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「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ツイッターのトレンド1位に「ネタバレ」 なぜ?

河村鳴紘サブカル専門ライター
エヴァンゲリオン公式サイト

 8日に公開されたアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。同日の午前中からネットは「見た」と報告する書き込みが相次ぎました。ツイッターのトレンドには同作の関連ワードが次々と入り、まさにエヴァ一色でした。ですが内容についての書き込みは少なく、驚くほど伏せられています。何かと悪く言われがちな「ネット」ですが、今回のケースでは“善意”を強く感じさせるものでした。

 ツイッターのトレンドで、特に勢いがあったのは1位になった「(エヴァの)ネタバレ」というワードでしょう。私の確認した限りでは26万件を超え、他のトレンドとケタが一つ二つ違っていました。ネタバレは他の作品でもあることで、嫌がられることです。ですがエヴァは、その意識が別格でして、裏返せば、同じコンテンツを愛する同士への配慮が相当に強いのでしょう。同作に出演する声優の緒方恵美さんのツイートからもうかがえます。

 今回ネット上でファンの笑いになっていたのが「上映時間が想定以上に長いので鑑賞前にトイレに行くべき」というアラート(警告)でしょうか。またネタバレを装った書き込みはありましたが、未鑑賞の人へのいたずら的な意味であり、ネタバレとは言えません。

 もちろんネットは「何でもあり」の世界で、本当の意味でネタバレを止めることはできませんし、これだけ母数が多ければ一定数は逆らう人が出ます。内容を詳細につづる強いネタバレも確認しましたが、それは掲示板の話でして、全体の大きさから言えば一部といっても差し支えないと思います。

 鑑賞した立場から言えば、今作も考察や議論で盛り上がりたい……という気持ちが込みあげてくる、しっかりした内容に仕上がっています。そういう意味では、大多数のファンは、ネタバレをせずよく耐えてると感心させられました。

 少し面白いのが、どうしても我慢できなかったのか、最後のあるネタバレのワードについて、ツイッターで書き込みを見かけました。ただし件数的には少なく、かつ未鑑賞の人が探し当てるのは難しいワードなので心配いらないでしょう。またネタバレをするにしても、ネタバレのテキストを画像に加工したり、何かしらの配慮があるように見えました。ここでもネットの「優しさ」「配慮」を感じたわけです。

 今後のポイントですが、いつファンの詳細な考察が始まるかでしょうか。ブログやツイッターなどで熱く語られるにしても、タイミングは難しいところです。ネタバレに配慮した考察もできなくはありませんが、非常に抽象的で意味が通じづらい内容になるでしょう。それぐらいなら、内容についてしばらく黙っておくのが賢いのではないでしょうか。

 そういう意味では、興行収入の方が盛り上がるかもしれません。「序」は20億円、「破」は40億円、「Q」は53億円でした。ぜひシリーズとして過去最多の興収に向けて好スタートを切り、盛り上がってほしいと切に願っています。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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