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“エリート”はこうしてウソをつくー官僚たちの不都合な真実ー

河合薫健康社会学者(Ph.D)
(写真:ロイター/アフロ)

財務省の文書改ざんやセクハラ事件ーー。

突っ込みどころ満載の一連の“事件”だが、なんでこんなにもわが国のエリート中のエリートたちは、無責任で、ハレンチで、傲慢で、他人を見下した人ばかりなのだろうか。

「階層社会では、大きな組織の上層部には、立ち枯れた木々のように『無能』な人々が積み上げられている」

これは“ピーターの法則”で知られる米国の教育学者・社会階層学者、ローレンス・J・ピーターの名言だが、今の財務省は立ち枯れた木々だらけだ。

一方、米国の大人気漫画『ディルバート(Dilbert)』の作者であるスコット・アダムズは、

「企業は損失を最小限にするために、最も無能な従業員を管理職に昇進させる傾向がある」

と“ディルバートの法則”を提唱。

「組織の生産性に直接的に関係しているのは組織の下層部で働く人たちで、上層部にいる人たち は生産性にほとんど寄与していない。

無能な人ほど上司に気に入られ、生産性とは関連の薄い上層部に昇進するため、バカな上司に部下たちは苦悩する」'(by アダムズ)

ふむ。アノ人、コノ人、と色々と顔が浮かぶ。

ただ、そんな無能で無責任なトップたちのせいで、現場の若き官僚たちは“不夜城”と呼ばれる霞ヶ関で身を粉にして働かされ、私たちの税金が山ほど使われ、女性記者はセクハラを1年以上も受けた。

「胸さわっていい?」「腕しばっていい?」

という下品な言葉遊びの相手は、女性記者じゃないと豪語し、

テレビ朝日が記者会見をしたあとでさえ、

「全体をみれば」というもっともらしい言葉を使い、「同社がどういう調査をしたか知らないが、会話の全体をみればセクハラに該当しないことは分かるはずだ」

と開き直った。

いったいこの国のエリートの頭の中の構造はどうなっているのか。

残念というか、なんというか。こんなトップが仕切る財務省で働く真面目な官僚の方たちも、本当にお気の毒だ。

【ウソがホントになる】

今回のさまざまな事件では、トップたちの言葉が「自己保身のためのウソ」であることは、誰にでもわかる。

だが、ただ1人、それを「ウソ」と知覚出来ない人物がいる。

当人。そう。ウソをついている当人は、「ウソをついている」という認識も、罪悪感も一切感じていないことが、これまでの研究でわかっているのだ。

私たちは一般的に、「ウソをつき、責任を回避すると、イヤな気持ちになる」と考える。

ところが、ウソを貫き通すことができると、次第に“チーターズ・ハイ”と呼ばれる高揚感に満たされた状態に陥り、どんどん自分が正しいと思い込むようになっていくのである。

例えば、史上最強の無責任トップと揶揄されたBP(石油会社のブリティッシュ・ペトロリアム)の元CEO トニー・ヘイワード氏は、

財務省のトップにも負けないくらいのウソを突き通した。

2010年4月、BP 社は、メキシコ湾沖合80km、水深1522mの海上で海底油田の掘削作業中、 大量の原油をメキシコ湾へ流出させるという大規模な事故を起こした。

この事故で11人の作業員が死亡。全米を震撼させる大惨事となった。

当時CEOだったヘイワード氏は事故直後に

「一体、どうして我々がこんな目に合うんだ」

と報道陣の前で嘆き強い非難を浴び、

それでも一向に態度を改めることなく、事故2週間後には

「メキシコ湾は広大だ。海全体の水の量に比べれば、流出した石油と分散剤の量など微々たるもの」

と発言。

科学者たちが「部分的に溶解した原油が、海中を浮遊する様子」を捉え、責任を追求す

るも、

「汚染物質などない。科学者はおかしい」

と反論した。

また、“全米至上もっとも無責 任なCEO”の異名を持つ、ヒューレット・パッカードのカーリー・フィオリーナ氏は、会社が倒産する数日前に

「自社のバランスシートは健全」

と公言している。

【ウソと権力の不都合な真実】

人は他人のウソには厳しい一方で、自分のウソには寛容な傾向が強い。

「このウソは必要」だと考え、自らを正当化する。

その確信が強ければ強いほど、ウソを重 ねてチーターズ・ハイに酔いしれる。

彼らは、「ウソをついている」という罪悪感をいっさい抱いてないのである。

エリートたちのウソに拍車をかけるのが、

「説得力のあるウソつきほど支配力を持ち、ウソをつくという行為自体が、その人に力を与える」

という困った心 のメカニズムだ。(「The Effects of Power and Deception on Dominance, Credibility, and Decision Making」より)

「人間はウソをつけばつくほどふてぶてしくなり、自信たっぷりに振る舞い、命令的に話すよう になる。そういった態度が、一段とその人に対する服従を強める」

とされているのだ(オクラホマ大学のN.E.ダン ブラー教授)。

私たちはウソを嫌い、無責任な人を嘆く一方で、ウソをつく人の高圧的な態度に 信頼感を抱くという、極めて矛盾する心を持ち、それがウソつきに増々力を与え、権力者 の足場を強固にする。

ああ、なんということでしょうか。 ということは、階層組織の“上”には無責任なウソつきで溢れている?

ふむ。そのとおりだ。

だからこそ、たまにそうではない“上”が出てくると「あの人は責任感が強いし、きちんと信念を 貫く人」などと周囲から高く評価されるのである。

……どうか若き官僚たちよ、「ウソは泥棒の始まり」という幼稚園で教わった名言を忘れずに、『残念な職場』でふんばってくださいませ。

健康社会学者(Ph.D)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。 新刊『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』話題沸騰中(https://amzn.asia/d/6ypJ2bt)。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究、執筆メディア活動。働く人々のインタビューをフィールドワークとして、その数は900人超。ベストセラー「他人をバカにしたがる男たち」「コロナショックと昭和おじさん社会」「残念な職場」「THE HOPE 50歳はどこへ消えたー半径3メートルの幸福論」等多数。

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