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秋アニメの“覇権”をビッグデータで… 「鬼滅の刃」や「鎌倉殿」「silent」と比較すると

河村鳴紘サブカル専門ライター
アニメ「チェンソーマン」の公式サイト

 豪華なラインアップだった秋のテレビアニメも終わりを迎えました。実際に人気があったのはどのアニメだったでしょうか。ビッグデータを活用して、作品の人気度や傾向を考察しました。

 アニメは深夜に放送したり、ネット配信で見る人が多い特性上、ドラマのように視聴率などで比較するのが難しい面があります。そのため、DVDやブルーレイ・ディスクの売り上げ、ツイッターのフォロワー数、人気投票など、さまざまな比較の方法があります。従ってさまざまな見方があるでしょう。

 見方の一つとして、ヤフーの行動ビッグデータを元に、生活者の実態や動きを可視化するインターネットサービス「DS.INSIGHT」で、各作品の動きを調べました。数値は、ヤフーで検索された実数ではなく日本国内の推計値(検索ボリューム)です。アニメは週ごとに放送されるため、週のデータで比較します。

◇ビッグデータで目立ったのは3作品

 10~12月に放送された「秋アニメ」(データの抽出は12月25日まで)で、総合的に最も検索ボリュームが多かったのは「チェンソーマン」でした。ピークこそ21万で、わずかに「スパイファミリー」(21万3000)には届かなかったものの、週平均で10万を稼いで、他作品を大きく引き離しました。

 「スパイファミリー」は、最初こそは第1シリーズ(4~6月)を超える勢いを見せたものの、検索ボリュームは大きく減りました。確かにアニメは放送後開始時にピークを迎え、その後減らす傾向にありますが、「チェンソーマン」と比べると「スパイファミリー」の減少幅が大きいのが気になります。「スパイファミリー」は、人気ではあるものの、検索したいことあまりなく、その結果大きく数字を落としたのかもしれません。1期のころはツイッターにもたくさん見かけただけに、今回がおとなしかったのは確かです。

 そして「チェンソーマン」や「スパイファミリー」の強さに隠れていますが、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(検索では『水星の魔女』で実施)もなかなかの人気でした。先に挙げ2作品が突出しているだけで、「水星の魔女」の検索ボリュームは週2万~3万をキープし、ピーク時は6万超も。夏アニメで人気を集めた「リコリス・リコイル」(検索時は『リコリスリコイル』)のデータに匹敵します。

 ちなみに「水星の魔女」ですが、意外にも「ガンダム」というワードで検索するよりも、数値がぐっと多いのです。そして「水星の魔女」と「ガンダム」というワードを合算する考え方もあるでしょう。なぜなら「チェンソーマン」や「スパイファミリー」は、原作マンガが連載中で、数字の上ブレは入ることが考えられるからです。いずれにしても「水星の魔女」のデータは、十分優れた数字と言えるのではないでしょうか。

秋アニメの有力作品の検索ボリューム(週)のグラフ。「チェンソーマン」と「スパイファミリー」の多さが分かります。
秋アニメの有力作品の検索ボリューム(週)のグラフ。「チェンソーマン」と「スパイファミリー」の多さが分かります。

◇女性優位の作品多く

 続いて「秋アニメ」というワードを打ちこんだ人が、後日(もしくは以前に)どんなワード(作品)を打ち込んだかが分かる「時系列キーワード」で調べました。

 「秋アニメ」というワードを打ちこんだ人が、後日最も多かったタイトルは「水星の魔女」でした。そして興味深いのは、「ぼっちざろっく」「陰の実力者になりたくて」「後宮の烏」など、コア層が好むタイトルが出てきたことです。

 そしてタイトルの性別ごとの割合を見ると興味深いデータも出てきます。女性の割合が圧倒的に強いのは「後宮の烏」(77%)と「クールドジ男子」(86%)で、「ポプテピピック」(53%)や「スパイファミリー」(56%)、「チェンソーマン」(52%)も女性の方がよく検索しています。ゆえに女性優位の作品が目立つと言えるかもしれません。

 せっかくなので男性優位の上位作品も紹介します。「ぼっちざろっく」(74%)や「陰の実力者になりたくて」(79%)、「水星の魔女」(71%)などです。ファンの好みでうまく「すみ分け」がされているのですね。なお、「冬アニメ」というワードもあり、次に目を向けている様子もうかがえます。

「秋アニメ」というキーワードを打ち込んだ人が、前日や後日にどんなワードを打ちこんだかを示した「時系列キーワード」のグラフ。「水星の魔女」が最も多いのが分かる。
「秋アニメ」というキーワードを打ち込んだ人が、前日や後日にどんなワードを打ちこんだかを示した「時系列キーワード」のグラフ。「水星の魔女」が最も多いのが分かる。

◇人気ドラマと比べても引けを取らず

 最後に、今年の人気アニメを振り返ります。検索ボリュームですが、週当たり平均して1万以上を稼ぐ作品はそうありません。その中で今年もっとも数字が高かったのは冬アニメの「鬼滅の刃 遊郭編」(検索は『鬼滅の刃』)で、ピーク時の検索ボリュームは28万もありました。

 「チェンソーマン」と「スパイファミリー」は、ピーク時の検索ボリュームは、上記でも触れた通りそれぞれ約21万でした。「鬼滅の刃」には及ばないものの、人気のドラマと比べても引けを取らない数字です。

 「鎌倉殿の13人」は、週のピーク時は約30万、週平均では概ね10万前後で推移しました。「silent」(検索時は『サイレント』はピーク時は約7万4000、週の平均は5万前後でした。

今年人気だったアニメ「鬼滅の刃」「チェンソーマン」「スパイファミリー」を年間で比較した「検索ボリューム」のグラフ。
今年人気だったアニメ「鬼滅の刃」「チェンソーマン」「スパイファミリー」を年間で比較した「検索ボリューム」のグラフ。

 ただし過去には上があり、アニメ映画「無限列車」を公開した「鬼滅の刃」の週の検索ボリューム(瞬間最大風速)は週100万超えだったわけですが……。

 もちろん検索する言葉の影響が大きく、あくまで一つの視点に過ぎまないかもしれませんが、比較しづらいものも比較できるのがビッグデータの面白いところです。

ヤフー・データソリューション | DS.INSIGHT

※この記事は、Yahoo!ニュース 個人編集部、ヤフー・データソリューションと連携して、ヤフーから「DS.INSIGHT」の提供を受けて作成しています。

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サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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