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バイエルンで公式戦デビューの福井太智。「何もできなかった」2年前のプロデビュー鹿島戦からの成長

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:アフロ)

バイエルン・ミュンヘンの福井太智はDFBポカール1回戦のプロイセン・ミュンスターとの試合で63分からドイツ代表MFジョシュア・キミッヒに代わって出場し、公式戦でのトップデビューを果たしました。

すでに3点をリードした状況から、ほぼ30分間のプレーで4−0の勝利に貢献。福井はバイエルンの公式サイトを通じて「デビューをきっかけに、今後も出演できるように日々努力していきたい」と語っています。

今年1月にサガン鳥栖から移籍し、現在はレギオナルリーガ(4部相当)のセカンドチームに在籍している福井ですが、ここから過密日程が続くトップチームで、チャンピオンズリーグやすでにベンチ入りを経験したブンデスリーガで試合に絡んで行ければ、トップチーム定着が見えてくるかもしれません。

福井を筆者が初めて取材したのはU-16の日本代表候補合宿でした。その頃から高いテクニックが目立っていた福井ですが、体の線は細めで、中盤の高い位置でチャンスメイクしていく選手になって行くのかなと思いながら観ていた記憶があります。

しかし、そこからみるみる逞しく成長していった福井ボランチのポジションで力強いボール奪取なども見せるようになり、ボールを持てば長短のパスでリズムを作ったり、高い位置でアクセントになったりと、存在感のあるプレーが目立つようなっていました。

その福井が鳥栖でトップデビューしたのが2021年3月のルヴァン杯開幕戦。当時16歳だった福井。相手は鹿島アントラーズで、二種登録されて間もないタイミングでのチャンスでした。「ここで結果を出してやろうという気持ちでやりました」と語る福井ですが、現実は厳しく福井は積極的な縦パスなどでチャンスを作ろうとしますが、鹿島のたいとな守備を打ち破ることはできず・

チームも0−3で敗れると福井は「結果は100点中、ゼロ点かなと思います。自分自身、何もできなかったなという印象です」と厳しい表情で振り返りました。

「今までやってきたプレッシャーだったりとか、それよりも鹿島さんのプレッシャーが早かったので。自分が思っていた以上の相手で、もっと自分自身できると思ってたんですけど・・・まだまだ何もできなかった」

その悔しさをバネに成長しながら、J1などでも少しずつ出番を増やした福井は2022年に、高校3年生でプロの選手となった。当時のことを福井に聞いた時に「あの試合を終えてからサッカーに対する意識とか強度は変わってると思うので、あの試合を経験できたことはすごく大きかった」と振り返っていました。

本当であれば2021年に行われるはずだったU−17W杯がコロナ禍で無くなり、当時はクラブでしっかりと頑張って行くしかなかった。それでもバイエルンに練習参加して契約を勝ち取り、セカンドチームで結果を残し続けて、U−20W杯のメンバーとして1つ先輩の松木玖生らと同じピッチで奮闘した。

”走るファンタジスタ”と筆者は福井を表現しているが、パリ五輪世代はもちろん、A代表にもなかなかいないタイプの選手だ。ここからバイエルンでどんどん輝きを放ち、日本代表にも還元していってほしい。これからが本当の勝負になってくるはずだが、かつて岡崎慎司や香川真司も指導したトゥヘル監督のもと、思い切って自分の良さを発揮していってもらいたい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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