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現在のPS5の売れ行きは? ソニーのゲーム事業を決算から考える

河村鳴紘サブカル専門ライター
家庭用ゲーム機「プレイステーション5」(写真:ロイター/アフロ)

 ソニーグループの2024年3月期第1四半期(4~6月)決算が発表されました。全体では増収減益で、ゲーム事業「ゲーム&ネットワークサービス」は、いつも通り全体の業績をけん引していました。ゲーム事業の視点で、もう少し考えてみます。

◇ゲーム事業の通期予想4兆円超に

 ソニーグループ全体の売上高は約2兆9636億円(前年度比32.9%増)、本業のもうけを示す営業利益は約2530億円(同30.6%減)。金融と映画事業の大幅な減益が響いたためです。

 ゲーム事業の売上高は約7719億円(同28%増)で、営業利益は約492億円(同7%減)でした。世界累計出荷数が4000万台を突破している家庭用ゲーム機「PS5」は、商品そのものの価格が高いため売上高は伸びます。しかし製造コストが高いため高い利益にするのは難しく、ソフトで稼ぐのがビジネスの仕組みです。

 ソニーグループのゲーム事業の営業利益率は約6%。ゲーム事業の先々を見据えて巨額買収をしていることを考えると、妥当なところでしょうか。意地悪な見方をするのであれば、任天堂(今四半期の営業利益率は40%超)と比較するわけですが、そうなると、どの企業も物足りなくなります(笑)。

 ソニーのゲーム事業は、月間のアクティブユーザー数も開示しています。頭打ち感はあるものの、新型コロナウイルスの巣ごもり需要で増えた「上乗せ」をそれなりにキープして推移しています。そして、ソフトもデジタルを中心に売り上げを伸ばし、有料コンテンツの数字も前年同期を上回りました。

 そしてゲーム事業の通期予想ですが、売上高予想は当初の3兆9000億円から、4兆1700億円に上方修正しました。営業利益は2700億円の据え置きなので物足りなさはあるものの、売上高の規模が伸びているのは喜ばしいでしょう。

◇四半期のPS5の出荷数 どう考える?

 そして気になるPS5の出荷数ですが、一言で言えば判断に困る数字で、メディア泣かせです。

 第1四半期の世界出荷数は330万台。前年同期の240万台と比べると大幅増ですが、これはPS5の出荷に苦しんだ時期。前世代ゲーム機の「PS4」で、同じ発売4年目、第1四半期の出荷数は350万台なので、そこと比べると下回ることになります。

 まあ、2023年3月期の第4四半期(1~3月)の出荷数は630万台と爆発的にうれました。この時期はPS5の品不足が解消して店頭に並び、飛ぶように売れたので、その反動が幾分出たのかもしれません。良くも悪くも書けてしまう内容です。

 そう考えると、現時点でPS5の売れ行きについての判断は、第2四半期(7~9月)や、最大商戦の第3四半期(10~12月)を見てから……となりそうです。

 さらに言えば、ゲームファンの間でうわさになっているPS5の強化版の存在も気になります。なぜこうしたうわさや予測が出るのかと言えば、PS4の強化版「PS4 Pro」は、PS4の発売から4年目の年末商戦に発売しているから「そろそろ出るかも……」というわけです。

 PS5の強化版が仮に出れば、さらに売れるでしょう。しかし、普通に売り出せば、再び転売のターゲットになり、ゲームファンから批判される可能性は極めて高いといえます。売れる商品があるとはいえ、先々を考えるとなかなか悩ましいのです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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