ニンテンドースイッチライト 携帯ゲーム機特化で3DSの後継機に?

任天堂の新しいゲーム機「ニンテンドースイッチライト」

 任天堂が新しいゲーム機「ニンテンドースイッチライト」を発表しました。現行機「ニンテンドースイッチ」の機能の一部を取って、価格も「ライト」にしました(スイッチは2万9980円、スイッチライトは1万9980円でいずれも税抜き)。最大のポイントは、テレビとの接続機能をなくして携帯ゲーム機に特化したことでしょう。業界には「ニンテンドー3DS」シリーズの実質的な後継機という見方もありますが、どうなのでしょうか。

 任天堂は元々、3DSの後継機を作っていると見られていました。そこで今回、任天堂に「スイッチライトは3DSの後継機の扱いなのか」と質問してみました。同社は「スイッチライトは、3DSの後継機ではなく、あくまでニンテンドースイッチのバージョンの一つ。3DSはまだ生産しているし、潜在的な需要があると思っている」と話しています。

 ただこの話は、そのまま受け取れません。「ニンテンドー3DS」シリーズは、ピーク時には世界で年間1300万台以上を出荷しましたが、今年度(19年度)の出荷予想はわずか100万台とピーク時の10分の1以下で、新規ソフト発売の予定もありません。そもそも3DSの後継機を発表するにしては、あまりにもタイミングが遅すぎます。

 携帯ゲーム機向けのタイトルである人気シリーズの最新作「ポケットモンスター ソード・シールド」をスイッチで出すこと、スイッチの今年度の出荷予想は前年度を上回る1800万台であること、3DSの販売縮小などを総合的に考えると、任天堂が据え置き型ゲーム機と携帯ゲーム機のブランドを実質的に統合し、勝負をかけてきたと見るのが現段階では妥当でしょう。そもそもスイッチは、元々携帯ゲーム機の要素も持っており、発売当初から「3DSとかぶる」という指摘は多かったので、むしろスイッチライトの発表でその矛盾が解消されたとも言えます。

 そして現在のゲーム業界の状況を考えると、スイッチライトの投入は理にかなっているのは確かです。携帯ゲーム機の市場はかつて日本で人気でしたが、今は無料ゲームを武器にしたスマートフォンに市場を奪われました。そしてゲーム業界の主戦場である欧米ではハイスペックの据え置き型ゲーム機の方が売れています。ソニーの携帯ゲーム機「PSVita」も生産終了に追いやられたように、携帯ゲーム機が大変厳しいというのは、関係者の一致した意見なのです。もはや新しい携帯ゲーム機を作るのは経営的にリスクが高いのですが、今回の方法であればリスクは最小限ですみます。

 任天堂はここ30年、据え置き型ゲーム機と携帯ゲーム機の両方で、二つのブランドのゲーム機を作ってきました。両方買うユーザーもいますから、売上高が伸びる長所もありますが、別々にソフトを開発してラインアップをそろえなくてはいけませんから、手間がかかっていたといえます。一本化は、ゲーム開発という経営資源を集中する意味でも、CMなど販促面でもプラスと言えますし、最初からソフトも豊富にそろっています。スイッチライトの発売は、携帯ゲーム機市場の苦戦を織り込んだ手堅い戦略と言えるでしょう。

 さまざまな関係者にスイッチライトについて話を聞きました。3DSの実質的な後継機という意見もあったのですが、懐疑的な見方も少なくありませんでした。「携帯ゲーム機にしては価格が高い。これならスイッチを買えばいい」「サイズを小さくしたとはいえ、3DSのように外で遊べる仕様なのか微妙」「バッテリーの時間がもう少しあれば」という具合です。しかし「正直疑問はあるが、それでも力で売るのが任天堂で、やってみると案外すんなりいくかも。そしてゲーム業界のためにも売れてほしいのは確か」という声もありました。

 そう言えば、確かにスイッチも発表当時は「こんなどっちつかずのゲーム機。誰が買うのか」という厳しい意見も多かったのです。事実、ソフトメーカーが当時に出したスイッチ向けソフトは、様子見といわんばかりのリメークものばかりでした。しかし任天堂は、多くの予想を覆してスイッチを大ヒットさせた実績があります。

 ともあれ、スイッチライトが専用の携帯ゲーム機という路線を打ち出し、「ポケモン」シリーズの新作を出すことは、これまで3DSを遊んでいたユーザー(特に子供たち)へのメッセージと言えるわけです。グーグルやアップルが新しいゲームサービスを始めるように、今後は強力なライバルが登場します。スイッチライトがヒットするか注目です。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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