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超谷間からA代表へ。2000年生まれの”ミレニアム世代”で森保ジャパンを作ってみた。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

2004年の元日にタイ代表と対戦する日本代表の森保一監督はJ2ヴァンフォーレ甲府の三浦颯太を追加招集しました。それから間もなく川崎フロンターレに完全移籍することがリリースされましたが、三浦は東京五輪世代の末っ子で、パリ五輪より1年早い2000年生まれ。いわゆる”超谷間世代”です。

ただ、1000年に一度しか来ない”ミレニアム世代”でもあり、豊富なタレントが揃っています。実際に谷晃生(デンデル)と瀬古歩夢(グラスホッパー)が東京五輪のチャンスを掴み、菅原由勢(AZ)は五輪とカタールW杯後こそ逃したものの、その後A代表で右サイドバックの主力に定着しました。

そしてタイ戦のメンバーには前回から引き続き佐野海舟(鹿島アントラーズ)が選ばれており、3月以来の招集となった藤井陽也(名古屋グランパス)も改めてメンバー入り。二人に共通するのは2000年12月生まれで、あと1ヶ月遅ければ歩パリ五輪世代ということです。

特に12月26日生まれの藤井は予定より早く生まれたそうで、その話題に触れた時に「1週間だけオーバーエイジ」と苦笑いしながら回答してくれました。そこで年末企画として”ミレニアム世代”だけで”森保ジャパン”を選考したいと思います。

公式戦に向けては23人がベースではありますが、森保監督が怪我人やコンディション不良の可能性も想定して、従来の26人とほぼ同じように招集してるので、それに倣って26人にしました。

GKは代表経験者であり、現在ベルギーで奮闘する谷晃生がファーストチョイスであることに、ほぼ異論の余地はないでしょう。梅田透吾(清水エスパルス)はリーグ戦でなかなか出番はありませんが、才能を怪我で発揮できていなかったことから、来季への期待をこめて選びました。

北村海チディ(藤枝MYFC)はサイズこそ大きくないですが、高い身体能力と勇気でゴールマウスを守り、攻撃の起点としても目を見張るものがあります。ポジション感覚にも優れており、結果的に相手のシュートがポストに当たって救われるシーンが多いことについても、本人は成長の証とポジティブに捉えているようです。

最終ラインは代表経験者と初招集の三浦でファーストセットが埋まってしまいました。右の菅原から藤井と瀬古の2センター、そして左サイドバックの三浦という構成です。しかし、それぞれの2番手もタレント揃いです。

中野就斗(サンフレッチェ広島)はこれまでのセレクト記事でも取り上げていますが、スケール感のあるライトバックで、ここからA代表に食い込んでくるのが楽しみな一人です。関川郁万(鹿島アントラーズ)はプロ入り当初こそ才能を持て余していた感もありましたが、今年は植田直通と組むことで大きく成長を遂げて、力強さと安定感がグッと増しました。彼も準代表レベルまで来ていると思います。あとは悲願となるタイトル獲得に貢献できるかどうか。

中村桐耶(北海道コンサドーレ札幌)はポテンシャルで言ったら、この26人の中でも一番かもしれません。オールコートのマンツーマンという難しいチーム戦術の中で、攻撃性能を発揮しながら、守備の状況判断にも磨きをかけてきています。あとは本人も認めるイレギュラーな状況での臨機応変な対応力、そしてリーダーシップが飛躍の鍵でしょう。

佐々木旭(川崎フロンターレ)に関して、攻守両面での非凡な能力に疑いの余地はありません。ただ、安定感に課題があり、失点に直結するミスやカードというのが目立っていたことも事実。百戦錬磨の登里享平に加えて、三浦が加入する川崎でどう乗り越えていくか。右利きの選手であるだけに、右サイドバックでの起用もあるかもしれません。

福田心之助(京都サンガ)は大卒ルーキーながら右サイドバックのポジションを掴みました。左サイドバックや攻撃的なポジションもこなせるポリバレントとしての能力もあり、第12節のマリノス戦で見せたグラウンダーのシュートによるゴールは圧巻でした。

ボランチはA代表の佐野とアジア王者になった浦和レッズで主力を務める安居海渡がファーストセット。安居は2列目もこなしますが、やはり最も特長を出せるのはボランチで、正確なボール捌きと攻め上がりのセンスは抜群。課題は相手の対応に対する修正力と、いざアタッキングサードに入ってからの決め手です。佐野もボールを奪って持ち出すプレーは抜群ですが、数字に直結するプレーという部分では同じ課題があり、そこは伸びしろでしょう。

秋山裕紀(アルビレックス新潟)はアスルクラロ沼津や鹿児島ユナイテッドでの”武者修行”を経て、新潟の主力に上り詰めた苦労人。先輩格の高宇洋がFC東京に移籍したことで、一層のブレイクが期待されます。綱島悠斗(東京ヴェルディ)はセンターバックとボランチの両ポジションをハイレベルにこなすポリバレントという意味で、板倉滉に通じるものがあります。ただ、センターバックは2000年生まれも含めて東京五輪世代にタレントが充実しているので、大型ボランチとして飛躍していく方が、よりA代表に近づくかもしれません。

2列目はやはり気鋭のタレントが多く、上月壮一郎(シャルケ)、アペルカンプ真大(デュッセルドルフ)、そしてA代表の中村敬斗(スタッド・ランス)と欧州組がファーストセットに。左の2番手にした新潟からベルギーに渡った本間至恩(クラブ・ブルージュ)は一時、トップチームに定着しかけましたが、また2部のBチームがメインになっており、ここをバネに来年の飛躍が期待されます。

平川怜(ロアッソ熊本)は”ミレニアム世代”の象徴的な存在で、2017年のU−17W杯では久保建英とのコンビでも話題を集めたタレントです。その後、FC東京やレンタル先でも伸び悩む形で熊本に渡り、大木武監督のもとで攻撃センスを発揮。今年は立候補でキャプテンも務めて、J2ベストイレブンに輝きました。まだ去就ははっきりしていませんが、またA代表で久保との再会を果たす日もそう遠くないかもしれません。

山田雄士(柏レイソル)は2列目のあらゆるポジションをこなし、独特の創造性を持っている選手です。育成型期限付きで栃木SCに移籍していましたが、2シャドーの一角で攻撃の中心に。夏には下位で苦しむ柏に戻り、終盤の残留争いでチームを引っ張りました。結果的に残念だったのは栃木で天皇杯に出ていたため、川崎とのファイナルに出られなかったこと。来年は押しも押されぬ柏の主力として期待したい選手です。

東俊希(サンフレッチェ広島)はクラブだと3ー4ー2ー1の左ウイングバックがメインとなりますが、シャドーやボランチ、必要ならセンターバックとしてもプレーできる”スーパーマルチ”です。守備でハードワークしながら、攻撃に切り替わった時にスイッチを入れられる感覚はこの世代でも特筆に値します。さらに1対1の力強さや攻撃での決め手が加わるとA代表も見えてくるでしょう。

FWは一番手を決めるのに悩みましたが、1トップとしての存在感を発揮できる森 海渡(徳島ヴォルティス)を抜擢しました。序盤戦は怪我に苦しみながらもシーズン13得点。柏から期限付き移籍中である森。J1でも十分に通用すると思いますが、一部報道ではJ2の強豪クラブから声がかかっていると伝えられており、どうなるのか。

小森飛絢(ジェフ千葉)はJ2でブレイクを果たした一人。鋭い飛び出しとゴール前の落ち着きで、森と同じく13得点をマークし、ベスト11にも輝いています。本当なら千葉でJ1に昇格したかったはずですが、どういった決断をするのか。山田新(川崎フロンターレ)は大卒ルーキーながらJ1屈指の強豪である川崎で、前線から攻撃を牽引しました。4得点という結果には満足していないと思いますが、2年目のブレオクに足掛かりを掴むシーズンになったはずです。

26人でも収まりきらないぐらいにタレントの豊富な”ミレニアム世代”。今年が大卒ルーキーだった選手も多く、今回のリストに入らなかった選手が来年ブレイクを果たして、A代表入りに名乗りをあげる可能性もあります。読者のみなさんも”ミレニアム世代”のタレントを探してみてください。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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