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【女子W杯ラウンド16】なでしこジャパンがオランダ戦で注意すべき3つのポイント

河治良幸スポーツジャーナリスト

カナダで行われている女子W杯のラウンド16もすでに8チーム中の7チームが決まり、24日11時(日本時間)から行われる日本×オランダの試合を残すのみとなった。

筆者が試合解説を担当するニコニコ生放送『サッカーキング ハーフ・タイム』の特番に先立ち、オランダの注意するべき3つのポイントを分析した。

※番組ページ『女子W杯裏実況!なでしこジャパンvsオランダ』

FIFAランキングは12位のオランダだが、欧州予選では直前の壮行試合で日本が苦しめられたイタリアをプレーオフで破り、初のW杯出場を決めるなど波に乗っているチームだ。

平均身長が170cmという上背は日本に対する強みだが、より注意するべきは縦のスピードだ。闇雲にロングボールを蹴っていくスタイルではないが、ボランチのスピッツを起点に素早く展開してウィングを走らせ、クロスに2人、3人と飛び込む攻撃には鋭さと迫力がある。

ここまで2失点の守備は高さのファン・デ・スラフトと機動力のファンデンベルクというCBコンビを中心に統率が取れており、シンプルな攻撃だけで打ち破ることは難しい。

今大会のなでしこジャパンは状況に応じてブロックを上げ下げしながら、効率よくコンビネーションを活かす形でグループリーグを勝ち抜いたが、オランダに対してはある程度ボールを持つ時間が長くなることが予想される。

そこからいかに相手の守備を崩し、また危険なカウンターを封じるか。そしてボールを奪った瞬間に自分たちのカウンターの機を活かして相手の裏を突けるかが試合のキーポイントになってくる。

当然ながらオランダの高さを最大限に活かせるセットプレーは脅威で、CKに逃れる回数を限定するとともに、なるべくワイドの深い位置でFKを与えたくないが、最低でも何回はある場面でしっかり集中を維持し、選手交代が起こった時にしっかり役割を確認して対応したい。

あらためて流れにおけるオランダの攻撃におけるストロングポイントを3つあげると、「3トップのスピード」「ボランチの展開力」「セカンドボールからの二次攻撃」となる。

「3トップのスピード」

CFのミディマ、右ウィングのメリス、左ウィングのマルテンスは3人の誰がボールを受けても、前を向いて仕掛ければ高い確率でチャンスに持ち込めるタレントで、そこでの細かいコンビネーションが無い代わりに、ボールを持っていない2人がタイミング良くゴール前に顔を出す意識が高い。

つまり1パサーと2ターゲットという構図がはっきりしており、基本的にはボールを持ったパサーを封じ、同時に2人のターゲットがタイミング良くフリーにならない様にCBあるいはSBが絞って捕まえる必要がある。

3人の推進力を警戒するあまり、ポジションが深くなると危険なミドルシュートも飛んでくるが、岩清水梓のラインコントロールで相手にオフサイドポジションを意識させながら、バイタルエリアの手前で押し返し、DFラインとボランチで挟んでボールを奪える形を作りたい。

この時にカギを握るのがGKのカバーリングだ。オランダの高さを考えれば理論上は山根恵里奈がファーストチョイスになるが、カバーリングに関しては海堀あゆみより範囲が狭くなるのは仕方ないところ。それでも彼女が的確にポジションを取り、CBの背後をカバーできればDFラインが視野の前方に意識を避ける。

オランダの攻撃スタイルから、それほど複雑な動きは必要ないと考えられるので、1にも2にも的確な判断を継続して処理を誤らないこと。これはビッグセーブ以上にこの試合で要求されてくる。

「ボランチの展開力」

オランダの攻撃そのものはシンプルだが、中盤にタイミング良く正確なパスを出せる選手が揃っている。第一の起点はセットプレーのキッカーでもあるスピッツで、女子としては長い距離に正確なボールを通してくる選手だ。

相棒のデッカーもキック力が高く、10番のファン・デ・ドンクは自分でボールを運ぶこともできるが、まずはスピッツに自由なパスを出させない様にしたい。

日本がこれまで通り[4−4−2]で臨む場合、阪口夢穂やボランチ起用が噂される宇津木瑠美が2人で相手のボランチに食いつくと、その背後でCBが晒されてしまうため、基本的には2トップに手前でプレッシャーをかけ、そこに宇津木が絡むなど柔軟かつ機敏な対応が求められる。

細かい動きはオランダがスピッツをアンカーに配置する[4−3−3]にしてくるのか、日本を警戒してスピッツとデッカーを2ボランチで並べる[4−2−3−1](攻撃時は4−2−1−3)を採用してくるかによるが、スピッツを中心としたボランチの手間をしっかり切り、強引なドリブルかDFラインのロングボールを選択させる様にして攻撃精度を落とさせたい。

「セカンドボールからの二次攻撃」

ハイプレスでボールを奪うのではなく、組織的なブロックを作って対応するスタイルで最も注意が必要なのはセカンドボールを奪われた時の対応だ。DFラインが跳ね返し、ボランチがボールを奪うという形は恐らく、なでしこの共通理解になっているが、ここまでの試合もセットプレーを除くピンチの大半はセカンドボールを相手に拾われた場合に発生している。

その場合、3トップは変わらず危険だが、攻撃的MFのファン・デ・ドンクがアタッキングサードに加わってくる。開幕前からその美貌が話題となっている選手だが、オランダの中では非常に高いテクニックの持ち主で、精度の高いラストパスも出せる。

シンプルな速攻に対しては阪口が問題なくケアできるはずだが、二次攻撃で日本の守備がバランスを崩している時にボールを持たれると、最も危険な存在に変わりうる。セカンドボールをしっかり奪うことが先決だが、いざボールを拾われた時に攻撃陣を含め、近い選手が素早くプレッシャーをかけ、少しでも自由を与えない対応をしていくべきだ。

経験値も含め、総合力では日本が上回るというのが筆者の評価ではあるが、試合には両者の相性というものがある。人工芝でより技術の差が出にくいこともあり、しぶとく相手の特徴を消しながら試合をコントロールし、勝負の節目をものにしていく意識をチームで共有し、アジアのライバルであるオーストラリアの待つ準々決勝に勝ち進んでほしい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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