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ジブリ作品や日本アニメ 中国の評価は? 宮崎駿監督と並ぶ人気監督は? 中国の識者に聞く

河村鳴紘サブカル専門ライター
「千と千尋の神隠し」(C) 2001 Studio Ghibli・NDDTM

 あす11月1日にオープンするジブリパーク(愛知県長久手市)。老若男女を問わず人気のスタジオジブリ作品の世界が再現されただけに、海外からも注目も集めそうです。海外の中で、中国でもジブリの作品が人気があることはよく知られていますが、実際に中国の人たちからはどう見えるのでしょうか。

 中国のQ&Aサイト「知乎」の有名回答者でアニメに詳しいインフルエンサーのTOTOLOさんと、中国アニメ誌「24格」の元編集長の3000さんに聞きました。

◇宮崎監督と並ぶ人気の監督

 中国では、日本や欧米のアニメ配信・公開が制約されていますが、にもかかわらずジブリ作品は人気です。TOTOLOさんは、中国で人気を得るためには、▼作品が優れている▼制作に関するエピソードが面白い▼宣伝・広報する意欲……という三つの要素を挙げ、いずれも不可欠だといいます。また、宮崎駿監督が亡き高畑勲監督と共に、スタジオジブリの設立前に中国を訪れて交流したことも有利に働いている……と指摘しました。

 TOTOLOさんは「中国では早くから『ジブリの作品は誰にでも勧められる』というコンセンサスがありました。ファンの人気だけでなく、国際的な認知度の高さ(アカデミー賞の影響)などにより、宮崎作品は中国のアニメ専門家やメディアから非常に愛されている」としています。

 3000さんは、ジブリ作品のターゲット層が広く、老若男女問わず受け入れられているとしたうえで、日本のアニメは「ジブリ作品」と「それ以外」に分けて考える人がいると指摘。さらに日本のアニメが、(水着シーンや入浴シーンがある)セクシーなもの、(戦闘シーンが多い)暴力的と思っている層もいることも教えてくれました。

 一方で、TOTOLOさんと3000さんの二人は、宮崎監督と並んで中国で知られたクリエーターとして、新海誠監督の名前を挙げました。3000さんは、一部の若い観客にとって、新海監督が流行の新作を発表していて、宮崎監督は「前の世代」のレジェンドという見方もある……と指摘しています。

 中国で2018年に「となりのトトロ」が公開され、日本で公開されてから30年も経過した作品にもかかわらず人気になったことが、日本で話題になりました。しかし「となりのトトロ」の最新作と勘違いして鑑賞してしまい「海賊版の時代に見たことがあった」という声もあったといいます。

 日本のアニメ映画「HELLO WORLD」が中国で日本の興収の数倍のヒットを飛ばした背景に、中国で「新海監督の最新作に似ている」と話題になったことが“追い風”の一つになったといいます。

 いずれも中国が巨大市場であることを実感できるエピソードです。

◇中国で人気のアニメは…

 中国で人気のジブリ作品のタイトルについて聞くと、二人とも「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」「もののけ姫」「ハウルの動く城」を挙げました。ただしTOTOLOさんによると、中国では「風の谷のナウシカ」より前の宮崎監督の作品は中国のテレビ番組であまり放送されなかった経緯もあり、今でも影響が続いているそうです。

 また3000さんは「中国語の吹き替え版の方がヒットする可能性が高い。宮崎監督のアニメーションを子供に見せたいと考えても、吹き替え版が見つからないという場合もある。また台湾版の北京語吹き替えにはなじめないという人も少なくない」と指摘しています。中国語といってもイントネーションなどにかなりの差があり、別言語といえるほど。裏返せば、丁寧なローカライズをすればビジネスになる可能性がありそうです。

 ちなみに中国で人気のある日本のアニメについても聞いてみました。TOTOLOさんは「日本と同様、人気のタイトルはすぐ変わるので答えづらい。数カ月前であれば『SPY×FAMILY』で、ここ数年でいえば『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『ジョジョの奇妙な冒険』などが人気」と教えてくれました。さらに「もっと長い目で見ると『名探偵コナン』『NARUTO』『ONE PIECE』『BLEACH』『ドラゴンボール』などですね」とのことでした。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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