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9月の欧州遠征へ。三笘、久保、遠藤など日本代表の最新序列を読み解く。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

日本代表の森保一監督は9月の欧州遠征に臨む26人のメンバーを発表。毎熊晟矢(セレッソ大阪)が初選出されたほか、冨安健洋(アーセナル)、町田浩樹(ユニオン・サンジロワース)、橋岡大樹(シント・トロイデン)、田中碧(デュッセルドルフ)が復帰。前回は追加招集だった伊藤敦樹(浦和レッズ)が正式に選ばれた一方で、欧州で最も活躍が目立った一人である南野拓実(モナコ)やJリーグでゴールを量産中の大迫勇也(ヴィッセル神戸)などが招集外でした。

森保監督は「いいプレーをしていることは選考の段階でも、選手たちのプレーしているところは確認しています」と前置きした上で「判断基準として1つではないですが、これまでの活動と、そして今回とということを含めて、またアジアの2次予選、アジアカップに向けてという未来に向けて、この先に向けてという部分を総合的に考えて決めました」と説明しました。

やはり欧州の地でドイツ、トルコという願ってもなかなかない相手とこの時期にできるということで、森保監督も基本的には3月、6月に招集したメンバーをベースに、今計算の立つメンバーで力試しをしておきたいというのがあるでしょう。”森保ジャパン”が2サイクル目ということもあり、1回1回でぶつ切りに見るのではなく、チーム作りの流れをイメージしていることは理解できます。

4ー1ー4ー1をベースにした場合の布陣予想図

今回のメンバー構成を見ると、もしかしたら3バックをテストするかもしれませんが、4ー1ー4ー1想定で布陣と序列を考えます。

前回6月はダンことシュミット・ダニエルが出場しませんでしたが、大迫敬介や久々の代表招集だった中村航輔をテストする意図があったと考えられるので、ダンを一番手としておきます。GKに関しては現状、絶対的な存在はいないので、ダンも含めてあまり差の無い競争ではあるでしょう。

中村はずば抜けた反射神経、大迫はサイズの割に守備範囲が広く、ダンはハイボールやビルドアップといった強みがあります。そうした特長はスタッフがすでに把握している中で、強豪との戦いでどういったパフォーマンスが見られるか。それによって二次予選やアジアカップの定位置にも影響しそうです。

ディフェンスラインは右の菅原とセンターバックの板倉がかなり確実なファーストチョイスと言えます。また本来であれば実力上位の冨安も、状態の良さを見せれば板倉とセンターバックを組むことになるでしょう。右サイドバックには菅原に加えて橋岡大樹、毎熊が招集されており、アーセナルのメインポジションでは右サイドは代表ではあくまでオプションになると考えられます。

センターバックでは谷口彰悟もファーストチョイスの有力候補で、復帰した冨安の評価次第ではありますが、日頃カタールでプレーしている谷口が、ドイツやトルコを相手に好パフォーマンスを示せれば、ポジションを守れる可能性もあります。町田は左センターバックと左サイドバックの両睨みですが、伊藤洋輝を引き続き、左サイドバックで起用するのか、町田が加わったことで中央メインにするのかで変わるものがあります。

森下は前回に引き続き、2度目の招集となるので、本人も自分の良さを出すだけでなく、周りとの関係や相手の対策の中で、ポジショニングなども考えていきたいと語ります。あくまで武器は大外からのオーバーラップですが、相手との駆け引きや三笘を外から仕掛けさせるような狙いで、内側にポジションを取るシーンも見られるかもしれません。

中盤はシュトゥットガルトからリバプールに移籍したキャプテンの遠藤航、ビルドアップの要である守田英正、そしてフランクフルトからラツィオ移籍の鎌田大地がファーストセットでしょう。ただ、6月のエルサルバドル戦で見せたような、堂安律と久保建英が右側のインとアウトで入れ替わりながらコンビネーションで崩していくオーガナイズを採用する可能性もあります。

右インサイドハーフが中盤のスペシャリストである鎌田であれば、右のアウトサイドを伊東純也が使っていく形がオーソドックスになりますが、久保建英がインサイドを担うケースも含めて、右側はサイドバックも含めたトライアングルが形成されつつあるので、左との関係でどういう攻撃バランスを考えるかでも代わってきそうです。

左サイドは三笘が絶対的な存在ですが、中村敬斗も代表に馴染んできており、伊東と同じスタッド・ランスに移籍して、改めてゴールに直結するプレーが期待されます。彼らを左サイドバックとインサイドハーフでサポートすることになりますが、今回は旗手怜王がいない中で、守田や田中碧がどう関わっていくか。

伊藤敦樹は浦和だと、ボランチと言っても縦の推進力を生かすプレーが多いですが、メンバー構成を考えると、4ー1ー4ー1ならアンカーで起用される可能性が高いです。4−2ー3ー1であれば遠藤との2ボランチなどで、より浦和のプレーを発揮しやすいですが、日本人では希少な大型MFなので、森保監督がどう生かしていくのか注目です。

トップは6月と同じ4人ですが、浅野拓磨と前田大然はサイドの起用も考えられます。ただし、メンバーを見ると分かる通り、左右ともに複数の候補がおり、場合によっては毎熊を前目に上げることもできるので、3バックや4ー2ー3ー1の場合も含めて、4人を使い分けていくのかは蓋を開けてみないと分かりません。

森保監督の評価はともかかく、FWは分かりやすく結果が評価さらるポジションでもあります。小川航基や町野修斗、大迫勇也など、所属クラブで数字を残している選手も多い中で、そうした目に見える結果を4人の誰が出せるかどうかも注目ポイントです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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