宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」(2008年公開)がきょう6日午後9時から「金曜ロードショー」(日テレ系)で放送されます。興行収入150億円を突破した人気作ですが、意外にも未見の人もいるようで……。同作の魅力、「となりのトトロ」が関係する背景などを解説します。

◇人魚姫+現代日本の港町

 「崖の上のポニョ」は、自然豊かな海辺の町が舞台です。崖の上の一軒家に住む5歳の少年・宗介(そうすけ)が、ビンに入って困っている魚の子・ポニョを助け、互いに引かれます。しかし海に連れ戻されるポニョ。「人間になりたい」と考えたポニョは逃走し、荒れ狂う海をものともせず、宗介と再会するのですが……。

 同作をひと言で表現すると「幸せな人魚姫」の物語です。パンフレットの冒頭に宮崎監督が「海に棲(す)む魚の子・ポニョが、人間の宗介(そうすけ)と一緒に生きたいと我儘(わがまま)をつらぬき通す物語」と説明しています。アンデルセンの「人魚姫」を意識してキリスト教色を排しつつ、舞台を現代日本の港町にしています。

 なお、宮崎監督が同作の構想を練ったのは、広島県福山市にある鞆の浦(とものうら)です。古来、瀬戸内の経済を担った港町。瀬戸内海を知る人が、アニメで表現された海を見たとき、いろいろなものが見えるかもしれません。

鞆の浦
鞆の浦提供:MeijiShowa/アフロ

◇「トトロを上回るキャラクターを作りたい」

 宮崎監督が鞆の浦に滞在した理由は、同作のプロデューサー・鈴木敏夫さんが自著「天才の思考」(文春新書)で明かしています。アニメ映画「ハウルの動く城」(2004年公開)の後で、疲れた宮崎監督を見て新しい環境が必要と考えたとき、NPOから鞆の浦へ招かれたのです。最初は乗り気でなかった宮崎監督ですが、鞆の浦を気に入って2か月間仕事をしながら生活したといいます。

 主人公・宗介の名前は、夏目漱石の「門」からで、町はずれの古本屋で目に留まったもの。「崖の上のポニョ」の当初のタイトルは、「崖の下の宗介」だったそうです。そういう意味では、宗介とポニョは表裏一体なのかもしれません。

 そして最初に「主人公は海から来る」という設定が決まり、次に宮崎監督が「トトロを上回るキャラクターを作りたい」と言い出したそうです。もちろん苦労しますが、偶然目に入った、金魚のじょうろのようなおもちゃがヒントになり、触った感じの「ポニョ」っとした感じから、そのまま名前は「ポニョ」となります。

 ポニョの“宿敵(ライバル)”はトトロだった。そういわれると、ポニョの目がまるでトトロかのように見えるシーンも……。いろいろ想像すると、味わい深いものがありませんか。

「となりのトトロ」 (C)1988 Studio Ghibli
「となりのトトロ」 (C)1988 Studio Ghibli

◇三つの見どころ リアルタイム視聴のだいご味

 同作の魅力……「見どころ」はいろいろありますが、三つにしぼって挙げてみます。

 一つ目は、多彩な海・水の表現です。何せ波に「目」があるわけで、公開当時、波の描写が怖くて子供が泣いたという話もあったほどです。ただし、海は美しいときもあれば、荒れ狂うと人の命を簡単に奪うわけでして、怖いものではあります。そして水没する町を幻想的に描く一方で、海洋ごみ問題もさりげなく織り込んでいるように、海について調べ上げたことが感じられます。

 二つ目は絆(きずな)です。宗介とポニョはもちろんですが、親子関係も巧みに描いています。「宗介と母」の関係が“表で動”なら、「ポニョと両親」は“裏で静”といった感じで対照的。他にも都会とは異なる人間関係の豊かさを感じさせるシーンもあります。

 三つ目は、作品を見ていなくても「聞いたことがある」という、知名度抜群の主題歌です。主題歌は同作の宣伝で強く使われたこともあり、CDが売れたのはもちろん、爆発的に浸透しました。主題歌が子供たちにも受け入れられるという意味では、「となりのトトロ」の「さんぽ」と似ていますね。

 作品性を追求しながらも、エンターテインメントも踏まえて、見終わった後も含めて喜ばせてくれるのがジブリ作品です。なお現在はテレビを見ながらSNSに感想などを書きこむのが普通の時代。せっかくなので、録画ではなく、リアルタイムで視聴するだいご味を忘れないでほしいところです。

 何かとギスギスする時代ですが、幸せな物語を見て、心を穏やかにしてほしいと思います。