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32か国がW杯メンバー&候補を発表。ブレイクが期待される10代選手は?

河治良幸スポーツジャーナリスト

5月12日にブラジルW杯を目指す日本代表23人のメンバーが発表された。ザッケローニ監督が就任してから一度しか招集されなかったFWの大久保嘉人(川崎フロンターレ)が入り、昨年の東アジアカップ以降に台頭した選手も何人か入ったが、最年少は酒井高徳(シュトゥットガルト)の23歳。10代の選手は南野拓実(セレッソ大阪)が予備登録されたのみだった。

「平均年齢は間違いがなければ27歳」と語るザッケローニ監督は「同じ実力をもつ人が2人いたら、若い選手の方を選んだ」とも説明する。年齢を重視はするが、能力や適応力より優先はしなかったということ。言い換えれば、少なくともザッケローニ監督の構想の中で、今回のメンバーに割って入る10代の才能は見出されなかったということだ。

大会全体ではどうなのか。現時点で23人に絞りこまれていない国も多いが、発表メンバーにリストアップされた10代(W杯開幕時)の選手を抜き出してみた。

<A組>

クロアチア:MF マリオ・バシャリッチ(ハイデュク)19歳

カメルーン:FW ファブリス・オリンガ(ズルテ/ベルギー)18歳

<B組>

オランダ:DF カリム・レキク(PSV)19歳、MF トニー・ヴィリェナ(フェイエノールト)

<C組>該当なし

<D組>

ウルグアイ:DF ホセ・マリア・ヒメネス(アトレティコ/スペイン)19歳

イングランド:DF ルーク・ショー(サウサンプトン)18歳、FW ラヒム・スターリング(リバプール)19歳

<E組>

エクアドル:DF クリスティアン・ラミレス(F・デュッセルドルフ/ドイツ)19歳

<F組>

イラン:FW サルダル・アズムン(ルビン・カザン/ロシア)19歳

<G組>

米国:MF ジュリアン・グリーン(バイエルン/ドイツ)19歳

<H組>

ベルギー:FW デュヴィック・オリギ(リール/フランス)19歳、FW アドナン・ヤヌザイ(マンチェスター・ユナイテッド)19歳

アルジェリア:MF ナビル・ベンタレブ(トッテナム/イングランド)19歳

10か国で13人。ここから6月2日の登録期限までに外れる選手もいるかもしれないが、平均年齢が今回の日本代表と同じ27歳前後と言われるW杯としてはかなり多めだ。しかも、メンバー入りだけでなくスタメン起用される可能性が高い選手も何人か含まれてる。全員を紹介したところが、ボリュームの都合で4人をピックアップした。

◆ルーク・ショー(イングランド)

リバプールのスターリングともども、プレミアリーグのファンならプレーを見たことがある人も多いだろう。多くのタレントがひしめく左サイドバックでホジソン監督の評価を勝ち取り、ある意味で過去3大会出場のアシュリー・コール(チェルシー)に引導を渡した逸材だ。

縦に攻め上がるスピードもさることながら、相手ディフェンスの穴を良くイメージできている選手で、いわゆるオープンスペースだけでなく、ちょっと間いたところにも飛び込んでいける。しかも、そこから正確な左足のクロスやラストパスを通してしまうのだ。

ウィングの性能を備えるサイドバックは少なくないが、セカンドアタッカーの資質をハイレベルに持つ選手は稀。広いスペースも狭いスペースも必要に応じて突き、チャンスに絡める選手とイメージしておけば、イングランドの試合で彼が登場した時にはワクワク感が増すはずだ。

◆カリム・レキク(オランダ)

186cmの体格を誇りながら、高い機動力を持つ希少価値の高いDFだ。チュニジア人の母を持つハーフで現在はオランダのPSVに所属するが、マンチェスター・シティが所有する。昨夏のチャンピオンズリーグ予備選でACミランとの対戦を覚えているファンもいるだろう。

走力と左足のフィード力を買われて左サイドバックで起用されるケースもあるが、やはり本領を発揮するのはセンターバックのポジション。対人戦の強さはもちろん、バイタルエリアでDFラインとMFの間、SBの内側といった嫌らしいところに侵入されても素早く寄せて処理できる。

現在のオランダ代表はディフェンスに課題を抱えており、デ・フライ(フェイエノールト)とフラール(アストン・ヴィラ)がセンターバックの主力とされているが、開幕まで競争が続くと見られるだけに、守備能力と左足の正確性をファン・ハール監督にアピールできれば、ポジションを奪っていても不思議ではない。

◆ナビル・ベンタレブ(アルジェリア)

イングランドの名門トッテナムで台頭したフランス生まれのセントラルMFで、リーグ戦は11試合に先発出場した。左足のボールスキルに加えて、若いながら優れたプレービジョンを備えている。長短のパスの使い分けが見事で、効果的な飛び出しも繰り出せる。

アルジェリアは中盤の質に不安があり、技巧的なMFタイデル(インテル・ミラノ)がトップ下で主軸を張るものの、イェブタ(グラナダ)とラセン(ヘタフェ)で構成されるボランチからの配球にテンポを欠き、相手のプレッシャーが強まるとミスも目立つ。

フィジカル・コンタクトと代表レベルでのメンタルに関しては現在のセットが優位だが、ベンタレブが主力に組み込まれることで、ビルドアップのクオリティは間違いなくアップする。攻撃的なスタイルを好むハリルホジッチ監督の決断に期待したい。

◆サルダル・アズムン(イラン)

端正なルックスの持ち主で、活躍すれば女性に人気が出そうだが、何よりF組で“最弱”とも見られるイランの救世主になる可能性を秘めたヤングタレントだ。現在はロシアのルビン・カザンに所属するが、インテル・ミラノが獲得に乗り出したことで知られ、現在はアーセナルが獲得を狙っているとも噂される。

“イランのメッシ”という呼び名は右利き、183cmと長身な時点で疑問符が付くものの、俊敏性は高く、守備の合間に侵入するドリブルを得意とする。実は2012年のU-19アジア選手権で日本と対戦しているが、推進力のあるドリブルはアジアの同年代としては規格外だった。

昨年8月にはヨーロッパリーグにもデビューし、途中出場ながら右足のシュートでゴールを決めた。左足でも正確に打つことができ、高さを活かしたジャンプヘッドでの得点力もある。バイタルエリアの手前で一度起点になり、そこから飛び出す形を得意とするセカンドトップだ。

奇しくもイランはアジア予選でトップ下の主力を担って来たジャバリ(アル・アハリ)が突然の代表引退を表明し、2列目はスクランブル状態。ポルトガル人のケイロス監督に与えられるチャンスを確実にものにできれば、ブレイク候補として本大会に臨むことになうだろう。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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