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アジア、そして世界へ。浦和レッズのACL制覇がJリーグにもたらすもの

河治良幸スポーツジャーナリスト

浦和レッズがACLファイナルでアル・ヒラルを破り、三度目のアジア制覇を果たした。DAZNのみの放送で、地上波はもちろん、BSも含めて一般の日本人にこの快挙が届かなかったことは残念だが、Jリーグを日頃から観ているファンには大きな刺激になった様子だ。

埼スタのピッチで躍動する選手たちはもちろん、ゴール裏のサポーターの姿を見たり、声を聴いて、自分達もあそこに立ちたいという思いを抱いたファンサポーターは多いはず。そういう意味でもACLファイナルが、Jリーグにもたらしたものは大きいだろう。

ACLファイナルの翌日、筆者はフクアリでJ2のジェフユナイテッド市原・千葉とジュビロ磐田を取材した。雨の中でも熱のある好ゲームだったが、試合結果は1ー0でジュビロ磐田が勝利し、磐田は10位に浮上。一方の千葉は17位に沈んでいる。

このカードはくしくも、ACLの前身であるアジアクラブ選手権を制した古河電工(現在のジェフ千葉)とジュビロ磐田という伝統的な一戦だった。日本のクラブでアジアを制したのはACLでの浦和、ガンバ大阪、鹿島アントラーズ、そしてクラブ選手権での古河、磐田、読売クラブ(現在の東京ヴェルディ)だけだ。

浦和OBでもある鈴木大輔は「浦和の偉大さというか。改めて自分も、あそこで戦えたことを誇りに思うし、いろんな感情が湧いてきた」と語ってくれた。それと同時に古河から伝統を受け継ぐジェフ千葉を上のステージに導きたいという思いも強まったようだ。

「自分達、今J1昇格を目指してやっているけど、その先を目指してやっていく。今回の浦和も前の選手たちが関わってるんだよと。いつかジェフがアジアの頂点に向かう時に、そこで支える責任ある立場として、本当に未来の土台を築いていきたい」

対戦相手の磐田は前日入りしたホテルの食事会場で、ACLファイナルを観ていたという。決勝ゴールの起点となった浦和MF岩尾憲と親しいキャプテンの山田大記は「嬉しさが大半ですけど、その後で少し悔しさがある」と振り返る。

「僕は(J1で戦った)去年ほとんど怪我でプレーできなかったので。もう1回、チームとしても個人としても、しっかり勝負したいなという思いは昨日のACL観ながらすごく感じました」

山田は現在、自分達がJ2で戦っているリアルな状況を認識しつつも「このクラブが築き上げてきたものだったり誇りというものは、このクラブに携わる人間が持ち続けなきゃいけない」と語った。この試合も雨の中で、多くのサポーターがフクアリに足を運び、自分達をお通ししてくれた。このサポーターをJ1、そしてアジアのステージにつてて行きたい思いが強くなったようだ。

今回はたまたまACLファイナルの翌日に、アジア制覇を経験しているクラブの対戦を取材する好遇に巡り会えたが、この千葉と磐田に関わらず、多くの選手、そして色んなクラブのサポーターがACLファイナルを観て、胸を胸を熱くしたはずだ。いつかあの舞台に立ちたいと。

そしてアジア制覇を成し遂げた浦和レッズは次のACLにプレーオフから出場する権利を獲得し、さらには2025年に、32クラブで行われる新フォーマットのクラブワールドカップに出場することが決まった。

今年12月には現行フォーマットで最後のクラブワールドカップにも出場するが、おそらく多くの浦和サポーターがサウジアラビアの地に集結して、世界での戦いを後押しするはず。そして、それが映像を通じて日本に、世界に発信されていくことは間違いない。

この数年、Jリーグで若い選手が活躍すれば欧州移籍というのがほぼ既定路線になっており、その傾向が大きく変わることはないだろう。それでもJリーグからクラブとして世界を目指せるルートはある。正式なクラブワールドカップは4年に一度となるが、毎年、各大陸の王者が集まって戦い、最後に欧州王者と対戦するような大会の開催も検討されていると聞く。

浦和レッズのアジア制覇、そしてファイナルの舞台での熱量がJリーグにもたらしたもの。それが今後のJリーグで反映されて行くことを期待している。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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