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J1リーグ2020:中断明けの主役候補は?

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

Jリーグは新型肺炎の流行を受けて、3月15日までに予定されていた試合の延期を発表しました。すでにJ1とJ2の開幕節を終えていますが第2〜第4節、3月7日に開幕予定だったJ3の2節分が延期となります。

「我々としては万全の態勢を組んで1節できたので、2節もできるという自信がありました。しかし1~2週間が瀬戸際ということだったので、余裕を見て3週間取り、18日から再開すべく十分な準備をしてのぞみたい」と村井チェアマン。状況が刻一刻と変わっている状況で、本当に予定通り再開できるかは不明ですが、3週間後に向けて各クラブは万全の準備をして行くしかありません。

開幕節のプレーなどを基準に、再開後のJ1リーグで主役級の活躍が期待される注目のタレントをピックアップします。

オルンガ(柏レイソル)

北海道コンサドーレ札幌との開幕戦で自らの2ゴールなど4得点の全てに絡み、強烈なインパクトをJ1に与えました。昨シーズンはJ2でアルビレックス新潟のレオナルド(現・浦和レッズ)に次ぐ27得点を記録し、特に最終節の京都サンガ戦で8ゴールを奪って話題を集めましたが、規格外の身体能力を持て余すことなく、しっかりと発揮できるようになっており、江坂任やクリスティアーノとの相乗効果も高まっています。

どのチームもオルンガをいかに抑えるかは意識してくるでしょうが、ディフェンスを引き付けて周りを生かすプレーもできるので、ゴールはもちろんアシストもかなり数字を伸ばす可能性があります。

阿部浩之(名古屋グランパス)

ガンバ大阪や川崎フロンターレで獲得してきたタイトルの数から”優勝請負人”とも呼ばれる攻撃的MF。二列目のチャンスメイカーでありながら、ゲームの流れを読んで巧みにポジションを取り、周りに伝達するゲームコントロール能力にも優れており、名古屋グランパスに最も足りなかったピースと言えるかもしれません。

開幕戦では前田直輝が右サイドを突破して出したマイナスのクロスをマテウスがスルーすると、絶妙なタイミングでシュートに結び付けてゴールネットを揺らしました。まだまだ連携面は改善の余地があるように見えますが、前田やマテウス、相馬勇紀など槍のようなサイドアタッカーがそろう中に、阿部が明確なアクセントを加えることで大きな得点力を生むことは間違いありません。

宇佐美貴史(ガンバ大阪)

昨シーズンはMF井手口陽介とともに途中からのJリーグ復帰で、フィットに時間がかかりましたが、得点を奪うことに集中した終盤戦はガンバのエース復活を印象付ける活躍を見せました。キャンプで十分に準備を積んで臨む今シーズンは高い位置からのディフェンスでもタスクを担いますが、攻撃面では常にゴール前で勝負することで「チームで一番」と自負するシュート力を発揮できるでしょう。

得点王争いは開幕戦で2得点したオルンガ(柏レイソル)をはじめ2019シーズンJ2得点王のレオナルド(浦和レッズ)、2シーズン目で得点量産が期待されるレアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)、FC東京が誇る3トップ(レアンドロ、アダイウトン、ディエゴ・オリヴェイラ)など外国人選手が上位を占める可能性が高いですが、そこに割って入る資格を十分に持っています。

遠藤渓太(横浜F・マリノス)

横浜F・マリノスがリーグ優勝を果たした2019シーズンは”ハマのGT-R”こと仲川輝人のシーズンとも言えますが、主にジョーカーとしてチームを支えた遠藤渓太が真のブレイクを果たそうとしています。クラブでの優勝タイトルを引っさげて参戦したEAFF E-1選手権、さらにタイのAFC U-23選手権で大きな挫折を味わいましたが、代表での評価を上げるにはクラブで抜群の結果を残すしかないと割り切り、チームプレーをベースにしながらも、結果にこだわるシーズンとしてゴールやアシストを目指しています。

基本的にはマリノスの多彩なパスワークに加わりますが、局面で繰り出すドリブルは縦にも横にも鋭く、オフの動きも含めて、インサイドでもアウトサイドでも勝負できるのが遠藤の強み。そこにどれだけ精度を加えて行けるかが結果に直結しそうです。

森島司(サンフレッチェ広島)

開幕戦ではレアンドロ・ペレイラ、ドウグラス・ヴィエイラという強力な外国人アタッカーと”1トップ・2シャドー”を形成し、鮮やかなショートカウンターに推進力とアクセントを加えて、3−0の勝利に大きく貢献しました。森島は自分のことを「前線と中盤をつなぐリンクマン」として意識しますが、同時にペナルティエリア内でフィニッシュに関わるプレーを課題にあげており、開幕戦ではその意欲が示されていました。

その森島もタイで遠藤らと屈辱を味わった選手の一人。彼もコンビネーションを織り交ぜるプレーを得意とするタイプではありますが、個人での力強さ、パーソナリティと言ったものに磨きをかけることで東京五輪、さらには本当の意味でのA代表に近づいて行くはず。セットプレーのキッカーとしても注目です。

永戸勝也(鹿島アントラーズ)

昨シーズンのアシスト王という肩書きを引っさげてベガルタ仙台から鹿島に移籍した左サイドバック。仕掛けたらクロスを上げ切るまで止まらない推進力と、高精度のクロスはJ1でも1、2を争うクオリティを誇っており、攻守にわたりラインを上げるザーゴ監督のスタイルは永戸の性能を生かすにはもってこいのスタイルと言えます。

左右のサイドバックが積極的に関わるビルドアップにフィットするには少し時間がかかりそうですが、ブラジル人ストライカーのエヴェラウドや土居聖真、上田綺世などと噛み合ってくればアシスト力が十分に生かせそうです。左サイドバックには経験豊富な山本脩斗、東京五輪の候補である杉岡大暉など実力者もおり、鹿島でも競争の激しいポジションですが、ザーゴ監督のスタイルを考えると永戸の有用性は高そうです。

坂元達裕(セレッソ大阪)

J2からの”個人昇格”を果たした選手の中でもブレイク必至のタレントです。昨シーズン最少失点のセレッソ大阪はタイトル獲得のために得点力のアップが急務でしたが、抜群の機動力と打開力を併せ持つ坂元が右サイドハーフに入ることで、チャンスの構築力は着実に向上しそうです。

モンテディオ山形では3ー4ー2ー1のシャドーを担っていましたが、アウトサイドで起点になるプレーもうまく、そこからサイドバックの松田陸とうまく連動して、ボールを持てば積極的なドリブルで右サイドからチャンスを生み出します。MFでありながら昨シーズンのJ2で7得点を記録した決定力も魅力ですが、都倉賢やブルーノ・メンデスあるいは柿谷曜一朗などのゴールをいかに演出するか注目です。

ネト・ヴォルピ(清水エスパルス)

ピーター・クラモフスキー新監督のもとでボールポゼッションをベースとした攻撃的なスタイルを目指す清水エスパルス。開幕戦では昨シーズン2位のFC東京を相手に先制しながら終盤に3ゴールを許して逆転負けとなりましたが、今後に向けて期待を抱かせる部分も大いにありました。

清水エスパルスのゴールマウスを守るのがブラジル人GKネト・ヴォルピ。南米のコロンビアリーグでベストGKに評価された実力者であり、ハイラインの裏を広くカバーするフィールディング、的確なポジショニングで無駄ないセービングにつなげるシュート対応、そして矢のような弾道で前線やサイドの味方に届けるロングパスなど、その全てがJリーグ最高水準です。

Jリーグにはベガルタ仙台のヤクブ・スウォビィク、名古屋グランパスの“ミッチー”・ランゲラックなど国際基準でもハイレベルな外国人GKがいますが、ネト・ヴォルピは今シーズンのパフォーマンス次第でJリーグでもベストGKの評価を得るだけの資質を備えています。

清水エスパルスが継続的にスタイルを構築する過程でも、勝ち点を拾って行くことは重要であり、そのためにはネト・ヴォルピの活躍は不可欠です。もちろん攻撃面の貢献も見逃せませんが、危機的な状況で新守護神がセンターバック陣とともに、どれだけ獅子奮迅の働きをできるかが大きなカギを握るでしょう。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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