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本日メンバー発表。W杯予選の初戦に臨む”森保ジャパン”の選考ポイント

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

森保一監督が率いる日本代表は親善試合のパラグアイ戦とアジア二次予選のミャンマー戦に臨むメンバーを発表します。昨年8月に新体制がスタートしてからちょうど1年が経過し、最初の公式大会となったアジアカップや若いメンバーでのコパ・アメリカを戦ってきましたが、今回が本当の意味で、カタールW杯に向けた第一歩と言っていいでしょう。

6月のキリンチャレンジカップはコパ・アメリカへの調整もあり27人のメンバーが招集(後日、植田直通はコパ・アメリカのみの参加に変更)されましたが、おそらく今回は通常の23人きっちりの選考になると予想できます。選考のポイントをいくつかまとめます。

欧州組の割合は?

前回は過去最多となる18人の欧州組が召集されましたが、全体で27人だったこともあり、国内組も9人いました。しかし、この夏に久保建英(FC東京 → レアル・マドリー)やシュミット・ダニエル(ベガルタ仙台 → シントートロイデン)など代表の常連選手や代表候補が数多く欧州クラブに移籍しており、また吉田麻也(サウサンプトン)や遠藤航(シュトゥットガルト)の復帰も濃厚であるだけに、欧州組の割合が過去最高になる見通しです。

もちろんほとんどはJリーグで育った選手たちであり、Jリーグが代表の基盤であることに変わりはありませんが、最近の傾向としてはアンダー代表クラスの移籍も増えており、代表に選ばれてから欧州というだけでなく、例えば鎌田大地(フランクフルト)のように、Jリーグやアンダー世代の代表で活躍して早いうちに欧州に旅立ち、そこで活躍して代表に選ばれるというケースはさらに増えそうです。

ただ、今回は新しいクラブに適応中の選手も多いため、そうした点が配慮されるかどうかも注目ポイントです。

東京五輪組の招集は?

今回は来年の東京五輪に向け、北米遠征でメキシコU-22代表、米国U-22代表と対戦するU-22代表の発表も同時に行われる予定です。コパ・アメリカにA代表として出場したメンバーの多くがU-22代表の方に入るはずですが、現時点でA代表のフルメンバーに入る資格があると評価された選手は今回のU-22代表ではなく、W杯予選を戦うA代表のメンバーに選ばれる可能性はあります。

堂安律(フローニンゲンからPSVに移籍合意)と冨安健洋(ボローニャ)はもちろん、キリンチャレンジ杯でA代表デビューした久保建英もA代表に入る可能性が高いでしょう。ただ、堂安に関してはメディカルチェックなど移籍の手続きがあり、国際Aマッチデーで代表側に拘束力があると言っても、スケジュールとの兼ね合いでどう判断されるか不明なところもあります。

大迫敬介(サンフレッチェ広島)は正GKとして試合に出られるチャンスが高いU-22代表に入るかもしれません。コパ・アメリカで南米の強豪相手に存在感を示した板倉滉(フローニンゲン)や杉岡大暉(湘南ベルマーレ)などもA代表に選ばれる資格はあると思いますが、どっちで活動した方が、チームと選手両方のメリットになるかを森保監督が考えた上で判断しているはずです。

サプライズ選出はあるか

今回はアジア予選に臨むにあたっての所信表明に近いメンバーになるので、大胆にフレッシュな選手を招集する可能性はあまり高くない見ます。ただし、森保監督と代表スタッフは国内外を手分けして視察しており、代表入りの資格があると見なされれば候補としてリストアップされることになります。ただし、すでに予選を戦うにあたっての重要戦力とされている選手は確実に招集すると思われるので、現時点での当落戦場の選手との”取捨”になるでしょう。

欧州に渡って活躍している選手でも東京五輪世代の中村敬斗(トゥエンテ)や菅原由勢(AZ)、コパ・アメリカ組だった前田大然(マリティモ)は今回はU-22の方に入る可能性が高いです。ポルトガルで抜群の動きを見せている安西幸輝(ポルティモネンセ)あたりは代表復帰のチャンスがあると見ています。

Jリーグではヴィッセル神戸でイニエスタらと見事なコンビネーションを見せ、オランダ1部のクラブからもオファーを受けた(残留争いをしているチーム事情をくみ神戸残留を了承と伝えられる)古橋亨梧が初の代表入りを期待されますが、セカンドトップやサイドハーフは欧州組の候補が多いポジションなので、それでも選ばれるようなら森保監督がよほど高く評価しているか、このタイミングでテストしておきたいという判断でしょう。

大分トリニータで10得点をあげているオナイウ阿道も大迫勇也(ブレーメン)に次ぐ1トップ候補として、鈴木武蔵(コンサドーレ札幌)と競争できるポテンシャルを備えていると思います。ただし、鎌田もフランクフルトで好調であり、23人という枠の中で本職のFW枠は2人ないし3人であることから、なかなかシビアな選考になりそうです。中盤ではトゥーロン国際トーナメントで活躍したMF田中碧(川崎フロンターレ)の成長も見逃せませんが、彼もU-22の方に入るものと予想されます。

毎回、国内組から誰かしら選ばれているボランチですが、仮に遠藤航が復帰する場合は森保監督から多大な信頼を受ける柴崎岳と2枠が埋まるので、残りは2枚となります。有力なのは3月、6月と続けて招集されている橋本拳人(FC東京)で、さらに鹿島アントラーズで抜群の存在感を見せる三竿健斗、ヴィッセル神戸で輝きを増している山口蛍などから絞り込まれると予想されます。昨季ヘーレンフェーンに所属していた小林祐希は無所属であるため、今回は見送られると想定されます。

他にフレッシュな選出の可能性があるのはセンターバックです。冨安はもちろん吉田麻也の復帰が予想されますが、有力候補である昌子源(トゥールーズ)が負傷から練習に復帰したばかりで、海外組は2週間前に招集レターを送る必要があることから、今回は見送られる可能性が高いからです。畠中慎之輔(横浜F・マリノス)が引き続き招集される可能性は高いですが、コパ・アメリカにも参加した植田直通が引き続き選ばれるのか、国内組からのサプライズがあるのか興味深いポイントになりそうです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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