ソニー不在で任天堂の“本命”発表なし 存在感が薄れるE3

米ロサンゼルスで開催された「E3 2019」(写真:ロイター/アフロ)

 11~13日(米国時間)に米ロサンゼルスで開催された世界最大のゲームイベント「エレクトロニック・エンタテインメント・エキスポ(E3)」。毎年ゲーム業界関係者の注目を集めるが、今年は業界の“顔”ともいえるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は不在で、任天堂から新ゲーム機の発表もなく、かつての存在感が薄れつつある。

 PS3やWiiなどが披露されたころの2006年のE3は、多くの関係者が詰めかけ、試遊台に長い列ができるなどゲーム業界の中心的なイベントだった。しかし近年は、E3の存在感が薄れたという声も関係者から聞かれるようになり、今年は盛り上がりに欠けたという声が大きい。その指摘は、2016年にエレクトロニック・アーツなど世界的な大手ゲームメーカーが出展を見合わせたことからささやかれるようになった。今年にSIEが出展を見合わせたのも、その流れと言える。

 背景にあるのは、ビッグタイトルを持つゲーム会社であれば、わざわざ発表会を開かなくても、ネットで情報発信をするだけでメディアや多くのユーザーの目を引き付けられるようになったことだ。そこには発表会開催時の費用対効果に対する懐疑的な見方もある。一方でネットの映像配信は、手間もコストも抑えて相応のPR効果が見込める……というのが、業界の共通認識だ。

 任天堂もかつて、メインとなるE3直前の発表会では現地の会場を借り切って華々しく開いていたが、今は事前収録の映像を流す形にしており、明らかに力の入れ方が違う。しかも今回は、関係者が“本命”と注目していた「ニンテンドースイッチ」の新バージョンの発表がなく、ソフトの紹介だけ。大手ゲーム会社の社員は、任天堂の発表について「予想の範囲内。(ゲーム機の)新発表がなかったのは、E3でなくても注目を集められると判断したのだろう」と淡々と話す。

 さらに言えば、ゲーム業界の関係者は、毎年3月ごろに開かれるゲーム開発者向けの国際会議「ゲームディベロッパーズゲームカンファレンス(GDC)」を重視する傾向にある。グーグルの新ゲームプラットフォーム「STADIA」の発表もGDCだった。

 もちろん、以前ほどではないにしても、E3のブランド力は健在のも確かで、各社ともにこの時期に合わせてさまざまな動きをしている。マイクロソフトは新型ゲーム機「プロジェクトスカーレット」を発表し、動画配信大手のネットフリックスもゲームビジネスに参入することを明かした。E3不参加のSIEもE3の前に合わせて最新ゲームの映像を流し、グーグルもE3の前のタイミングで「STADIA」の価格やサービス開始時期などを出している。だが各社の動きを総合的にみると、E3が以前のような絶対的な存在ではなく、選択肢の一つにすぎなくなったともいえる。

 今後のゲーム市場は、既存の据え置き型ゲームとスマホゲームに加え、グーグルやアップルなど非ゲーム系の会社が発表した新プラットフォームを発表するなど多様化する流れになっている。関係者は「どこが勝つのか先が読めない」と悩んでいるが、E3の扱いにも悩むことになりそうだ。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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