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PS5本体の出荷数 日本市場の「割り当て」は本当に少ないのか?

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5」=SIE提供

 ソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」の世界累計出荷数が2000万台に届きそうにもかかわらず、慢性的な品不足が続きます。どの国・地域も「人気商品は欲しい」のは同じで、商品配分の問題になります。そこで気になるのは、PS5本体の日本市場の「割り当て」が本当に少ないか?です。

◇日本の「割り当て」は7.6%

 ゲーム業界団体のコンピュータエンターテインメント協会(CESA)がこのほど発刊した「CESAゲーム白書2022」に、2021年の各ゲーム機の出荷数について、日本と海外のデータがあります。

 PS5の世界出荷数(2021年)は1280万台。うち日本は約97万台で、日本の占める割合は7.6%でした。一方、ニンテンドースイッチの世界出荷数は2367万台で、うち日本は約522万台(日本の割合は22.1%)でした。ちなみに「Xbox Series X/S」の世界出荷数は約775万台、うち日本は約11万台(1.4%)となります。

 ソニーが発表している前世代機「PS4」の世界出荷数は1億1700万台以上です。ソニーグループの決算では現在、家庭用ゲーム機(PS5)の地域別出荷数は開示していませんが、さまざまな調査などから日本の出荷数は1000万台程度とみられています。すると8.5%という数字がはじき出されます。またゲーム白書には、家庭用ゲーム機とソフトの世界・国内の総出荷規模(2021年)があり、日本市場のシェアは9.5%でした。以前は10%を上回っていたのですが、減少傾向にあるのです。ともあれ「1割弱」という似た数字が出てくるわけです。

 上記のデータを踏まえ、PS5本体の日本への割り当てについて、「多い」と「少ない」の二択で問われると、「少ない」となるでしょう。

 ただし2020年、PS5の世界出荷数は450万台で、うち日本の出荷数は28万台(日本の比率は6.2%)でした。2021年の日本の割り当て比率と比べると、少しだけ増えてるのですが、これだけ需要が高ければ、誤差の話でしょう。

 前世代機「PS4」の日本国内の出荷数は、年間150万~200万台ですから、そこから考えても足りないのです。一方でPS4の日本の発売時、米国の発売から約3カ月遅れたこともあってか、発売1カ月後には普通に店舗で売られていましたから、今の抽選販売がずっと続く状況が「おかしい」のは確かです。

◇海外よりソフトが売れない日本

 ところが、PS5用ソフトの売れ行きのデータを見ると、日本が「後回し」にされる事情が見えてきます。

 PS5用ソフトの世界総出荷額における日本の比率は5.9%で、出荷本数でも日本の比率は5.0%に過ぎません。理由はあれど、日本市場でPS5用ソフトが海外より売れてないのはその通りです。ソニーのゲーム事業は、欧米を主戦場にして売上高を大きく伸ばしています。そうなると日本の配分(7.6%)は、「許容範囲」という意見もあるでしょう。

 ゲームビジネスは、ゲーム機が売れても利幅が少なく、ソフトが売れてこそ儲かります。もちろん各国の事情を踏まえてのことですが、経営視点からの優先順位は?というと、ソフトが売れる見込みのあるところにゲーム機を出荷したい……となってしまうわけです。特に米国市場は巨大で、フラグシップ的な位置づけにあります。ここでライバル(マイクロソフト)のゲーム機にシェア争いで負けると、ブランドイメージに響きます。米国を優先すれば、日本が後回しにされるわけで、そうした事情もあるでしょう。

 同時に「日本の消費者は、海外の消費者と比べてソフトを買わないのか?」という疑問が出てきます。理由は、日本人好みのソフトがないこと、所得の上がらない日本の経済状況(購買力の低下)なども影響しているでしょう。もちろん「悪質転売」の悪影響も考えられますが、日本だけの話でもなく、さらに客観的なデータがないため、程度を判断するのが難しいところです。

 なお計算上ですが、PS5の世界年間出荷数が2000万台に増えて、日本に8%が割り当てられたら160万台となります。経済の混乱(半導体不足、部材の値上げ、流通の混乱)という不安定要因もありますが、同社の決算説明会でも発言した通り、可能な限り速やかな増産を期待したいところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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