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東京五輪にまだ間に合う!”森保ジャパン”未招集のスーパータレント

河治良幸スポーツジャーナリスト
藤本寛也は現在のU-23にもっとも足りないゲームコントロールに優れた技巧派(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

AFC U-23選手権で森保一監督が率いるU-23日本代表は2敗1分でグループリーグ敗退。カタールとの3試合目は理不尽な判定で一人少なくなりながらも1−1で引き分けたが、他国が東京五輪の出場権を目指して戦う真剣勝負の場で、本大会の18人への”サバイバル”をかける選手たちは大きなアピールとはならなかった。

森保監督も敗退が決まったシリア戦後の会見でオーバーエイジ(東京五輪の男子サッカーは97年生まれ以降のU-23で行われるが、本大会は96年以前の生まれの選手を3人までエントリーできる)の有効性をあらためて口にしており、活用は既定路線になりそうだ。また堂安律や久保建英、板倉滉と言ったフルメンバーのA代表クラスを含めた欧州組の招集も全力をあげて行くと見られる。

そうした状況にあって、U-23とA代表を合わせて森保監督に招集されていない実力者、可能性を秘めたタレントは存在する。ここから候補の絞り込みに入って行く段階でも試してほしいタレントをこのタイミングに”推薦”しておく。

藤本寛也(東京ヴェルディ)

昨年のU-20W杯で活躍したマルチなゲームメイカー。個人能力が高く、左右のウィングや攻撃的MFもこなすが、本来はボランチから自在にボールを動かして攻撃を組み立てるプレーを得意としている。左足で長短のパスを振り分けるだけでなく、ため息の出るようなスルーパスを繰り出すことができる。セットプレーのキッカーとしても優秀だ。

攻撃センスが高いだけでなく試合の流れを読み、味方に伝える能力が高い。それは現在のU-23日本代表にもっとも不足しているポイントであり、オーバーエイジに頼らざる得ないと見られるが、藤本の抜擢で大きく変わりうる。昨年8月に右膝の負傷で長期離脱を強いられたが、20歳にしてヴェルディでは新シーズンのキャプテンに任命されており、完全復活を印象付ければ滑り込める余地は十分にある。

中村敬斗(トゥエンテ)

オランダで活躍する19歳はその才能を広く認められながら、森保監督の招集リストになかなか載ってこない。サイドアタッカーとして抜群のセンスがあり、三菱養和の先輩でもある相馬勇紀(名古屋グランパス)に匹敵するドリブル突破力を備える。

さらにゴール前に流れれば柔軟なボールタッチから、本職ストライカーさながらのシュートセンスを発揮する。昨年のU-20W杯では仲間たちから”宇宙人”と表現されるマイペースのメンタリティは大舞台向き。そのU-20W杯もギリギリで滑り込みながら本番では主力級の活躍を見せており、ラッキーボーイになりうる選手だ。

邦本宣裕(全北現代)

韓国のKリーグでプレーする異色のキャリアの持ち主だが、もともと東京五輪世代の筆頭格として大きな期待を背負うエリートだった。しかし、当時の素行の問題でアビスパ福岡との契約を解除され、7ヶ月間無所属という事態に陥った。そこからKリーグの慶南FCに拾われると、目覚ましい活躍で攻撃の中心となり、ACLでもインパクトを放った。

その慶南FCは2部に降格したが、邦本はKリーグ最強クラブの呼び声も高い全北現代と契約を果たし、韓国では大きく取り上げられた。左足のキック力は五輪代表どころかA代表級で、勝負の積極性はU-23選手権を見ても足りない部分。ネックは欧州組に久保建英、堂安律、三好康児と左利きが多いことだが、一度もテストされることなく本番を迎えるのはあまりに勿体無く、理不尽にも思われる。

過去の素行の問題が尾を引いているのか、そうした事情は分からないが、アンダー代表も経験している邦本は東京五輪への希望も口にしていた。何れにしても”海外組”ではあるが欧州組より招集はしやすいはずだ。

松尾佑介(横浜FC)

仙台大学に在学中だが、特別指定として加わった横浜FCでブレイク。昨年6月のファジアーノ岡山戦で、味方のアクシデントで前半から出場すると5−1の勝利に大きく貢献する活躍を見せ、J1昇格の立役者となった。

サイドを切り裂くドリブルと運動量は驚異的で、トップスピードでも小回りがきく。正直に言わせてもらえば、一度も招集されていないことがおかしいぐらい。サイドアタッカーだが、3ー4ー2ー1であればウィングバックが主戦場になる。

横浜FCと言えば18歳の斉藤光毅が注目を集めるが、パリ五輪のエース候補よりも、半年後に迫った東京五輪を見据えれば松尾の抜擢が現実的だ。ただ、ここまでアンダーの代表を経験しておらず、昨年の時点で未招集であることが返す返すも残念だ。

原大智(FC東京)

U-20W杯のメンバーであり、昨年はJ3で19得点を記録して得点王に輝いた。本格派の長身ストライカーで、20歳にしてスケール感は世代トップレベルだ。ポジション柄、温厚なキャラクターがブレイクを妨げていた印象は否めないが、環境の厳しいJ3の試合を経験する中で、ゴール前の勝負強さが出てきた。

クロスボールや斜めのスルーパスに合わせるダイナミックなフィニッシュが代名詞だが、勢いに乗ればドリブルで持ち込んで豪快にゴールネットを揺らすこともできる。

長崎でのジャマイカ戦にもU-23選手権にも選ばれなかったが、タイでFWのライバルたちが確かなインパクトを残せなかったことで、今後のアピール次第ではチャンスが出てきたと言える。

ただし、FC東京はFWの層が厚く、同世代のチームメイトで、ライバルでもある田川亨介とともに、タフな競争に勝ち抜くことが先決だ。特にACLでの活躍が大きなアピールになるはず。

ちなみにモーグルの原大智(はらだいち)と漢字が同姓同名。読み仮名は「はらたいち」だが、ツイッターでエールを送るなど刺激にしている。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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