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マンガ・アニメ・ゲームの市場比較 一番大きいのは?

河村鳴紘サブカル専門ライター
マンガを読むサラリーマン(写真:アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、インドアの趣味として多くの人を楽しませつつ、ギスギスした心を癒してくれるマンガとゲーム、アニメ。「クールジャパン」と言われ、日本を代表する産業の一つですが、各分野の市場規模をご存じでしょうか。各市場を比較しながら、特徴など触れてみます。

◇マンガ市場は国内5000億円

 全国出版協会・出版科学研究所の「出版月報」によると、2019年のマンガの市場は、紙とデジタルの合算で約5000億円となります。なおデジタルは前年比29.5%増の約2600億円となります。ゲームもそうですが、マンガもデジタル化が進んでいることが分かります。

 ちなみに書籍全体の市場規模は約1兆5400億円ですから、約3分の1はマンガが占めるのですね。

 そしてマンガの海外市場ですが、1000億円程度と言われています。

――日本と比べて、海外で漫画はどのぐらい人気なのでしょうか。

 市場の規模を金額で見てみますと、日本は約4400億円(※2018年データ)、海外は合算して約1000億円弱ではないでしょうか。もっとも大きいアメリカでも約250億円ほどです。日本のほうが圧倒的に売り上げが大きいことが分かります。

出典:日本の漫画は、海外コンテンツ市場で「本当に」戦えているのか(現代ビジネス)

 要するに現段階では、日本市場の規模が突出しているから、世界のデータはさほど必要がないわけです。今後マンガの海外市場が広がれば、当然調査(市場データ)は必要になりますし、海外には広大な市場が広がっているといえます。

 この市場規模は書籍の販売数なので、アニメやドラマのライセンス料、グッズなどの売り上げがカウントされていません。実際の市場規模はもっと上……という考えもあるでしょう。

【参考】2019年の出版市場を発表 紙+電子は0.2%増の1兆5,432億円のプラス成長

◇ゲーム市場はスマホが主力

 ゲームの国内市場ですが、ニンテンドースイッチやPS4などの家庭用ゲーム機と、基本無料で遊べるスマートフォン用ゲームに分けてみます。

 コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が発行する「2020CESAゲーム白書」によると、2019年の家庭用ゲーム機の国内市場は約3300億円です。内訳はゲーム機(ハード)とパッケージのソフトがそれぞれ1700億円前後になります。参考までにダウンロード用ソフト(デジタル)は、別カウントで約260億円となります。

 そして、スマートフォン用ゲームの国内市場は約1兆3400億円です。家庭用ゲーム機の市場と合算すると、国内ゲーム市場は1兆7000億円弱、PCゲームを入れると約1兆8000億円になります。

【参考】ゲーム業界調査データ「2020CESAゲーム白書」発刊

 なお、ゲーム雑誌「ファミ通」の「ファミ通ゲーム白書2020」によると、2019年の世界ゲームコンテンツ市場(ダウンロード販売を含む)は、約15兆7000億円です。同データは、ゲーム機の金額を除外していますから、それを加えると17兆円以上になります(あくまでも参考です)。

◇アニメ「広義」なら1兆1000億円市場も…

 日本動画協会の「アニメ産業レポート2019」(2019年12月発表)によると、2018年のアニメ産業の国内市場規模は約1兆1000億円です。世界市場も約2兆200億円(6年連続増)と好調に推移しています。

【参考】「アニメ産業レポート2019 サマリー(日本語版)」公開のお知らせ

 ただし、レポートに「広義のアニメ市場」とただし書きがある通り、テレビでの売り上げ、劇場版アニメの売り上げ、ネット配信、音楽、商品化権(ライセンス)など、さまざまな数字を含んでいます。国内市場の内訳ですが、トップは商品化権の約5000億円、遊興(パチンコ・パチスロ)の3000億円弱となり、この二つで全体の7割弱を占めます。

 テレビアニメの売り上げは約1100億円、劇場版アニメは約400億円、ネット配信とDVD販売がそれぞれ約600億円になります。マンガやゲームと同じ「狭義」で考えると、市場規模は小粒になってしまいます。

◇市場拡大のポイントは海外展開

 要するに、市場規模をどこまでカウントするかの違いが、各業界の実情を示しているわけです。ゲーム市場は、アニメ市場やマンガ市場よりも上ですが、「家庭用ゲーム機とスマホゲームは、開発もビジネススタイルも別物」という考え方もあります。分離してしまえば、家庭用ゲーム機の国内市場も、マンガの国内市場よりも小さくなります。

 またマンガ市場はコミックスとマンガ誌の売り上げ、ゲームはゲーム機とソフトの売り上げというメインだけでも稼いでいます。対して、アニメ市場はメインのテレビ放送や映画公開の稼ぎだけでは売り上げ規模が小さく、周辺のビジネスでフォローしていることが浮かび上がります。

 そして当然ではありますが、海外展開の度合いで市場規模は大きく変わるということです。

 「成長にかげりの見られる」というアニメ市場ですが、それでもここ5年で海外の市場を3倍に拡大しました。アニメの関係者に取材をすると「近年はライバル(作品)が多く競争が厳しい」と言う声を聞いてきましたが、それはあくまで「国内アニメの視聴競争」ということでしょう。ともあれ、見方次第で意外な特徴が浮かび上がるわけで、ビジネスの妙味なのですね。

 日本国内は少子化による人口減もあり、市場の縮小は避けられず、今後市場が厳しくなるのは仕方のないところでしょう。それは各業界とも承知のとおりなわけで、どう切り抜けていくのかも今後の注目となりそうです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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