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コパ・アメリカに臨む若き日本代表が躍進するために求められる”今そこにいるメンバーがベスト”という発想

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

日本代表は20年ぶりにコパ・アメリカに挑む。ご存知の通り他大陸の選手権に代表選手の拘束力はなく、A代表と五輪監督を兼ねる森保一監督は来年の東京五輪に出場資格のあるU-22世代のメンバー18人に岡崎慎司、川島永嗣、柴崎岳、中島翔哉、植田直通の”オーバーエージ”5人を加えた23人でブラジルに乗り込むこととなった。

U-22と言ってもDFの冨安健洋はすでにA代表の主力であり、18歳になったばかりの久保建英、先日のキリンチャレンジ杯に招集された中山雄太、GK大迫敬介は正式なA代表と言えるが、大半は肩書き上はA代表だが、実質的にはU-22代表のメンバーと見られても仕方ない。今大会のキャプテンを任される柴崎岳はコパ・アメリカを”W杯と同等の大会と認めた上で「フルメンバーで来たかったのが率直な感想」と語った。それでも「同じ心意気でやらないと一瞬でやられてしまう」と主張する。

この大会に選ばれて集まったメンバーこそベストなんだという考え方、そのメンバーで前を向いて戦っていく姿勢が求められる。今回はU-20W杯、キリンチャレンジ杯、トゥーロン国際トーナメント、コパ・アメリカという4つのコンペティションが日程的に集中しており、影山雅永監督が率いるU-20日本代表は久保建英、安部裕葵、大迫敬介をコパ・アメリカ優先で招集できず、さらに守備の要だった橋岡大樹が怪我で選外、滝裕太も離脱という従来のベストメンバーからはかけ離れたチーム構成でポーランドに乗り込むことになった。

しかし、影山監督は「今いる選手たちがベスト」と大会前から強調し、齊藤未月キャプテンも”最高のメンバー”を引っ張る意識でチャレンジし、グループステージでは強豪メキシコを破るなど見事な戦いぶりで決勝トーナメントに勝ち進んだ。その3試合目のイタリア戦で攻撃の主力だった田川亨介と斉藤光毅を怪我で失ったことがラウンド16の韓国戦に向けて大きな誤算となったが、いるメンバーで言い訳せずベストを尽くすことの重要性を示した戦いだった。

そのU-20W杯より少し遅い6月1日に南フランスで開幕したトゥーロン国際トーナメントはU-22日本代表という肩書きながら、この世代の主力と呼べる選手たちはコパ・アメリカに選出されており、例外的に伊藤達哉が両大会に選出されたものの、”コパ選外組”というイメージは仕方なく、本人たちもその事実を自覚しながら逆の悔しさをバネにチームの一体感と競争意識を融合して、チリを6-1で破るなど快進撃を続けた。最後はブラジルとの決勝でPK戦の末に涙を飲んだものの大会史上初のファイナリストとなった。

大会というものは後で振り返れば結果に対する検証はいくらでもできる。選手たちもそこで得た経験を糧に次のステージへ前を向いていくものだ。しかし、最初から経験をするために参加して得られる経験など高が知れている。本気で挑んで何を得ることができるか。南米のメディアからも”本気度が足りない”と揶揄される向きが強い今回の代表だが、彼らをも驚かせる意外な躍進の最低条件はそこにある。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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