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ここまで出場無しでも気持ちを高める小林悠。J屈指のストライカーは大会のラッキーボーイになれるか?

河治良幸スポーツジャーナリスト

パレスチナ戦とイラク戦を2連勝して、グループリーグ3戦目を迎えている日本代表。ここまで2試合スタメンの11人に加えて、清武弘嗣、武藤嘉紀、豊田陽平、今野泰幸と、出場機会を得ている選手は15人で、まだ8人の選手が試合に出ていない。

短期決戦の大会において、試合に出られない中で強い気持ちを維持するのは容易ではないはずだが、前回大会では6試合目となる決勝まで、サブ組が重要な役割を果たした。彼らの活躍抜きにアジア制覇を語ることはできないほどだ。

それだけに今回も、試合に出ていない選手たちに期するものはあるだろう。その中でも、怪我から復帰して間もないにも関わらず大会メンバーに選ばれた小林悠は「まだラッキーボーイ的な人もいませんし、自分がそうなれればいいなと思っています。そのためには練習からアピールしていなかないといけない」と気持ちを高めている。

「崩しの部分とか、この前のイラク戦もかなり崩せている場面が多かったですし、速いショートパスで何本もつないで抜け出してとかも多かった」

小林がベンチから見ていても、日本の攻撃がどんどん良くなっているのが分かるという。ただ、そこからフィニッシュに持ち込むところには課題があり、小林が最も得意とするところだ。味方のパスワークからタイミング良く飛び出し、ゴールを仕留めるイメージを思い描いている。

「試合に出ているメンバーはすごくうまいですし、腐るというよりも、自分の実力はここにあると割り切っていますし、そこをしっかり受け止めてチャンスを待つしかない」という小林の気持ちを熱くしたのが、イラク戦で途中出場した今野泰幸の後半ロスタイムのプレーだった。

「フットボールチャンネル」の記事「アジア杯連覇へ不可欠な“日替わりヒーロー”の誕生。負傷の今野が示したサブの心構えとは?」でも書いたシーンに関して小林は「今ちゃんの一番の良さが出た場面だと思った」と振り替える。

「怪我しちゃったのは残念ですけど、ああいうプレーはまたチームを1つにするんじゃないかと思います」

そう語る小林が最も意識する仕事はもちろんチームを勝利に導くゴールだ。厳しい現状にも真摯に向き合いながら、静かに闘志を燃やすストライカーの大会のラッキーボーイ的な活躍を期待せずにはいられない。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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