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「ダイの大冒険」再アニメ化 原作完結から四半世紀経っても愛される理由

河村鳴紘サブカル専門ライター
アニメ「ダイの大冒険」の公式サイト

 人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の世界観を舞台にした「ダイの大冒険」の新作アニメの放送が10月3日午前9時半、テレビ東京系で始まりました。1989~1996年に週刊少年ジャンプで連載されたマンガが原作です。完結から24年が経過し、再度のアニメ化にかかわらず盛り上がっていますが、なぜでしょうか。

◇原作マンガ 読みだすと止まらない魅力

 マンガは、三条陸さん原作、稲田浩司さん画、ゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの“生みの親”の堀井雄二さんが監修しています。モンスターが平和に暮らす島に住む、勇者にあこがれる少年・ダイの元に、“勇者”の家庭教師・アバンと、弟子のポップが訪れる場面から始まります。しかし、魔王ハドラーが島を襲い、その後ダイたちは冒険に旅立ちます。

 ダイには、魔王ハドラーから差し向けられる「六団長」と呼ばれる強敵が襲い掛かりますが、ポップに加え、アバンの弟子で勝気な女の子・マァムなどの助けを得ながら、乗り切っていきます。マンガは全37巻(文庫22巻)と少々長めですが、王道の少年マンガとしても素晴らしい出来です。アニメ化が発表されてから、自宅にある原作マンガを引っ張りだしてきたのですが、結末を覚えているにもかかわらず、飽きることなく、最後まで一気に読み切ってしまいました。

 アニメは1991~1992年に放送されましたが、途中で幕を下ろしました。当時は、残念に思った視聴者もいるのではないでしょうか。

◇マンガの設定がゲームに“逆輸入”も

 マンガは、堀井さんが監修していますが、ドラゴンクエストの世界をマンガに落とし込んだのは、三条さんです。堀井さんはコミックス1巻の巻末で、ジャンプから「ドラゴンクエスト」のマンガ化のオファーがあったとき戸惑いがあったことを明かしながら、ゲームとは違う勇者の話をオリジナルで見せることに期待感を寄せていました。ゲームは、プレーヤーが主人公になるわけですが、マンガ版は媒体の特徴に合わせてダイという主人公を立てたわけです。

 そして「ドラクエ」の世界らしく、おなじみの呪文「ベギラマ」や「ルーラ」がマンガの「画(え)」で表現されたことも、ファンの支持を集めました。当時のゲームは、魔法や攻撃は呪文の文字と効果音、ダメージの値で表示されていました。だから、おなじみの魔法攻撃のシーンが描かれるだけでワクワクしました。

 その一方で、魔法「ベタン」やアイテム「魔弾銃」など、当時はマンガで初登場だった設定も、ドラゴンクエストの世界観に違和感なくフィットして、喜ばれました。必殺技「ギガブレイク」は、ゲームに“逆輸入”されたほどです。要するに、よくできた設定だったのですね。

◇“裏の主人公”に注目

 ダイの大冒険が傑作であるポイントは、世界観やストーリーにもありますが、一番はキャラクターでしょう。そして、同作で最も注目するべきは、ダイの盟友・ポップで、彼こそ“裏の主人公”と言えるのではないでしょうか。連載時は、彼に感情移入して読んでいたのを覚えています。

 ポップは最初こそ、根性もなく、ダイを見捨てて逃げ出すような頼れない魔法使い(ダメ野郎)ですが、ダイの一途さやアバンの意思、仲間の支え、修行を経て、ダイの頼れる相棒に成長していきます。原作マンガの中盤では、ダイが自身について悩む展開があるのですが、そこでポップの存在感が一気に増します。ダイのために捨て石になる覚悟で強敵に単騎で立ち向かうシーンもあります。連載中にこのシーンを見たとき、電撃が走るような衝撃を受けたことを覚えています。特別な血筋があるわけでも、特殊な能力があるわけでもない、平凡なキャラクターが成長する姿に、思いをだぶらせた読者も多いのではないでしょうか。

 ポップ以外にも魅力的なキャラは、たくさんいます。ネタバレにもなるので、あえてここでは挙げませんが、片手(5本指)では足りないという人も多いのではないでしょうか。ちなみに、アバンとハドラーの戦いの結末を受けて、連載当時、編集部に女性ファンから抗議の手紙が殺到したそうです。それほどのキャラを作った段階で、ヒットをするのは必然だったのでしょう。

◇ツイッターでトレンド入り

 しかし驚かされるのは、原作マンガを今の時代に読み返しても、古臭さもなく楽しく読めることです。昔の作品のアニメ化が発表されると、一定の批判はあるはずですが、「ダイの大冒険」に関しては、喜びの声が圧倒的多数でした。同作は、「ドラゴンクエスト」に頼った作りではなく再構成し、オリジナルの要素を加えて、独特の世界観を構築しています。何より、原作マンガの完成度が、コンテンツとして純粋に高いからでしょう。四半世紀が経過して「懐かしさ」もプラスに働いている面もあり、だから再度のアニメ化にもかかわらず、期待を寄せているといえます。

 また、ゲームの世界を描くという意味では、ファンタジー世界を舞台に主人公が活躍するタイプの作品が多い、ネット発小説の雰囲気と重なる部分があります。原作マンガを知らない初見の若い世代も、アニメを視聴すれば楽しめるのではないでしょうか。

 アニメが放送された3日、予想通り「#ダイの大冒険」がツイッターのトレンド入りしました。ニセ勇者一行が登場しましたが「原作を知っているから憎めない」という書き込みがあったり、原作マンガとアニメの比較もあったり、テンション高めの様子がうかがえます。なおテレビ放送以外の配信も充実しており、「アマゾン・プライム・ビデオ」や「AbemaTV」など20以上のサイトで4日から配信されます。

 アニメは作品数が多く、ライバルの競争が激しい状況です。そして四半世紀経過したマンガ原作のアニメがヒットすれば、昔の人気作にさらにスポットが当たるのかもしれません。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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