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ソニーのゲーム事業は良いのか悪いのか 第2四半期決算を考える

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニー本社=著者撮影

 ソニーグループの2022年度第2四半期(7~9月)決算が発表されました。ゲーム事業(ゲーム&ネットワークサービス)ですが、売上高は約7207億円、本業のもうけを示す営業利益は約421億円でした。今回の業績はどうなのかを考えます。

 決算の数値を比較する場合、基本的には、前年の同じ期間を示す「前年同期」となります。つまり、今年度の7~9月の業績と比べるのは、昨年度の7~9月で、決算資料もその考えに沿っています。今年の4~6月と比べる考えもありますが、メインは「前年同期」との比較です。

 ソニーグループのゲーム事業の売上高は、前年同期(2021年7~9月)の約6454億円と比べて、1割以上アップしています。ただしPS5の出荷数は前年同期並みですし、為替の影響(プラス935億円)を差し引いて、同程度と考えることもできます。

 営業利益は、前年同期の約827億円と比べて、ほぼ半減しました。PS5本体は、部材の高騰で利益を圧迫しているのもあるでしょうが、ソフトや追加コンテンツ販売が、計画通りに売れていないためです。

 一般紙の決算記事では、ソニーグループの業績好調と共に、主力であるゲーム事業の営業利益が振るわなかったことに触れています。裏返せば「ゲーム事業は期待されていたのに、現時点では期待に沿えなかった」ということです。

 ではなぜ、ゲーム事業は期待されたか……というと、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を受けての巣ごもり需要を受けて、ゲーム事業の営業利益が好調に推移し、オンラインサービスの利用者も増えていたためでしょう。しかし、今や消費者が外出を好む傾向にあります。ゲームをする時間が減り、あおりを受けた形と言えるでしょう。

 もちろん、物流の混乱などを受けて、PS5本体の増産がうまくいかなかった影響もあるでしょう。ただし、ゲーム機の販売は、価格が高いため、売上高の増加には貢献しますが、ビジネスの特性上、利益にはさほど貢献しません。やはりソフトや、追加コンテンツが売れてこそです。そしてソフトが売れるには、分母となるゲーム機が普及してこそです。

 そのためには、まず第3四半期(今年の10~12月)と、第4四半期(来年の1~3月)に、PS5本体がどれだけ出荷できるかです。モノが売れる年末商戦でもありますし、次の“試金石”となりそうです。

 なおゲーム機は世界中で展開するビジネスなので、目の前に見える状況や肌感覚だけで判断しづらい一面があります。日本のパッケージソフトの販売ランキングは、ニンテンドースイッチでほぼ占められている上に、PS5は抽選販売が続いています。日本だけの視点で見ると「ソニーのゲーム事業はヤバい」と考える人が出るのは、仕方のないことなのかもしれません。

 決算に目を通せば、ソニーのゲーム事業は、複合的な要素がからみあい、予想通りの高業績をたたき出すとはいかないものの、現状は堅調に推移しています。売上高はある一方で、営業利益は稼げないので絶好調とはいえません。しかし、赤字でもなく、先行きを考えても悪くもなく、「まずまず」というところではないでしょうか。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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