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早くも”崖っぷち”の森保J。中国戦で3バックを推奨する理由

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

日本代表は最終予選の初戦となるホームのオマーン戦に0−1で敗れました。もちろん、残り9試合で十分に巻き返す事は可能だが、負け方があまりにも無残だったことを考えると、長い移動、検査、3日間の練習でガラッと巻き返すのは簡単ではないでしょう。

オマーン戦は決して”格下”の相手を崩せなかったとか、そういうレベルの内容ではなく、ボール保持率以外は全ての面でオマーンに上回られての結果。失点は後半43分でしたが、ワンチャンを決められたわけではなく、それまでに失点していてもおかしくないシーンがいくつかあった中の1つでした。

その一方で日本側が得点できる可能性があったシーンはオマーンより限られており、運よく引き分け、普通に行けば十中八九、負けの内容でした。局面を切り取れば、オマーンが4ー3ー1ー2で自陣の中央に守備を固める時に、日本がサイド攻撃を徹底する、中央を攻めるなら攻めるなりに迫力を出すといったことができなかったのは無得点の要因ですが、それ以前に攻守両面でオマーンに上回られる要素が多い試合だったことを認識する必要があります。

そこから多くの選手が口に出すように、初戦で負けたことでお尻に火がついた状況で、ピリッとしてくるといったこと、1試合経験してチームとしても個人としてもコンディションが良くなってくるとか、日本に矢印を向ければオマーン戦より明らかに向上するところはあるでしょう。しかし、それは中国も同じことです。

オーストラリアに3−0で敗れた中国はそのままカタールのドーハ 、しかも同じハリファ国際スタジアムで日本を迎え撃つべく、中5日で準備してきます。つまり、よりコンディションや環境面のアドバンテージがあるのは中国です。1つ気をつけたいのがオーストラリア戦の4ー1ー4ー1からシステム変更をしてくる可能性が十分に考えられることです。

オーストラリア戦で帰化選手のFWエウケソン、DFブラウニングはスタメンでしたが、アランとアロイジオは途中出場すらしませんでした。彼らが現状どのぐらいの状態にあるかは分かりませんが、初戦から思い切って変更してくるのであれば、活用しない手はないでしょう。筆者はアロイジオをエウケソンと並べ、エスパニョール所属のウー・レイと共に、アランをサイドに配置する攻撃的な2トップ採用もあるのではないかと見ています。

その意味で、あまりオーストラリア戦を参考にして入らない方が良いかもしれません。もちろん、ディフェンスラインの攻略法などはそのまま生かせる部分もあると思います。オマーンとはスタイルも強みもまるで違うチームですが、どちらかというと中央の守備が強いという共通点はあり、やはりサイドを崩し切るのか、中央を攻めるならそこにどう迫力を出すのか、使い分けをするのかといったところが課題になってきます。

理想はどんなシステムを使っても、その中で試合ごとに最適解を見つけて対応できることですが、クラブチームではないので、細かいところを成熟させるのは難しい。そうなると試合の中でシステムをはっきり変えていくというのはクラブレベルより有効になるところが大きいのは間違いありません。

オマーン戦で見られた問題点、中国の特徴などを総合的に考えると、3ー4ー2ー1で入るのがベターと考えています。スペースの生じやすいサイドを起点にしながら、フィニッシュに厚みを出しやすい形であること、エウケソンを擁する中国の攻撃を防ぎやすくすること、そして起用する選手の組み合わせによりますが、相手を見ながら立ち位置を可変しやすいことがあります。

■推奨する布陣:3ー4ー2ー1

---------------古橋--------------

--------久保--------鎌田--------

中山--守田--------遠藤--伊東

-------冨安--吉田--山根-------

---------------川島--------------

1トップに古橋を起用する理由として、中国戦はそれほど前線のポストプレーが要求されないことに加えて、中国は最終ラインでの揺さぶりに弱いことがあります。ビルドアップの段階では右の鎌田、伊東、遠藤、山根がサイドのダイヤモンドを作って、伊東が外と中を入れ替わりで縦に仕掛けていく。

3バックの右に植田ではなく山根を置いたのは、攻撃参加の”飛び道具”になってもらいたいから。サイドバックだと、相手のサイドハーフと分かりやすいマッチアップになってしましますが、3バックの一角から前に出ていくと相手は非常に捕まえにくい状況が生まれます。

基本的には鎌田のキープ力を右ワイドで生かしながら、伊東がアウトサイドに張っている時は山根がインナーラップ、伊東が中に流れれば山根が外側からサポート、同時に攻守のバランスを取るメカニズムになります。

やや右ハンドルの構成になりますが、その分も左側からバランスを取りながら、好機に絡んでいくのは守田の役割になります。右の遠藤は鎌田、伊東、山根を循環させる軸になると同時に、ボールサイドのリスク管理も担います。守田は遠藤より少し前目でうまく立ち位置を変えながら、中国の背中を取っていくことを求めたい。

左のアウトサイドに中山を配置するのはボランチのケアと、3バック右の山根が上がった時の反対側からのリスク管理など、守備的なバランスワークが要求されるため。もちろん機を見て一気に攻撃参加することも有効ですが、基本は守備のバランスを取りながら、おそらくウー・レイが起点になってくるエリアのケアを担うことになります。

左シャドーになぜ久保建英を置くのには2つの理由があります。1つは鎌田が事実上のインサイドハーフのような仕事になるので、よりゴールに直結するところで関わってほしいため。まら久保を右にしてしまうと、伊東の仕掛けや山根の飛び出しと相殺してしまうためで、自由になるスペースが大きいところで、守田のサポートを受けながらフィニッシュワークに専念できるポジションの方が、良い意味で”個のリミッター”を外せるからです。

もう1つは中国の時間帯に3ー4ー2ー1の中で解決できない時間帯に、いつでも4ー2ー3ー1にすることができるためです。森保監督が目指す3バックと4バックの使い分けというのは試合毎だけでなく、試合の中でも使い分けられるというプランが込められていると見ています。

■4ー2ー3ー1にシフトした場合

---------------古橋--------------

--久保------鎌田--------伊東--

-------守田--------遠藤---------

中山----冨安---吉田-----山根

---------------川島--------------

今のところ、それが見られたのは欧州組で挑んだ昨年のコートジボワール戦ぐらいですが、3ー4ー2ー1と4ー2ー3ー1の可変性のある布陣をここで使っていくことが有効なのではないかと思います。

もちろん久保の役割を原口元気が担うことも可能ですが、南野拓実がいない中で、よりゴールが求められるポジションになること、そしてオマーン戦は東京五輪世代が一人もスタメンにいなかったところから、左サイドバックの中山とフレッシュな風を吹かせてほしい願いもあります。

GKを川島永嗣にしたのは権田修一が悪いからではなく、本当に勝利しか許されないこの試合で、いろんな修羅場を潜り抜けてきた経験をこの試合でこそ発揮してもらいたいためです。大迫と長友を外したのは上記の戦術的な理由もありますが、現状フルコンディションに見られなかったこともあります。

ゲームコントロールという意味では柴崎岳の存在も重要になりますが、短い準備期間の中で、鎌田を攻撃の軸にしたメカニズムを構築するには少し時間がかかりそうなので、柴崎を中盤に入れるのであれば、思い切って鎌田をスタメンから外してしまい、代わりに堂安を起用するプランが有効かもしれません。

こう提唱したものの、大方の予想通り熟成重視の4ー2ー3ー1で、すでに離脱した酒井宏樹のところに山根か室屋成を入れた布陣になる可能性の方が高いと思います。やるのはピッチ上の選手であり、システムで勝負が決まるものではないですが、斬るか斬られるかという戦いに挑むのに、相手の想定を上回るものを出していくことも有効です。

何れにしても中国戦は5枚の交代枠も含めた総力戦になると考えられるので、追加招集のオナイウ阿道にもチャンスが回ってくるかもしれません。本当に内容どうこうより、泥水をすすっても勝利しなければいけない”決戦”ですが、その中で何が見えてくるのか。今後の日本代表を大きく左右する試合になるでしょう。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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