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”死の組”の状況は?混沌のEUROは突破がかかる3試合目へ。6グループの状況と展望

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

1年延期をへて欧州で開催されているEURO2020は各グループが2試合を消化。順調に突破をほぼ決めた国もいれば、大苦戦で3試合目に突破の望みをかけるしかない国もあります。

24か国を6グループに分ける大会形式で、3位の上位4カ国もベスト16に進めるということで、分かり難さもありますが、運命の3試合目に向けて、そのレギュレーションも踏まえて各組の状況を整理したいと思います。

◎確定 ○濃厚 △危機 X敗退

A組(◎イタリア、○ウェールズ、スイス、△トルコ)

伝統の堅守に攻撃力を加えたイタリアが2連勝で早くも突破を確定させている。A組1位だと相手はC組2位でウクライナかオーストリアになるが、2位でもロシアが濃厚で、マンチーニ監督としても首位通過にこだわるよりは主力を休ませながら、出ていない選手にチャンスを与える方を優先しそうだ、

ベイルを擁するウェールズもトルコに勝利して勝ち点4。イタリア戦を残すが、相手は大きくターンオーバーしてくる可能性が高く、仮に負けても少なくとも3位の上位4つに入る可能性が極めて高い。

スイスはトルコに勝利することが突破の絶対条件だが、勝ち点0で得失点差がー5のトルコはスイスに勝って3位に浮上したとしても、勝ち点3だと得失点差の勝負でかなり苦しい。

B組(◎ベルギー、ロシア、フィンランド、△デンマーク)

FIFAランキング1位のベルギーは完全アウェーでデンマークに苦しみながらも2−1で勝利して、開幕のロシア戦に続き2連勝で突破を決めた。3試合目でフィンランドに引き分け以上なら首位も確定するが、B組の1位は3位で勝ち上がった国と対戦できるため、多少の主力入れ替えはしながらもフィンランドにはきっちり勝ちに行くだろう。

ロシアはデンマークに引き分ければ突破が確定する。負けた場合は当該チームとの成績でデンマークに逆転されるが、フィンランドがベルギーに敗れた場合は勝ち点3で並び、逆にフィンランドはデンマークに勝利しているために、非常に複雑な計算になってくる。ロシアとしては会場がアウェーであることもネックで、まだ余談を許さない。

C組(◎オランダ、ウクライナ、オーストリア、X北マケドニア)

オランダが全体で唯、一突破だけでなく首位も確定させている。ウクライナには2点リードしてから終盤に追い付かれ、なんとか突き放して3−2という苦しい試合だったが、オーストリアには2−0の完勝した。

絶対的なエースはいないものの、ワイナルドゥムを中心としたパスワークを軸に、どこからでも点が取れるスタイルは輝きを放っている。2位争いはウクライナとオーストリアの直接対決に委ねられるが、試合内容を観る限りはややウクライナが有利か。

ただ、引き分けの場合は勝ち点4で仲良く突破という可能性が高く、談合と言うと表現は良くないが、他会場の3位通過の成績も見ながら、終盤には時間を消費して引き分けで終らせることも起こりうる。初出場の北マケドニアは敗退が確定しているが、強豪のオランダを相手に溌剌としたプレーを見せてもらいたい。

D組(○チェコ、○イングランド、△クロアチア、△スコットランド)

確定が1つも出ていないが、すでに勝ち点4のチェコとイングランドは仮に3位になっても成績上位で勝ち上がれる可能性が高い。非常に難しいのはD組1位だとF組2位との対戦になり、フランス、ドイツ、ポルトガルの何かになる一方で、2位抜けだと相手がE組の2位になり、美味しい結果になる可能性もある。

もっともイングランドはD組1位だとホームのウェンブリーでできるアドバンテージはあるので、基本的にはあまり気にせずチェコに勝ちには行くはず。クロアチアとスコットランドは3試合目で勝利した場合に、イングランドとチェコの負けた方と勝ち点で並ぶが、当該試合の結果でクロアチアはイングランド、スコットランドはチェコに上回られてしまう。

ただし、勝ち点4を取れば3位の上位4つに入る可能性が高くなるので、まずは勝利を目指すしかない。一番やってはいけないのは引き分けで、その時点で両国ともほぼ終了となる。一応、得失点差でクロアチアが3位になるが、勝ち点2では他グループの3位を成績で上回るのは絶望的だろう。

E組(○スウェーデン、スロバキア、△スペイン、△ポーランド)

勝ち点4のスウェーデンがかなり濃厚ではあるが、どこにもチャンスがある。スウェーデンはポーランドに引き分ければ2位以内が決まるものの、首位通過なら3位の成績上位チームとラウンド16で対戦できるので、コンディションを見ながらできる限りベストの布陣で臨むはず。

仮にスロバキアとスペインが引き分け、ポーランドがスウェーデンに勝利した場合は3か国が勝ち点4で並ぶ大混戦となり、当該国の成績も三つ巴になるが、仮に得失点差や得点数などで3位になっても成績上位4つに拾われる可能性は高い。何れにしても、その場合はスペインの敗退が確定する。

大会で唯一、2引き分けのスペインはスロバキアに勝てば突破が確実、引き分けだと仮に3位に入れてもかなり苦しくなるので、もう勝ちに行くしかない構図ははっきりしている。仮に勝利して勝ち点5になり、スウェーデンがポーランドに敗れた場合は逆転で首位通過となるが、ルイス・エンリケ監督もそれどころではないだろう。

F組(○フランス、ドイツ、ポルトガル、△ハンガリー)

戦前から”死の組”と呼ばれた通りの状況で、4位のハンガリーにもまだチャンスはある。もっとも有利なのは勝ち点4のフランスだが、ラウンド16がいきなりウェンブリーでのイングランド戦になることを避ける意味でも、首位通過は確保しておきたいところ。

そのフランスと対戦する勝ち点3のポルトガルもフランスに引き分けでも突破の可能性は高い中で、基本は勝ち点3を目指しながら、他会場の情報を得ながらの両国のマネージメントが問われてくる。

ポルトガルに4−2で勝利したドイツは曲者ハンガリーを相手に勝利すれば勝ち点6となり、首位通過のチャンスも残る。ハンガリーに大苦戦し、1−1で引き分けたフランスと異なるのはミュンヘンで試合ができること。そのドイツ相手に”ジャイアントキリング”を果たせば突破が見えるハンガリーには厳しい環境だが、気迫のこもったプレーで大会を盛り上げてもらいたい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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