては、これまで条約を守り資源が回復するまで調査を積み重ねて来たが、今回の国際会議で商業捕鯨再開への意見に対して反捕鯨国からは「時代遅れ」、「科学データの根拠がない」、「民主的な多数決だ」との主張により、資源が回復した今も条約に沿った商業捕鯨が再開できないだけではなく、反捕鯨色が強くなった事が明白になった。

科学委員会が明確に認めたクジラの資源頭数が「全人類の3〜5倍もの量の魚を食べる」、という科学データに基づいた主張に対して反捕鯨国は「クジラそのものがエコの象徴であり、海洋の保全の必要性がわかる」と主張し対立したままだ。科学データの扱い方自体までが曖昧にされてしまっているのだ。

【他の国は捕鯨しているのは何故か?】

今回、イヌイットなどの先住民捕鯨や過去に異議を申し出たノルウェーやアイスランドの商業捕鯨は引き続き認められている。しかし、高度成長期の時代、アメリカから強い圧力を掛けられ異議を取り下げた日本の商業捕鯨だけが取り残されたままだ。異議申立てを取り下げた後、日本は科学調査を行い、商業捕鯨の再開を求め続けてきた。皮肉なことにノルウェーやアイスランドにとっては、今では日本は輸出国として良いお客様になっている。

今回の否決を受けて、参加費を一番多く負担している日本が、商業捕鯨を再開できないまま今後もIWCに留まるのかが注目されている。

では、「何故、そんなIWCを脱退しないのだろうか」、というのは素朴な疑問の声が多くあるのだが、IWCを抜けても、国連海洋法条約や南極条約なで公海を制限する条約や国際機関は他にも沢山あり、日本としても決断に慎重にしてきた背景があった。そして、IWCへ残っていれば堂々と南極海へ行って調査できる、というメリット、があったからだ。しかし、現在に至っては、「調査自体も殺さない目視調査で良い」、との意見が強まっている。

【商業捕鯨再開への道・「自然消滅」 or 「アクション」か】

日本政府は過去のIWC総会で商業捕鯨の再開が認められないことから、脱退を示唆し、当時は議長により、妥協案まで提示されたが、反捕鯨国の強い反発があり成立しなかった。しかし結局、日本は脱退しなかった。

今回のIWC総会でも日本政府は「条約にある持続的利用が論議にならない状況は容認できない。あらゆるオプションを精査する」と総会へ伝達したことにより、再び反捕鯨国から、日本が脱退しないようアプローチと圧力があると予想される。

仮にIWCに残っても、残らなくても、長いスパンで見たら、何かアクションを起こさなければ、いずれは商業捕鯨も、調査捕鯨への道も明るくなく、鯨食文化を自らではなく、政治的外圧によって閉ざさなければならなくなる日がきてしまうだろう。日本が外圧を受けながらも長年、細々と捕鯨を死守してきているのは、クジラの次は他の魚にターゲットを変えられるだけ、という懸念と海に囲まれた島国には輸入に頼りきらず、食料確保の使命があるからだ。

【乱立する西洋主導の国際機関:打開策はないのか】

欧米は容易く国際裁判を掛ける。日本も国際裁判、という手段も考えられる。さらには、基本軸にこの状況の風向きを未来永劫に変えるには、どうしたらよいか、と紐づけられている西洋主導の条約や多くの国際機関のあり方を辿ると、ここは一石を投じる【アジア発信の新組織】を作ることが、アジアに対する欧米諸国による包囲網外交から守ること、アジア間での友好修復地球の公的資源の見直しに繋がるアクションになるのではないだろうか。

世界への発言力を増してきている中国は捕鯨へ反対はしておらず、今回は欠席。中国はかつて日本の捕鯨に賛成票を投じており、また、和歌山県太地町からは現在もイルカを一番多く輸入している。なお、ロシアは捕鯨に賛成ながらも棄権。実は、発言力を持った国々を味方につけるポテンシャルは大きくある。

近年の状況から近隣国と組む事へ難色を示す人も少なくないが、実は、中国も日本の海域へ越えて来ているのはここ近年のこと。一度、「公海の利用、アジア発信の条約や国際機関」について一緒に膝を突き合わせて話し、友好関係を復活させる機会へも通じるチャンスではないだろうか。これは、捕鯨産業だけに限らず、水産業全体、他の産業にも通じるアジアが地球の共有資源に対して、[欧米に追従すること=グローバリズム]ではなく、[対当に話す土俵作り=グローバリズム]であり、本当の意味のダイバーシティ(多様性)ではないだろうか。今、大きな舵取りをする時代がきているように思われる。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の動画企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、取材費などを負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

初めて“捕鯨問題”を海外へ発信した映画監督・プロデューサー

東京生まれ。ハリウッド・メジャー映画会社に勤務後、「合同会社八木フィルム」を設立。長年恐れられていた捕鯨の問題を扱った映画『ビハインド・ザ・コーヴ』は自費を投じ製作をした。2015年に世界8大映画祭の一つであるモントリオール世界映画祭に選出された他、多くの映画祭で選出。ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズなど海外の多くの大手メディアに取り上げられた。しかし、配給会社がつかず、さらに自ら借金と寄付を募り配給まで行った。日本のドキュメンタリー映画としては珍しく世界最大のユーザー数を持つNETFLIXから世界へ配信され大きな反響を呼んだ。新作「鯨のレストラン」は現在展開中。

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