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2年間品薄のPS5 今年の年末こそは本当に数がそろう? ソニーの決算から考察

河村鳴紘サブカル専門ライター
家庭用ゲーム機「プレイステーション5」=SIE提供

 家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」が、2020年11月の発売から2年になりますが、いまだに品薄状態が続いています。ソニーグループは、同機の増産に力を入れるとしていますが、どうなのでしょうか。今回の決算から考察します。

◇9月末まで目立った変化なし

 ソニーグループは、四半期(3カ月)ごとにPS5の世界出荷数を発表しています。今年度(2022年度)の第1四半期(4~6月)は240万台、第2四半期(7~9月)は330万台でした。

 しかし、前年度(2021年度)の第1四半期は230万台で、第2四半期は330万台。つまり9月末時点で目立った変化はありません。決算資料でも一目でわかります。

2021年度と2022年度のPS5の出荷数。四半期ごとに発表されている=2022年度第2四半期ソニーグループ決算の補足資料
2021年度と2022年度のPS5の出荷数。四半期ごとに発表されている=2022年度第2四半期ソニーグループ決算の補足資料

 ソニーグループは、今年度のPS5の出荷計画を「1800万台以上」と設定していますから、計画に変更がなければ、今年10月から来年3月末までの半年間で「1230万台以上」を出す計算になります。今年の上半期(4~9月)で、PS5の出荷数が570万台なので、「下半期は上半期の2倍以上を出荷する」と言っているわけです。

 PS5の世界累計出荷数は、今年9月末の時点で2500万台です。そして半年後(2023年3月末)は、計画通りならば3700万台以上になります。

◇生産台数と出荷数の違い

 また決算では、PS5について「第2四半期の生産台数が650万台」というデータが公開されました。生産台数とは、工場からの出荷でカウントする指標のこと。販売店に売る「出荷数」より前のデータです。10年前ぐらいのソニーの決算では、ゲーム機の販売データは、この生産台数で発表されていました。

 生産台数と出荷数は正確には違うため、単純比較はできませんが、ある程度の指標にはなります。そして、650万と言う数字は、第2四半期の出荷数の約2倍。わざわざ四半期の生産台数に触れるということは、品不足解消への自信の表れともいえるわけです。

 本来は、生産台数をもっと早い段階で同等のレベルにするつもりだったのでしょう。だからこそ前年度(2021年度)も「1480万台以上」という出荷計画を組んでいたものの、半導体不足や世界的な物流の混乱で8割弱にとどまったのではないでしょうか。

◇半年で「1230万台以上」出せるのか

 PS5が下半期(10月~2023年3月)に急に増えることについて、不思議に感じる人もいるかもしれませんが、ゲーム機は従来年末に爆発的に売れる商材でして、任天堂のゲーム機も同じです。

 また前世代機のPS4も、売れ方は同じです。そこでPS4の第3四半期(10~12月)と、下半期という二つの出荷数を取り上げてみます。

■PS4の第3四半期出荷数(カッコ内は下半期の出荷数)

2013年度 450万台(760万台)=日本は未発売

2014年度 640万台(870万台)

2015年度 840万台(1080万台)

2016年度 970万台(1260万台)

2017年度 900万台(1150万台)

2018年度 810万台(1070万台)

2019年度 600万台(740万台)

2020年度 140万台(240万台)=PS5の初年度

2021年度 20万台(30万台)

 「1230万台以上」という数字ですが、PS4の実績からすると達成できる数字です。懸念を言えば、PS4でもピークに近いレベルであること。ただし、ゲーム機の台数だけでなく、決算の数値を見ても、この台数を出荷する計画になっています。

 2022年度(2022年4月~2023年3月)のゲーム事業の売上高予想は3兆6300億円。2021年度の2兆7398億円から、約25%も積み上げて、過去最高になります。

 一方、営業利益予想は2250億円で、前年度(2021年度)の3461億円と大きな差があります。売上高だけ伸びる理由は、PS5の商品単価が高いのに、利益が稼ぎづらいからですね。「物足りない」という声も一理ありますし、評価の分かれるところです。

 ともあれ「品薄のPS5は、年末に本当に数がそろうの?」という質問に対する答えですが、「計画に変更がなければ」という条件付きで「イエス」と言えるでしょう。

 ただし「日本市場も潤沢にそろうの?」というと、答えに詰まるところです。ネックは円安です。日本に来た海外の観光客が、日本でPS5を買うと割安になるのです。これはゲーム機に限らないことですが……。

 何より、今や何が起きるかわかりません。PS5の発売直後に、半導体不足、世界的な物流の混乱、部材の価格高騰などがあったわけで、誰もが予想できなかったことです。現在はそこにインフレという懸念も加わっています。

 ともあれ、PS5の世界出荷数が増えるのはその通りと考えて良いでしょう。全体のパイが増えれば、日本のパイも増えるので、その点は歓迎すべきではないでしょうか。

 同時にPS5の出荷数が増えるということは、転売や中古の価格相場にも大きな影響を与えるということ。転売価格も下落の傾向にあるように感じます。長く続いたPS5の品薄が解消されるのか……注目したいと思います。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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