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任天堂の中間決算「最高益」の背景 本業の「ゲーム事業」と「それ以外」を分けて考える

河村鳴紘サブカル専門ライター
任天堂本社(写真:アフロ)

 任天堂の2022年度中間(4~9月)連結決算が発表され、各メディアはそれを受けて「円安の影響などで最高益」と報じています。一方で、ネットの反応を見ていると、「最高益」「円安」という言葉に引っ張られ、難しく考えすぎているように見受けます。「最高益」の理由を考えてみましょう。

 中間期の売上高は約6570億円(前年同期比5.2%増)。本業のもうけを示す営業利益は約2200億円(同0.2%増)でした。いわゆる前年度の業績をいずれも上回る「増収増益」ですが、概ね前年並みです。

 理由について、ソフトウェアの販売数が前年同期と比べて1.6%増の9541万本と好調だったと述べられています。一方、ゲーム機の販売数は、部品の供給不足もあり、前年同期と比べて19.2%減の668万台でした。端的に言うとゲーム機が計画通りにいかなかったものの、好調のソフト販売がカバーし、好業績をキープしたわけです。

 ではなぜ中間期は「最高益」だったのでしょうか。

 ポイントは、もう一つの利益でして、ゲームビジネス以外の儲けを指す「営業外収益」(約1032億円)です。今回の決算で注目を集めた円安による「為替差益」(約764億円)も、この「営業外収益」に含まれます。前年同期の「営業外収益」は167億円でしたから、何と約856億円も増えたことになります。

 もう一度整理します。

 営業利益は前期も今期も約2200億円で、ほぼ同じでした。ニンテンドースイッチの累計出荷数が1億台を突破したがゆえにピークは超えた状態。そのため任天堂の業績は「右肩下がり」の流れにあります。

 しかし、本業のゲーム販売では、ソフトがしっかり売れて前期並みをキープ。そこに営業外収益がドーンと乗っかったのです。逆に言えば、「右肩上がり」でなく、「右肩下がり」のこの時期に、しっかりソフトを売ったからこそ達成した「最高益」と言えます。決算短信を見ると、普通に書かれているのです。業績の変動要因や背景は、決算説明会で質問されるので、キチンと説明をしているからです。

 唯一問題があるとすれば、任天堂の決算は、総じて業績が良すぎることでしょうか。他企業の決算で物足りなさを感じてしまうことがあるのですが、それは別の話ですね。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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