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Jリーグ開幕!”初心者も歓迎”新シーズンの楽しみ5ポイント【入門編】

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

今週末、待ちに待ったJリーグの2021シーズンが開幕します。より多くの人がJリーグを楽しむ5つのポイントをまとめます。

【入門編】

・降格4つのサバイバル

昨シーズンは新型コロナウイルスの影響で特別なレギュレーションのもとでシーズンが行われました。最たるものが”降格なし”でしたが、今シーズンはJ1、J2それぞれ4チームが降格します。そのため残留争いがより熾烈になります。最終的に落ちるのは4つですが、その倍数ぐらいのクラブは終盤まで残留争いを意識して戦う可能性が高く、緊張感のある試合が多くなる。もう1つは早く残留ラインまでポイントを稼いで、そこから上位を狙っていく意味でスタートダッシュの意識がより高まるはず。そこの鬩ぎ合いも見所の1つになります。

・5枚の交代枠

”コロナ禍”におけるFIFAの認可により世界の多くのリーグで採用されていますが、後半の試合展開がダイナミックでエキサイティングになる、多くの選手に出場機会が与えられやすいなどメリットも多く、監督の影響力も強まっています。それで強まるのはスタメンとサブの差がそれほどなくなること。また5枚交代と言うことで、ベンチスタートでも多くの選手が”試合を終えるカード”として期待されるので、よりチーム一丸で戦うムードが強くなっているように思います。昨シーズンのJ1王者である川崎フロンターレはスタメンもさることながら、ベンチの層も厚く、主力クラスが途中から次々と投入される”ベンチパワー”が相手の脅威になりました。その意味でスタメンだけでなくサブをチェックすると言うのが以前にまして、Jリーグファンの日常になってきています。

・ACLの影響

優勝争い、上位争いを読みにくくしているポイントです。今年はJ1王者の川崎、2位のガンバ大阪、3位の名古屋グランパス、さらに川崎が天皇杯も制したことで、リーグ4位のセレッソ大阪にプレーオフからの出場権が与えられました。しかし、”コロナ禍”で通常のホーム&アウェーを行えないため、4月にセントラル開催でのグループステージが行われることとなりました。厄介なのがほぼ中2日で進行していく超過密日程です。またACL出場クラブはこの期間に行われるJ1の日程をミッドウィークなどに消化せねばなりません。この間、他クラブはルヴァン杯のグループステージを戦うことが多くなりますが、同じ公式戦でもシーズンの勝ち点に直結してしまうリーグ戦は緊張感が違ってくるので、その分、ACL出場クラブは不利になってきます。これまで同年にJ1とACLの二冠を制覇したクラブはありません。J1王者の川崎をはじめガンバ、名古屋、セレッソが二つのコンペティションをどう戦っていくか注目です。

・VARの復活

”ビデオアシスタントレフェリー”略してVARは感染対策の一環として昨年の再開後は一時的に導入が停止されていましたが、改めて導入が決定されました。対象はJ1の全試合とルヴァン杯のプライムステージ(決勝トーナメント)です。誤解がないようにしないといけないのはVARガ関与するのはあくまで以下の4つについてです。

・得点の有無(ラインを割っていたか、それまでの一連のプレー)

・ペナルティーキック(PK)の有無

・一発レッド(退場)に相当する行為かどうか(イエローカードは対象外)

・間違った選手に対しての退場処分、警告処分の有無

そもそもの導入意図が明確な誤審と見逃しをできるだけ無くすと言うことなので、流れにおける微妙な判定はあくまで主審の裁量に任されると言うことを踏まえる必要があります。それでも導入の効果は大きく、ゴールや退場に関わる誤審のリスクが大幅に減ることは歓迎すべきですが、一度は得点が認められてから取り消されるなど、試合流れや心理状況にも大きな影響を与える可能性があり、全てがメリットばかりではありません。ただ、そうした環境にも左右されない、利用できるメンタリティが問われる部分もあります。

加えて、Jリーグではよりアグレッシブでエキサイティングなプレーを奨励するため、激しくても正当なチャージやタックルはファウルを取らない傾向が強まると見られます。激しいコンタクトで贔屓チームの選手が倒されると「今のファウルだろ」となってしまいがちですが、そうした国際スタンダードに観る側も慣れていく必要があると思います。それと同時にやはりボールにチャレンジしない危険な行為には引き続き厳しい目を向けていくべきでしょう。

・大卒ルーキー

昨シーズンは”大卒ルーキーの当たり年”として川崎の二冠に大きく貢献した三笘薫をはじめ、安部柊斗(FC東京)、瀬古樹(横浜FC)、旗手怜央(川崎)など多くの大卒ルーキーが大活躍しました。過密日程や上記の”5枚の交代枠”が新人選手により多くのチャンスを与えたことも確かですが、特別指定選手の制度が普及したことで、大学の在籍時からJクラブの活動に参加して、公式戦に出るチャンスも与えられると言う環境から、即戦力としての期待が高まっています。昨シーズンの大卒ルーキーは”東京五輪世代”と呼ばれる97年生まれが中心だったこともありますが、今年の大卒ルーキーの選手たちを取材すると、例外なく昨シーズンの1年先輩たちの活躍に刺激を受けています。開幕戦から活躍が期待される浦和レッズの伊藤敦樹や北海道コンサドーレ札幌の小柏剛をはじめ、昨シーズンに負けないぐらいのタレントが揃っており、誰が”第二の三笘薫”になっていくのか。また高卒ルーキーやユースから昇格した選手などにも注目したいところです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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