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浦和ACL決勝で貴重なアウェーゴール。ラファエル・シルバの先制点を呼び込んだ興梠慎三の動き。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:アフロスポーツ)

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝の1stレグはサウジアラビアのリヤドで行われ、浦和レッズが開始7分にラファエル・シルバのゴールで先制。37分にアル・ヒラルのシリア代表FWオマール・クリビンの同点ゴールを許したものの、その後ホームチームの猛攻を耐え抜いて引き分け。貴重なアウェーゴールを持ち帰る形で、埼玉スタジアムでの2nd レグに大きな希望をつないだ。

ラファエル・シルバのゴールは先日ベルギー戦でも活躍した長澤和輝の粘り強いつなぎから左サイドを突破し、クロスのクリアボールが跳ね返って来たところを押し込むという形だった。決してやさしくない状況で決めきったラファエル・シルバの得点力は言うまでもなく素晴らしいが、もうひとり見事な動きでゴールに絡んだ選手がいる。FWの興梠慎三だ。

J1の得点ランキングでトップを走る興梠だが、質の高い動き出しはしばしば味方のゴールを呼び込む。FWというのはラストパスを受けてシュートするだけでなく、周りのためにスペースを作る仕事も求められるものだが、興梠の場合は自分が点取れるための動き出しを繰り返すことが結果として味方がゴールしやすい状況を生み出している。サウジアラビアの地でも質の高い動きが効果を発揮した。

ラファエル・シルバが左サイドでモハメド・アルブライクと併走状態になった時、アル・ヒラルは彼ら側から見て、右からオサマ・ハウサウィ、モハメド・ジャファリ、サルマン・アルファライが中央に構えていた。ラファエル・シルバがサイドを縦に進めば彼らも下がりながらの対応になる。そこで興梠はジャファリとアルファライの間を突く動きをして、ラファエル・シルバがクロスの体勢に入ろうとするところでステップを切り、アルファライの外に流れた。

この瞬間、興梠とラファエル・シルバのイメージが完璧に一致していたはずだ。ラファエル・シルバがGKと3人のディフェンスの間をグラウンダーで抜き、大外から興梠が合わせる。結果的にクロスボールはアルファライの必死の対応でカットされたものの、クロスを上げた後にしっかり走り込んでいたラファエル・シルバのもとに戻ってきたわけだ。

ゴールというのは決めた選手にスポットが当たるのは当たり前だが、結果としてボールに触らなかったとしても、質の高い周囲の動きがデータに表れないアシストになることは多い。そうしたものを記事で拾い上げるというのはサッカー記者の1つの醍醐味だ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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